ルートで選ぶ世界遺産3:北京とその近郊
東アジアでもっとも世界遺産が集中しているのが北京だ。
北京を起点に、なんと6か所もの世界遺産を訪ねられるのだ!
まずはそのデータを見てみよう。
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■テーマ:北京近郊の6つの世界遺産を訪ねる旅
■ルート:北京近郊
■世界遺産:6か所(遺産の種類)
- 万里の長城(文化遺産)
- 北京と瀋陽の明・清朝の皇宮群(文化遺産)
- 明・清朝の皇帝陵墓群(文化遺産)
- 頤和園:北京の皇帝の庭園(文化遺産)
- 天壇:北京の皇帝の廟壇(文化遺産)
- 周口店の北京原人遺跡(文化遺産)
※承徳の避暑山荘と外八廟(文化遺産)
6つの世界遺産の中でもハイライトはなんといっても「万里の長城」と「北京と瀋陽の明・清朝の皇宮群」の故宮(紫禁城)だ。
万里の長城は世界でもっとも大きな人工建造物。
故宮は世界最大級の宮殿跡で、その前に広がる天安門は世界最大の広場。
どちらも超ド級だ。
頤和園(いわえん)は西太后が愛した避暑地。
すべてが世界遺産に登録されている中国四大名園のひとつだ。
個人的に好きなのは天壇だ。
天壇公園の祈年殿と圜丘壇(かんきゅうだん)の神秘的なデザインがなんともいえず魅力的。
中国人が愛するパワースポットでもある。
「承徳の避暑山荘と外八廟」は北京の北180kmほどの位置にある承徳市の世界遺産。
中国四大名園のひとつで、庭園・宮殿・寺廟など見所が多い。
ギリギリの旅になるが、北京からでも日帰りが可能だ。
かなり無理をすれば「泰山」「曲阜の孔廟、孔林、孔府」も日帰り圏内ではある。
ただし、6つの世界遺産といっても1・2・6の世界遺産の場合、北京にあるのはその一部にすぎない。
「万里の長城」の構成資産は河北省・山西省・甘粛省・内モンゴル自治区・北京市、「明・清朝の皇帝陵墓群」の構成資産は湖北省・河北省・江蘇省・遼寧省・北京市、「北京と瀋陽の明・清朝の皇宮群」は北京市と瀋陽市に点在する。
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ルートの詳細を見ていこう。
このルートは前回紹介したペルーのルートと違い、移動の必要がない。
北京のホテルを拠点に訪ねられるのが最大の魅力だ。
もともと中華の中心は長安(西安)や洛陽で知られる中原にあった。
北京が中国統一王朝の首都になるのは、13世紀に元のフビライが大都を建設してから。
次の明は当初南京を首都としていたが、永楽帝が遷都して北京に改名。
続く清も最初は瀋陽に首都を置いていたが、順治帝が北京に遷都。
以来中華民国、現在の中華人民共和国も首都を北京に置いた。
そのため6つの世界遺産のうち「周口店の北京原人遺跡」を除いてすべて明・清代の建造物だ。
世界遺産を個別に紹介していこう。
まずはAll About世界遺産ランキング第7位の「万里の長城」。
建造期間は紀元前3世紀の秦の時代から明末の17世紀まで約2,000年に及び、その長さは中国国家文物局の発表によると明代の長城の総延長8,851.8km、秦代や漢代の長城を含めると21,196.18kmにもなるという。
まさに人類最大のビッグ・プロジェクトだ。
北京近郊に残るのは主に明代の長城。
以下の長城が有名で、どうせなら八達嶺ともう一個所くらいは訪れたい。
- 八達嶺(はったつれい)
- 居庸関(きょようかん)
- 慕田峪(ぼでんよく)
- 司馬台(しばだい)
- 金山嶺(きんざんれい)
- 蟠龍山(ばんりゅうざん)
続いて「北京と瀋陽の明・清朝の皇宮群」登録の故宮(紫禁城)。
14世紀後半~20世紀はじめまでおよそ500年にわたって明・清の中心となった宮殿跡で、24人の皇帝がここで中華世界を指揮した。
敷地面積は東京ドーム約15個分で、伝説では9999.5室あると伝えられており、実際9,000以上はあるらしい。
現在は故宮博物院として公開されているが、広大すぎてとてもそのすべては回れない。
「明・清朝の皇帝陵墓群」は明・清代の皇帝の陵墓をまとめて登録した世界遺産。
北京にあるのは明十三陵で、明代の13人の皇帝とその皇后が眠っている。
13基の陵のうち、公開されているのは永楽帝が眠る長陵、万暦帝の陵墓で地下宮殿が残る定陵、隆慶帝の昭陵の3つのみ。
中国四大名園に数えられる「頤和園:北京の皇帝の庭園」は、19世紀末に西太后が造園した大庭園。
国が傾くほどの巨費を投入して中国中の美しい景観をこの地に集めた。
たとえば人工湖である昆明湖に浮かぶ美しい橋は杭州の世界遺産「杭州西湖の文化的景観」を模したもの。
世界遺産「蘇州古典園林」や蘇州水郷古鎮の影響は蘇州街やあちらこちらに見られる太湖石に見ることができる。
天を治める天帝に対して、地を治める天子が皇帝だ。
その皇帝が天にいる天帝と交信するための施設を「壇」と呼ぶ。
北京には祈穀壇、天壇、地壇、日壇、月壇、先農壇、先蚕壇、社稷壇、太歳壇という9つの壇があり、「天壇:北京の皇帝の廟壇」に登録されている天壇公園には祈穀壇と天壇がある。
現在の祈年殿と圜丘壇だ。
地上・雲上・天上を表すという円形三重屋根が特徴的な祈年殿、ただ円形の石板が並ぶ圜丘壇のデザインはとても宇宙的で神秘的。
そして6つ目の世界遺産が「周口店の北京原人遺跡」だ。
いくつかの発掘跡があるが、1929年、そのうちのひとつである猿人洞で北京原人の頭蓋骨が発見された(現在は行方不明)。
いくつかの発掘跡が見学できるほか、博物館には北京原人の骨や遺物が陳列されている。
地味であるうえに北京中心部から約50kmも離れており、タクシーをチャーターするかバスを乗り継がないと行くことができない。
そのため足を運ぶ人は多くない。
北京でオススメしたいのが旅游バスだ。
北京旅游集散中心という組織が運営する北京版はとバスで、たとえば以下のようなルートがある(2013年4月時点)。
- A線:万里の長城・八達嶺、明十三陵・定陵
- B線:万里の長城・八達嶺、頤和園
- C線:万里の長城・八達嶺
これ以外にも万里の長城・慕田峪、天壇、頤和園、故宮などを巡るツアーを催行している。
[関連サイト]
北京旅游集散中心(公式サイト。中国語)
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北京と似た造りを持つ街に、韓国のソウルがある。
北京の場合、明・清朝の宮殿である故宮、廟壇である天壇、陵墓である十三陵が世界遺産に登録されている。
ソウルも朝鮮王朝の宮殿が「昌徳宮」、廟壇が「宗廟」、王墓が「朝鮮王朝の王墓群」として世界遺産になっている。
ソウル経由で北京に行けば、一度の旅で最大9つの世界遺産が訪ねられるのだ。
もちろん、たくさんの世界遺産を訪ねればいいというものではない。
でも、新しい世界遺産で思わぬ発見やインスピレーションと出合うこともあるだろう。
[関連サイト]