絵&写真7:光と闇 ~オディロン・ルドン~

揺れる毛。うごめく虫。見つめる目。
分解される身体。歪む空間。消える時間。

深く、悲しく、恐ろしい場所。
それがルドンの闇だ。

闇が恐ろしければ闇を隙間なく埋めてしまえばいい。
言葉によって。

闇は単なる光の不在だ――
世界は唯物的に動いている――
感情も感覚も迷妄だ――

だからルドンは科学に近づいた。
そう感じる。

黒の時代の絵は思想に大きな影響を受けている。
人体や物質に対するある観念に縛られている。

でも。
闇を追い詰めれば追い詰めるほど、闇の核、闇の本質へと迫る。
言語では到底埋めきれない闇の深遠に気づかざるを得なくなる。
こうしてより本質的な闇が絶対的な恐怖を呼び起こす。

ところが。

オディロン・ルドン「青い花瓶の花々」1904年頃、岐阜県美術館
オディロン・ルドン「青い花瓶の花々」1904年頃、岐阜県美術館

闇に花を置くと、花は万の色彩を放ち、生々しく艶やかに輝き出す。
なぜって、闇は光の不在なのではなく、花の不在なのだから。

空間が光に満ちていても、反射するものがなければ闇に閉ざされる。
闇と同じ場所に光はあるのだ。

オディロン・ルドン「翼のある横向きの鏡像(スフィンクス)」1898-1900年頃、岐阜県美術館
オディロン・ルドン「翼のある横向きの鏡像(スフィンクス)」1898-1900年頃、岐阜県美術館

同様に。
哀しみと同じ場所に悦びがある。
ルドンの色彩はそう語っているように、ぼくには感じられる。

   * * *

伝えられるところによると。

ルドンは幼くして母に捨てられ、父に育てられたという。
身体は弱く、性格は内向的。
描く絵はどこか猟奇的で、黒を基調としたものばかり。

40歳で結婚するが、長男はすぐに死去。
そんなルドンの絵が、待望の次男アリの誕生を機に変わる。

闇から光へ。
黒から色彩へ。
幻想から物質へ。
思想から感覚へ。

オディロン・ルドン「グラン・ブーケ」1901年、三菱一号館美術館
オディロン・ルドン「グラン・ブーケ」1901年、三菱一号館美術館

闇は光の中にあり、光はまた闇の中にある。
闇のルドンも、光のルドンも、人の形のひとつの姿なのだろう。

光のルドンの感覚こそアートだと思うが、闇のルドンの感情にも大いに共感する。

p.s.
上の「グラン・ブーケ」、なんと2.5×1.6mほどもある。
三菱一号館美術館の所蔵になったそうで、これがしばしば見れるとは、なんという幸運。
こういうところが東京で暮らすことのすばらしさだと思う。

 

<関連サイト>

三菱一号館美術館(公式サイト)

 


News

★姉妹サイト「世界遺産データベース」を制作中です。現在、ヨーロッパの世界遺産を執筆しています。

★世界遺産カテゴリー "WORLD HERITAGE" にて新シリーズ「世界遺産で学ぶ世界の建築」を立ち上げました。世界遺産を通して世界の建築を学びましょう。

 →世界遺産で学ぶ世界の建築

★世界遺産カテゴリー "WORLD HERITAGE" にて新シリーズ「世界遺産検定攻略法」が始動! 最難関の1級とマイスター攻略を中心に、受検戦略や学習法を紹介します。

 →世界遺産検定攻略法

E-book

■Amazon Kindle

■楽天Kobo

自然遺産候補地「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の魅力を解説
自然遺産候補地「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が5月に登録勧告を得て7月の正式登録が確実なものとなった。その内容を紹介する。クリックで外部記事へ
文化遺産候補地「北海道・北東北の縄文遺跡群」の魅力を解説
2021年7月に世界遺産登録の可否が決まる文化遺産候補地「北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道・青森・岩手・秋田)」の魅力を解説する。クリックで外部記事へ

Topics

 

・All About 世界遺産 新記事

 北海道・北東北の縄文遺跡群

 奄美・徳之島・沖縄島・西表島

 2019年新登録の世界遺産

 ンゴロンゴロ/タンザニア

 イエローストーン/アメリカ

 

