世界遺産NEWS 21/10/13:ゴーハムの洞窟群で4万年前に封印された未知の空間を発見

ジブラルタル国立博物館の考古学チームは9月下旬、イギリスの世界遺産「ゴーハムの洞窟群」のヴァンガード洞窟で未知の空間を発見したことを発表しました。

およそ4万年前から封印されていたようで、内部からは動物の骨や殻、壁の傷跡などが発見されています。

ネアンデルタール人の関与を示唆するものもあり、彼らの絶滅直前の生活の様子を伝えるものとして期待が高まっています。

 

Cave chamber closed for 40,000 years could hold the key to the lives of Neanderthals(CNN travel)

 

今回はこのニュースをお伝えします。

 

 

* * *

イギリスの世界遺産「ゴーハムの洞窟群」は海外領土であるイベリア半島南端付近に広がるジブラルタルに位置しており、46の洞窟を構成資産としています。

旧人であるネアンデルタール人の10万年以上にわたるの生活の跡を筆頭に、新人であるクロマニヨン人やフェニキア人の痕跡なども発見されています。

 

壁や床には数々のペトログリフ(線刻・石彫)が残されており、「人類最初期の芸術作品」と評価する声もあります。

芸術はすでに旧人の時代にはじまっていたとする説がありますが、ネアンデルタール人の築いたムスティエ文化の一端がうかがえます。

 

そしてヴァンガード洞窟はゴーハム洞窟と並んで洞窟群を代表する洞窟のひとつで、これまでにシカやアザラシ、イルカ、マグロ、ムール貝、ウニといった動物の骨や殻が発見されています。

炉の跡や4歳ほどのネアンデルタール人の乳歯も見つかっており、彼らの食生活を示すものと考えられています。

イギリスの世界遺産「ゴーハムの洞窟群」のヴァンガード洞窟
イギリスの世界遺産「ゴーハムの洞窟群」のヴァンガード洞窟 (C) Gibmetal77 Wikimedia Commons

9月下旬、ジブラルタル国立博物館の考古学チームはヴァンガード洞窟で未知の空間を発見したことを発表しました。

チームを率いるのは進化生態学者のクライブ・フィンレイソン博士で、2012年の調査開始以来、最大の発見ということです。

 

ヴァンガード洞窟は全長17mほどの洞窟ですが、屋根と思われていた場所から岩や砂で埋められていた開放部が見つかり、その上に13mほどの深さを持つ部屋が発見されました。

堆積物は約4万年前のものと見られることから、その頃に封印されたようです。

 

これまでの調査ではオオヤマネコやハイエナ、ハゲワシといった動物の骨や巻貝の殻、壁の傷跡が発見されています。

これらが自然由来かネアンデルタール人によるものなのかは明らかではありませんが、たとえば巻貝は海洋性のもので、海抜20mほどに位置するこの洞窟に自力でたどり着くことはありません。

壁の傷跡とともにネアンデルタール人の関与が指摘されています。

 

また、この部屋自体が人工的に封印された可能性もあり、ネアンデルタール人の埋葬跡などが発見されるかもしれないということで期待を集めています。

 

4万年前ほどからクロマニヨン人がヨーロッパに進出を開始し、ネアンデルタール人は後退を続けて3万~2万年ほど前に絶滅してしまいます。

ネアンデルタール人の遺跡としては最晩年のもののひとつであり、最後の生活の様子が解明されるかもしれません。

 

楽しみですね。

 

 

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