イギリスの世界遺産「ストーンヘンジ、エーヴベリーと関連する遺跡群」のストーンヘンジでは最大で50tにもなる「サーセン・ストーン」と呼ばれる巨大な砂岩が使用されています。

以前からサーセン・ストーンはグレートブリテン島南西部ウィルトシャーのマールバラ近辺の丘から持ち運ばれたものといわれていましたが、具体的な場所は明らかになっていませんでした。

７月下旬、イングリッシュ・ヘリテッジの研究チームを率いるブライトン大学のデイヴィッド・ナッシュ教授は科学ジャーナル『サイエンス・アドバンシス』誌上で、採石場を特定し、その場所がマールバラの南のウェスト・ウッズであると発表しました。

■Stonehenge: Sarsen stones origin mystery solved（BBC）

今回はこのニュースをお伝えします。

＊　＊　＊

ストーンヘンジは同心円を描くようにいくつものヘンジ（円形工作物）からできている遺跡です。

土のヘンジや木のヘンジの内側に石のヘンジが造られましたが、石のヘンジであるストーン・サークルも何重もの同心円状に築かれています。

石は２種類で、2～4tほどの玄武岩であるブルー・ストーンと、その10～20倍にもなる砂岩であるサーセン・ストーンが使用されています。

外から見てわかる明確かつ代表的なストーン・サークルは以下４つです。

• 最外部に30個のサーセン・ストーンを円形に並べ、上に30個の横石を載せたストーン・サークル
• その内側に80個のブルー・ストーンを円形に配したストーン・サークル
• さらに内側に３つのサーセン・ストーンを使って「Π」形のトリリトンと呼ばれる３つ石を形成し、トリリトン５つを「Ω」の馬蹄形に並べたストーン・サークル
• そのまた内側に馬蹄形の同心形にブルー・ストーンを並べたストーン・サークル

最外部の円形のストーン・サークルと馬蹄形のトリリトンがサーセン・ストーンですが、最外部のサーセン・ストーンが25tほどであるのに対し、トリリトンを構成している巨石は最大50tに及びます。

このような巨大な石をどこからどうやって運んできたのでしょうか？

長い間、謎とされていましたが、ブルー・ストーンについては直線距離で220kmほど離れているプレセリ山地の "Carn Goedog" や "Craig Rhos-y-felin" と呼ばれる場所であることが最近明らかになっています。

詳細は以下の記事で確認してください。

■世界遺産NEWS 19/03/20：ストーンヘンジのブルー・ストーン採石場を特定

サーセン・ストーンについては以前からマールバラの丘から運ばれているのではないかとは言われていました。

しかし、具体的にどこなのか明らかになっていませんでしたし、確固たる証拠もありませんでした。

そして今回のニュースです。

イングランドの歴史遺産を管理するイングリッシュ・ヘリテッジの研究チームはマールバラの南に位置するウェスト・ウッズの森の中の石の組成がストーンヘンジのものと化学的にほぼ同一であることを確認しました。

チームはストーンヘンジのすべてのサーセン・ストーンをポータブルＸ線装置を使って蛍光Ｘ線分析を行い、おおよその石の成分元素や構成比率を割り出しました。

さらに1958年にひとつのサーセン・ストーンからくりぬかれた２点のサンプルを質量分析装置に掛けてより詳細な分析を行いました。

これらの結果、すべてのサーセン・ストーンが１か所の採石場から産出されたと見られることが明らかになりました。

そしてグレートブリテン島南東部のノーフォークから南西部のデボンまで20所のサーセン・ストーンの分析を行った結果、ウェスト・ウッズのものとほぼ一致し、産地であると考えられるという結論に至りました。

青いピンがウェスト・ウッズ、赤いピンはプレセリ山地、世界遺産のロゴはストーンヘンジとエーヴベリー

チームの仮説によると、紀元前2500年頃にウェスト・ウッズの丘からサーセン・ストーンが切り出され、なんらかの方法で南25kmほどにあるストーンヘンジまで運ばれ、ストーン・サークルの一部として使用されたということです。

道中で石の破片が発見されればルートの特定も可能としています。

これでブルー・ストーンとサーセン・ストーンの採石場がほぼ特定されたことになります。

次は運搬ルートとその方法の解明ですね。

期待しています。

［関連サイト＆記事］

ストーンヘンジ：謎に包まれた巨石文明の遺産

世界遺産NEWS 19/03/20：ストーンヘンジのブルー・ストーン採石場を特定（前回の関連記事）

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