・その他

『朝日新聞 世界の扉』記事執筆。『Fine』自然遺産特集執筆。『地球の歩き方 MOOK 世界のビーチBEST100』『ノジュール』に旅のスペシャリスト・達人として参加。『PEN』でアフリカの世界遺産執筆。『MONOQLO』世界遺産特集取材協力。『女性セブン』で日本の世界遺産を解説。エクスナレッジ『聖地建築巡礼 世界遺産から現代建築まで、73の聖地を巡る旅』、洋泉社ムック『負の世界遺産』執筆。RKBラジオ、FM TOKYOで世界遺産特集出演。その他企業・大学広報誌等。

New articles

<旅論:たびロジー>

1.あなたは幸せですか?

.麻薬は悪? ゴキブリは汚い?

.裸とワイセツ

 

<エロス論:エロジー>

.遊びの本質

.おいしい、美しい、気持ちいい

.文化SM論

 

<絵と写真の話>

.アートと魂~抽象画とポロック

.ロスコの扉 ~ロスコ・ルーム~

10.写真と抽象芸術~グルスキー

 

<哲学的探究:哲学入門>

1.哲学とは何か?

2.「正しい-間違い」とは何か?

3.証明とは何か?

4.わかる・理解するとは何か?

5.力とは何か? 波とは何か?

6.物質とは何か?

7.見る・感じるとは何か?

8.空間とは何か?

9.時間とは何か?

10.物質と時間を超えて

以下続く。

 

<哲学的考察:ウソだ!>

.無と偶然

.ことだま-はじめに言葉ありき

10.物質とは何か?

11.神とは何か?-一神教と多神教

 

<世界遺産NEWS>

世界遺産最新情報/ニュース

 

<世界遺産ランキング集>

登録基準に見る世界遺産

世界の七不思議

国内集計の世界遺産ランキング

海外集計の世界遺産ランキング

世界遺産国別ランキング

 

<UNESCOリスト集>

日本の遺産リスト

無形文化遺産リスト

世界の記憶リスト

世界遺産リスト

ユネスコエコパーク・リスト

世界ジオパーク・リスト

創造都市リスト

世界危機言語アトラス・リスト

 

<世界遺産の見方>

知性的鑑賞法

感性的鑑賞法

異文化理解の方法論

正しい・間違いの基準

星と大地と古代遺跡

 

<味わう世界遺産>

.王様のワイン トカイ

.命の水 テキーラ

.ポルトガルの宝石 ポート

.神の贈り物チョコレート

 

<世界遺産で学ぶ世界史>

01.宇宙と地球の誕生

02.大陸の形成

03.地形の形成

04.生命の誕生

05.生命の進化

06.人類の夜明け

07.文明の誕生

08.エジプト文明

09.インダス文明

10.中国文明

以下続く。

 

<世界遺産で学ぶ世界の建築>

01.建築の種類1:城と宮殿

02.建築の種類2:宗教建築

03.建築の種類3:メガリス

04.木造建築の基礎知識

05.石造建築の基礎知識

06.ギリシア建築

07.ローマ建築

08.ビザンツ/ビザンチン建築

09.ロマネスク建築

10.ゴシック建築

以下続く。

 

<世界遺産写真館>

1.文化交差路サマルカンド1

2.文化交差路サマルカンド2

3.アッパー・スヴァネティ

4.グラナダのアルハンブラ宮殿1

5.グラナダのアルハンブラ宮殿2

6.コトル

7.プレア・ヴィヒア寺院

8.福建の土楼1

9.福建の土楼2

10.フォンニャ=ケバン国立公園1

以下続く。

 

<世界遺産攻略法>

1.世界遺産検定攻略の理念と背景

2.世界遺産検定の概要

3.試験戦略の一般論

4.試験戦略の理念

5.世界遺産検定の受検戦略

6.試験勉強の3要素

7.世界遺産検定 最効率学習法

8.時事問題・世界史・検定講座

9.マイスター試験の概要

10.マイスター試験問1・2対策

11.マイスター試験問3対策

12.マイスター試験時間術&解答術

Blog

Link

Search

Site map

○Travel[旅]

○World heritage[世界遺産]

○Art[芸術]

○Logic[哲学]

○Library[私的図書館]

○Profile[プロフィール]

○Work[仕事について]

○Inquiry[お問合せ]

○Blog[ブログ]

※本サイトはリンクフリーです