世界遺産検定攻略法7.世界遺産検定 最効率学習法
前回、試験勉強の3要素である理解学習・インプット学習・アウトプット学習を紹介しました。
学習の流れを知ってもらうために3要素を紹介しましたが、実際に世界遺産検定に関して行うべき学習は「多読学習」の1点です。
理解学習とインプット学習を兼ねて、何度も何度も読み飛ばす学習法です(最初の1回は理解学習のためにじっくり読んでもよいでしょう)。
今回はぼくが最効率と考える受検戦略&学習プランと多読学習の方法を解説します。
○本記事の章立て
- オススメの受検戦略&学習プラン
- 「世界の遺産」は地域によって捨てる・捨てないを決めるべきではない
- 世界遺産検定 最効率学習法=多読学習
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■オススメの受検戦略&学習プラン
「攻略法5.世界遺産検定の受検戦略」で受検戦略や学習プランを紹介しましたが、少し復習してみましょう。
この記事ではまず、勉強をはじめる前の状態でも、既存の知識+時事問題+デタラメでかなり得点できることを解説しました。
1級の場合、既存の知識+時事問題+デタラメで40%程度は確保できると思います。
1級の認定基準は200点満点中140点以上、得点率で70%以上ですから、すでに半分を超える40%・80点分は確保していることになります。
となると、必要な勉強は残りたった30%・60点分です。
ということで、各級に必要な学習量は以下のようになります(詳細は以前の記事を参照してください)。
○必要な学習量
- 1級:残り30%分
- 2級:残り20%または27.5%分
- 3級:残り23.75%または31.25%分
- 4級:残り35%分
この20~35%分をどのような学習で確保するか?
これが受検戦略のポイントです。
1級の配点比率は、「基礎知識25%、日本の遺産20%、世界の遺産45%、その他10%」となっています。
そして1級検定教材『すべてがわかる世界遺産大事典』上・下巻計850ページの中で、「世界遺産の基礎知識」の配点が31ページで50点、「日本の世界遺産」が87ページで40点です(第1版の場合)。
1級認定に必要なのはあと30%・60点分なので、「世界の遺産」=「アジア~アメリカ大陸の世界遺産」の693ページを丸々捨ててしまうという戦略もありえることになります。
ぼくがオススメするのは、「攻略法5.世界遺産検定の受検戦略」で紹介した「戦略3:基礎知識と日本の遺産を中心に据える学習プラン」です。
1ページあたりの配点を出してみると、「基礎知識」が1.61点/ページ、「日本の遺産」が0.46点/ページ、「世界の遺産」が0.13点/ページと、前者2つが圧倒的に高くなっています。
ですから「基礎知識」と「日本の遺産」を学習の中心に据えるべきでしょう。
ただ、この2つだけに集中してしまうと、両者の問題については約70%という高い正解率を目指さなければなりません。
ですから「世界の遺産」からもある程度の得点を狙いたいところです。
ぼくが出した黄金比は、「基礎知識」と「日本の遺産」で50%、「世界の遺産」で20%程度の正解を目指す戦略です。
つまり、「基礎知識」と「日本の遺産」の問題は半分、「世界の遺産」は5問に1問の正解で構わないという比率です。
それでも31.5%分が確保できるので、認定基準は十分クリアできます(正確にはもっと複雑な計算が必要です)。
そして学習量は、1日に読むページ数で割り当てていきます。
3か月後に1級を受検するものとして計算してみましょう(半年かける場合、1日の負担は当然半分になります)。
まずは「基礎知識」ですが、もっとも重要なので10回は読んでおきましょう。
31ページ×10回=310ページ、これを90日で割って1日3.44ページ。
つまり、1日4ページ読めば78日で10回読み切れます。
続いて「日本の遺産」も重要です。
こちらは1遺産4ページの構成なので、1日に読むペースは4の倍数ページにするべきでしょう。
1日8ページ読むと8回読めて87日で終了しますから、3か月の学習にはちょうどよいペースです。
