哲学的探究1.哲学とは何か? ~哲学の定義~

シリーズ「哲学的探究:哲学入門」では純粋に哲学をしたい。

その際、なるべく哲学者の名前を出さず、普段使われている日常の言葉・自分の言葉で綴るつもりだ。

 

理由はふたつ。

哲学は誰にでも同じように行うことができるはずのものであるから。

「誰々はこう主張している・していない」といった論争に巻き込まれず、問い自体に焦点を当てたいから。

 

だから哲学はなるべく自分自身の言葉で語るべきだと思うし、そのようにしたい。

では。

 

真理を探る思考の旅へ、いざ出発!

 

* * *

 

■哲学とは何か?

そもそも哲学ってなんだろう?

いろいろな入門書にさまざまな定義が記されているが、ぼくはきわめて明瞭なものと考えている。

 

真理の探究――

 

「真理」と「探究」。 

このどちらが欠けても哲学は成立しない。

 

* * *

 

■真理とは何か?

では、真理とはいったいなんだろう?

 

真理とは、絶対的・普遍的に正しいものだ。

それは人によって文化によって時代によって変わるようなものではなく、人の認識とは別に認められる究極の理(ことわり)だ。

 

たとえばリンゴを見る。

リンゴは赤い――

この「リンゴは赤い」は真理なのか?

 

白いリンゴがあるかもしれない――

色を認識できないイヌにとってリンゴは赤くない――

赤を青く、青を赤く見ている人がいるかもしれない――

そもそも「色」はリンゴから送られてきた可視光線を目で受けて、目から送られてきたデータを脳が分析して創り出したものであって、赤という質がリンゴに付随しているわけではない――

 

とかなんとか、「リンゴは赤い」に対していろいろなことが言えてしまう。

 

いま現実にリンゴを見ていてそのリンゴが赤く、いままで赤以外のリンゴを見たことがない。

それなら「リンゴは赤い」はどうやら「事実」であると推測できる。

しかし、現実に青いリンゴや黄色いリンゴを見ることで事実は更新されて、「リンゴは赤かったり青かったり黄色かったりする」という事実に変わる。

 

事実は経験によって変化するが、真理はこのように変わることのない永遠不変の理(ことわり)だ。

こうした普遍を探究すること。

あるいは、どこまで探究できるのか思考の限界を示すこと。

これが哲学の目的だ。

 

* * * 

 

■思想・信条と哲学の違い

哲学の定義でもう1点重要なのが「探究」であるということだ。

 

著名な学者や宗教家が「Aこそ真理である!」と唱えていたとする。

Aは科学理論でも哲学理論でも宗教的主張でも、なんなら神様だって構わない。

とにかく「Aは真理である」と主張している。

 

これをB君が、「ああそうか、Aは真理なんだ」と理解したとしても、B君は「哲学した」ことにはならない。

B君は「『Aは真理である』と信じた」にすぎない。

 

私はこう考える――

これを思想という。

 

私はこう信じる――

これを信条という。

 

人は自由に考え、信じることができる。

思想・信条は自由であるから、各自勝手に考え、信じればよい。

 

ただ、勝手な主張であるから普遍とは無関係で、つまり真理ではない。

したがって思想や信条は哲学ではない。

 

人生哲学、経営哲学、野球哲学、政治哲学……

世の中では哲学がしばしば思想・信条の意味で使われている。

本来の哲学はこれらとは対極の位置にある。

 

哲学は、時代も国境も民族も宗教も超えたものを探究する。

だから、哲学は時代も国境も民族も宗教も超えて共有できる。

冒頭に「哲学は誰にでも同じように行うことができる」と書いた理由がここにある。

 

* * * 

 

■「哲学する」とはどういうことか?

では、どうしたら「哲学する」ことができるのだろうか?

 

人が何かをするときに使える道具はたった2つしかない。

考える能力=知性と、感じる能力=感性だ。

 

知性でもって真理を探究する活動を哲学という。

感性でもって真理を探究する活動を芸術という。

 

本サイトでは "LOGIC" や "ART" を主要テーマのひとつに掲げているが、それはこうした理由による。

 

そして。

知性は人に備わっている、物事を知り・考え・判断する能力をいう。

知性は「論理」によって成立し、論理は「言葉」によって紡がれる。

つまり、哲学とは論理でもって、言葉でもって真理を探究する活動を示す。

 

「Aは真理である」と考え信じる限りにおいて、それは思想・信条であって哲学ではない。

「Aは真理である」を論理によって明らかにしてはじめて哲学であると言える。

 

つまり、どんな理論であっても実際に自分で真理を探究してみなくては哲学したことにはならない。

哲学とは「歩く」や「食べる」と同じように動詞的なものなのだ。

 

だから哲学はしばしばこう言われる。

哲学は教えることができない――

 

もちろん。

真理に向かって考えつづけることが哲学なのだから。

 

では、どうしたら「正しく」哲学することができるのだろう?

――論理的に考えることだ。

 

では、「論理的に考える」とはどういうことか?

――言葉を正しく間違いなくつないで推論することだ。

 

では、「正しい」「間違い」とはいったい何か?

 

世の中ではいろいろな人がさまざまなことに対して「正しい」とか「間違い」とか主張している。

でも、「正しい」と「間違い」の定義を押さえない限り、こうした議論に意味があるとは思えない。

 

* * *

 

次回は「正しい」と「間違い」について考えてみたい。

 


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