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世界遺産NEWS 21/11/21：キリバスがフェニックス諸島保護地域で漁業再開を表明
11月15日、キリバス政府は現在禁漁区となっている世界遺産「フェニックス諸島保護地域」を商業漁業に開放するとの声明を発表しました。
世界遺産の顕著な普遍的価値に与える影響とともに、背後に暗躍する中国に深い懸念が寄せられています。
■Kiribati to open one of world’s largest marine protected areas to commercial fishing（The Guardian）
今回はこのニュースをお伝えします。
＊ ＊ ＊
キリバスの世界遺産「フェニックス諸島保護地域」は海底火山地帯でサンゴ礁地帯でもあり、魚類が豊富な深海域から海鳥の楽園である陸域まで生物多様性に富むことで知られています。
世界遺産の資産面積408,250平方kmはフランスの世界遺産「フランス領南方地域の陸と海」の672,969平方kmに次ぐもので、続くアメリカの「パパハナウモクアケア」の362,075平方kmやオーストラリアの「グレートバリアリーフ」の348,700平方kmを上回っています。
日本の国土面積377,975平方kmよりも大きいということでその大きさがうかがえます。
キリバスのEEZ（排他的経済水域）となるとインド亜大陸を超えるほどとなっています。
島国であるキリバスの主要産業は漁業で、他に観賞魚や海藻の輸出、ココナッツやバナナの栽培などが行われています。
特に活発なのがマグロ漁で、国民が漁をするだけでなく、漁業権を販売することで外貨を得ており、歳入の75%を占めるともいわれています。
2010年に「フェニックス諸島保護地域」が世界遺産リストに搭載され、2015年までに世界遺産の資産内における商業漁業が全面的に禁止されました。
当然、漁業権収入が減ることになるわけですが、政府は国際NGOであるコンサベーション・インターナショナルやニューイングランド水族館などと協力・提携し、PIPA（フェニックス諸島保護地域）保全信託基金を設立して寄付などを募ることで補填できると予想していました。
しかし、これまでに基金から得られたのは約700万ドル（約８億円）にすぎず、2015年から現在までに14,600万ドル（約166億円）の経済損失を計上したとしています。
これを受けて政府は15日の声明において、国民の生活の質を改善するためにPIPAにおける商業漁業再開の意志を表明しました。
今後、関連法の改正のために議会の承認を取り付ける予定です。
この件に関して、背後に中国が暗躍しているのではないかという報道が出ています。
中国はキリバスの重要な貿易相手国のひとつです。
2003年にキリバスが台湾と外交関係を樹立したことに対して中国は断交で対応しましたが、2019年に台湾と断交することで中国との国交を回復しています。
中国の大船団が世界中の海域で漁を行っていることはよく知られていますが、年々、操業可能な漁業域は減りつづけています。
そこでキリバスに口が利く中国が圧力を掛けたのではないかといわれており、ニュージーランドの報道機関1 NEWSはPIPAの開放によって最大で年間２億ドル（約228億円）もの漁業権収入を見積もっています。
中国はキリバスに太平洋における海洋拠点を整備する計画を有しているとも噂されており、軍事転用を懸念する声も挙がっています。
政府はこれまで明確に否定してきましたが、中国企業による滑走路の整備計画や今回のPIPA開放によって疑惑が再燃しています。
キリバスは比較的、アメリカのハワイと近いこともあって、アメリカも懸念を強めています。
この計画が進めば世界遺産「フェニックス諸島保護地域」の顕著な普遍的価値に大きな影響を与える可能性もあることから、来年以降の世界遺産委員会でなんらかの動きがあるかもしれません。
注目していきたいと思います。
［関連記事］
※各記事にさらに過去の関連記事へリンクあり
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