「世界の遺産」ですが、1回ではほぼ無意味なので、最低線で3回読むものとしましょう。
693ページ×3回=2,079ページ、1日24ページ読めば87日で読み終わります。
これで学習量(読む回数)の比は基礎知識:日本の遺産:世界の遺産で10:8:3となります。
「世界の遺産」はたった3回しか読まない計算になりますが、復習を入れていませんし、5問に1問正解すればいい程度なので十分でしょう。
この場合の1日の読書量は計36ページです。
多すぎると感じるかもしれませんが、前回書いたように覚える必要はなくて、読み飛ばすだけでOKです。
特に「基礎知識」は10回、「日本の遺産」は8回も読むわけで、しかもこの回数には復習を入れていませんから。
それでも多すぎると感じたら、回数を減らすか期間を延ばすしかありません。
このように、みなさんも自分独自の学習プランを立ててみてください。
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■「世界の遺産」は地域によって捨てる・捨てないを決めるべきではない
1級に関して、前章で「世界の遺産」=「アジア~アメリカ大陸の世界遺産」の693ページを丸々捨ててしまうという戦略もありえると書きました。
本当に時間がない人であればこの戦略は実際有効だと思います。
ただ、ぼくは「世界の遺産」の一部の地域のみを勉強して、一部の地域は捨てるというような学習法はなるべく避けるべきだと考えています。
たとえば、上巻に掲載されているアジア、アフリカ、オセアニアの世界遺産を勉強して、下巻のヨーロッパとアメリカ大陸の世界遺産をカットするような戦略です。
理由は、1ページの価値(1ページあたりの配点)が同じであるのなら、捨てる部分は範囲ではなく難易度で選ぶべきであるからです。
「この世界遺産は勉強する・しない」などと決めるのではなく、すべての世界遺産に目を通す代わりに、難しい部分を避けていくのです。
その方が効率的であるうえに、世界遺産全件の要点を学ぶことができるというメリットもあります。
例を挙げましょう。
『すべてがわかる世界遺産大事典』下巻に掲載されているポーランドの世界遺産「ワルシャワの歴史地区」。
解説を読むと、国土が平らなポーランドは昔からさまざまな国に侵略されており、ワルシャワはそのたびに破壊・再建を繰り返してきたことがわかります。
特に第二次世界大戦中の破壊はひどかったようですが、その後の努力によってほぼ完全に復元されたことが書かれています。
どうやら「再建」がこの世界遺産のキーワードであるようですね。
そして、丸ごと再建した都市の世界遺産登録はワルシャワしか認めないとも書かれています。
すべての世界遺産の中で唯一といえる特徴です。
とても重要です。
以上が「ワルシャワの歴史地区」の要点であるわけですが、上にぼくがまとめた文章には特別な固有名詞がほとんどありませんし、理屈で理解できるので一度読めばほとんど覚えることができるでしょう。
こうして流れや物語、意味や理由を理解することが「理解学習」であり、もっとも大切な学習であることは前回の記事で書きました。
「捨てる部分は範囲ではなく難易度で選ぶべき」というのは、こういう理解しやすい要点のみを学習して、固有名詞を暗記するような辛く難しい学習を避けるということです。
ワルシャワの解説では、侵略の例としてポーランド分割やナチス・ドイツを挙げており、ベルナルド・ベロット等の人名や「すべては未来のために」「壁のひび一本まで忠実に」といった標語も登場します。
こうした単語や標語は何度か読んでいくうちにいくつか覚えられればいいし、覚えられなくても問題を読んで一部を思い出せればそれで十分なのです。
なんといっても5問に1問、正解できればいい程度なのですから。
そしてこうした学習は、実はマイスター試験の受検時にとても役に立つことになります。
たとえば「世界遺産の真正性と再建の関係について、具体的な世界遺産の例を挙げながら1,200字以内で論じなさい」というような問題が出題された場合、要点を学んでいる人はワルシャワを例に出して書き進めることができるでしょう。
でも、ただ固有名詞を覚えて理解を怠ってきた人は解答できない可能性もあるわけです。
