9月7日、ストーンヘンジの北東3kmに位置するダーリントン・ウォールズの地中にストーンヘンジよりもさらに巨大なメガリス(巨石記念物)が埋もれていることを、イギリス科学協会が発表しました。
ダーリントン・ウォールズは直径500mほどのヘンジ(溝付きの土塁で囲まれた円形の遺構)で、木造の環状構造物跡を内包しています。
その形がとても不思議で、完全な円や楕円ではなく、一部が直線で切り取られたC字形の特殊な形状をしています。
これまでこのスーパーヘンジは1mほど土を盛り、その内側に幅18mほどの溝を掘って造られたと考えられてきました。
しかし今回の地中探査の結果、高さ4.5m×幅1.5m×奥行1.0mほどの巨石が30個、崩れているものも含めると90個ほどが並んでいたということです。
列石はヘンジの東側にのみ見られるものの、他の場所からは石を埋めていた溝の跡が発見されていることから、当時はヘンジに沿って200個ほどが並べられており、後年になって巨石の一部が取り除かれたのではないかと考えられているようです。
下は探査の様子を表した動画です(英語)。
バギーのような車が地中探査機で、後部に取り付けられたセンサーで地中をスキャンしています。
建設されたのは約4,500年前の紀元前2,500年頃。
ストーンヘンジの場合、土塁や木のヘンジが紀元前3,500~前3,000年前後、現在見られる石のヘンジが紀元前2,500~前2,000年前後に建てられたと考えられていますから、メガリスとしてはストーンヘンジよりも古いものと言えそうです。
これもまた不思議な話なのですが、土塁のヘンジは巨石をわざわざ倒した上に土をかぶせて築かれたようです。
モアイが倒されたときのようなドラマがあったのでしょうか?
巨石の一部はストーンヘンジの建設に転用された可能性もあるようです。
下はそのスーパーヘンジの解説動画です。
ストーンヘンジとその周辺の遺跡群について、ここ数年の調査で次々と新しいことがわかってきています。
ちょうど1年前の2014年9月10日には、ストーンヘンジやダーリントン・ウォールズを取り囲む巨大な建造物群の存在が発表され、17もの神殿や数十の古墳、巨大な木造建造物が確認されています。
どうやらストーンヘンジは単独の聖域というものではなさそうです。
この辺り一帯を聖域として、ストーンヘンジ、ダーリントン・ウォールズ、数々の神殿で役割を分担していたのかもしれません。
実際、ストーンヘンジには埋葬跡、ダーリントン・ウォールズには生活跡が多く見られるという特徴も明らかになっています。
長い間、謎とされてきたストーンヘンジですが、周辺の遺跡の発掘という別角度からの調査によってその謎が解き明かされるかもしれません。
今後の発掘調査に大いに期待です。
※追記
翌年の調査で巨石は埋まっておらず、柱穴の影であったことが明らかになりました。
この柱穴に木の柱を立てていたようです。
[関連記事&サイト]
ストーンヘンジ、エーヴベリーと関連する遺跡群(世界遺産データベース)
ストーンヘンジ:謎に包まれた巨石文明の遺産(All About 世界遺産)
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