世界遺産NEWS 19/02/24:グレートバリアリーフの齧歯類が温暖化で絶滅
オーストラリアの環境エネルギー省は2月18日、グレートバリアリーフ北端の島でのみ確認されていた齧歯類(げっしるい)の一種、ブランブル・ケイ・メロミスの絶滅を宣言しました。
クイーンズランド州政府の報告書はその原因について気候変動による温暖化を挙げており、「おそらく気候変動で絶滅した最初の哺乳類」としています。
■Bramble Cay melomys: Climate change-ravaged rodent listed as extinct(BBC。英語)
一方、ガラパゴス諸島のフェルナンディナ島ではおよそ100年前に絶滅したと考えられていたフェルナンディナゾウガメが奇跡的に再発見されています。
■Giant tortoise believed extinct for 100 years found in Galapagos(The Straits Times。英語)
今回はこのふたつのニュースをお伝えします。
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ブランブル・ケイ・メロミスは短い茶色い毛を持つ体長14~17cm・体重70~170gほどのネズミに似た齧歯類の一種です。
グレートバリアリーフの北端にあたるトレス海峡(オーストラリア大陸とニューギニア島の間にまたがる海峡)の島々でのみ生息が確認され、グレートバリアリーフに生息する唯一の固有の哺乳類ともいわれていました。
19世紀には数百匹が見られ、1998年の調査では数十匹が捕獲されていますが、21世紀に入るとその数を急速に減らし、2009年を最後に目撃例はなくなっていました。
2014~15年にかけて本格的な探索が行われましたが発見に至らず、2016年にクイーンズランド州政府とクイーンズランド大学の研究者らは絶滅の報告を行いました。
この報告書の中で、「おそらく人為的な気候変動による哺乳類の最初の絶滅記録である」と記しています。
その理由ですが、温暖化による海面水位の上昇が主因と考えられているからです。
上の動画にもありますが、ブランブル・ケイ・メロミスが生息していたある島は海水面の上昇によって大幅に縮小し、嵐になると全域が水浸しになるなどした結果、島の緑は97%も失われてしまいました。
その後、ニューギニア島周辺でも調査が行われましたがいかなる痕跡も見つかりませんでした。
その結果、2019年2月18日、オーストラリアの環境エネルギー省は絶滅を承認し、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでも「絶滅」の表記に改められました。
なお、2013年に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次報告書では、温暖化には疑う余地はなく、人間の活動が温暖化の支配的な要因である可能性を95%以上としています。
そして21世紀末までに世界の平均気温は0.3~4.8度、海面水位は26~82cmの範囲で上昇する可能性が高いとしています。
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エクアドルの環境省は2月20日、絶滅したと考えられていたフェルナンディナゾウガメが約100年ぶりに再発見されたことを発表しました。
フェルナンディナゾウガメはガラパゴス諸島のフェルナンディナ島で発見されたこの島の固有種です。
しかしながら1906年に唯一の標本が確認されて以降、目撃例が途絶えており、同島が頻繁に噴火していることから絶滅したものと考えられていました。
ただ、フェルナンディナ島ではまれに未確認のゾウガメの目撃例があり、糞やサボテンの噛み跡も発見されていました。
そのためIUCNレッドリストでは「絶滅」ではなく「絶滅寸前」種に分類されていました。
今回、ゾウガメ再生プロジェクト・チームがフェルナンディナ島で本格的な調査を行った結果、2月17日に茂みの中にいる個体を発見しました。
およそ100歳のメスで、かなりの老齢と見られるということです。
現在は保護のためサンタクルス島のゾウガメ繁殖センターに送られ、さまざまな検査を受けています。
島内では他にも似たような足跡やゾウガメの糞が見つかっていることから他の個体がいる可能性があるとして調査を継続しています。
プロジェクト・チームはなんとしても他の個体を発見し、種の再生を目指したいということです。
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