どちらが世界遺産の本質理解に近づいているか一目瞭然です。
以上より、「世界の遺産」の学習は地域によって捨てる・捨てないを決めるべきではありません。
すべての世界遺産に目を通す代わりに、難しい固有名詞は捨てて要点のみに集中して学習するべきです。
つまり、「捨てる部分は範囲ではなく難易度で選ぶべきである」ということなのです。
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■世界遺産検定 最効率学習法=多読学習
○多読学習のススメ
世界遺産検定1~4級の学習は「多読」に尽きます。
「攻略法6.試験勉強の3要素」で書いたように、覚えようとしなくていいので、1日になるべくたくさんのページを読み、何度も何度も読み返してください。
○多読学習の方法
- 1日になるべくたくさんのページを読む
- 何度も何度も読み返す
もっともダメな学習法は、「少ないページをコツコツ読んで、確実に覚えようとする」方法です。
英単語で言えば、「1日10~20語を確実に覚える」ような暗記法はNGで、覚えられなくてもいいので「1日100~200語を読む」方法を実践してください。
世界遺産検定の場合なら、「1日4~8ページを確実に覚える」ような学習法ではなく、覚えなくてよい代わりに「1日30~40ページを読む」のです。
○多読する際の注意点
スラスラと読んでいくわけですが、もっとも大切なのは全体の流れ・物語を把握することです。
コツは、主語が誰で何をしたのか、あるいはどの建物で何が特徴なのかといった具合に、文章で把握することです。
固有名詞がわかりにくければ、その名詞を一般名詞に置き換えて考えてみましょう。
○多読学習のポイント
- 全体の流れ・物語を把握する
- 固有名詞は覚えようとしない、でも、しっかり読む
シェーンブルン宮殿の例で言えば、「マリア・テレジアがハプスブルク家の家督を継承してバロックの宮殿をロココに改築した」ということが理解しにくいのであれば、「女王が王家を継いで、重苦しい宮殿を軽やかな宮殿に建て替えた」というように文章を簡素化して理解します。
「覚える」のではなく「理解する」ことを意識してください。
固有名詞については、覚えなくてもいいのでしっかり読んでください。
「ヨハン・フェルディナント・ヘッツェンドルフ・フォン・ホーエンベルク」なんていう名前を覚える必要はありませんが、キッチリ読んでください。
何度も読んでいくうちに、なんとなくリズムがつかめてきます。
そして選択肢の中にこんなに長い名前が出てきたら、「そういえばどこかの宮殿の解説にそんな感じの長い名前があったな」と一部を思い出せるかもしれません。
完全に覚えていなくても、問題と解答を読んでなんとなく思い出せればそれで正解を選んだり、選択肢を減らすことはできるのです。
○復習は忘れずに
人は忘れる動物なので、忘れることを前提に勉強をしてください。
ですから必ず復習をするようにしましょう。
たとえば1日の勉強を終えるとき、あるいは寝る前に、一通り読み返します。
復習は、普段読むときよりもさらに軽くササッと目を通すだけで構いません。
1ページ数秒でもいいくらいです。
そして翌日の朝に前日の分を読み返し、3日後、1週間後、2週間後、1か月後に同じように軽く読み直します。
これで1か月の間に7回も読んだことになります(さすがにここまでやるとちょっとやりすぎかもしれません)。
こうして復習を繰り返していくと、何がどこに書かれているのかなんとなくつかめてきます。
そうすると、固有名詞を思い出せなくても、問題と解答を読めば正解がわかるくらいにはなるのです。
さらに2か月後、3か月後と情報にアクセスする回数を増やして万全を期しましょう。
確実に覚えようとするのではなく、情報への「アクセス回数」を増やすのが多読学習のポイントなのです。
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次回は、検定教材の学習ではカバーすることのできない時事問題や世界史の習得、検定講座について解説します。
[関連サイト]
世界遺産検定(公式サイト)