22/12/01:ハワイ島のマウナ・ロアが38年ぶりに噴火 - ART+LOGIC=TRAVEL [旅を考えるweb]

世界遺産NEWS 22/12/01:ハワイ島のマウナ・ロアが38年ぶりに噴火

アメリカのハワイ島に位置する世界遺産「ハワイ火山国立公園」のマウナ・ロアが1984年以来、38年ぶりに噴火しました。

34km東に隣接するキラウエアも噴火を維持しており、二重噴火の状態が続いています。

 

Hawaii’s Mauna Loa is erupting for the first time since 1984(CNN)

 

今回はこのニュースをお伝えします。

 

* * *

アメリカのハワイ島はマウナ・ロア、キラウエア、コハラ、マウナ・ケア、フアラライの5山で構成されています。

この中で火山として活動を続けているのはマウナ・ロアとキラウエアで、ふたつの山地を中心としたエリアが世界遺産「ハワイ火山国立公園」の資産となっています。

 

ハワイ島の前にハワイ諸島の成り立ちを解説しておきましょう。

 

地球は中心から外側におおよそ内核-外核-マントル-地殻でできています。

マントルは主に液体で、マグマが流動しています。

そしてその上の地殻はプレートと呼ばれる十数枚の固い岩盤で覆われています。

 

プレートはマントルから上昇したホット・プルームと呼ばれるマグマが冷えて固まった岩盤で、マントルからの圧力を受けて外側へと移動していきます。

プレートはやがて他のプレートの下に潜り込み、地中に沈んでマントルへと帰っていきます。

このプルームの上昇・下降を説明した理論がプルーム・テクトニクス理論で、プレートの水平移動を説明した理論がプレート・テクトニクス理論です(詳細は最後にリンクを張った「世界遺産と世界史2.大陸の形成」を参照のこと)。

 

さて、ハワイ島の地下にはハワイ・プルームと呼ばれるホット・プルームがあり、ここからマグマが地上に伸びていてハワイ・ホットスポットと呼ばれる火山の多発地帯を形成しています。

一帯は太平洋なので海中に海底火山ができるのですが、噴火を繰り返して火山は盛り上がり、やがて海洋島(大陸と陸続きになったことのない島)となって海上に姿を現します。

 

ところで、太平洋の大半は太平洋プレートというプレート上にあり、太平洋プレートは東から西に移動しています。

このため島はプレートとともに西へ動くのですが、地中深くからマグマが湧き上がるハワイ・ホットスポットの位置は変わりません。

このため新しい場所に海底火山が誕生し、新しい島へと成長していきます。

 

こうして8,000万年以上かけて造られた島の連なりが全長5,000kmを超えるハワイ=天皇海山列で、ハワイ諸島はその東端で、さらに末端がハワイ島です。

そしてハワイ島は5つの火山からなっており、現在もっとも活発に活動しているのがキラウエア、ちょっと前まで活発だったのがマウナ・ロアということになります。

 

ハワイ島は現在も年5~10cmほどのペースで西に移動しており、島の南東の海底ではカマエワカナロア(旧・ロイヒ)が噴火してします。

やがて火山活動の中心はこの海底火山に移り、新しい島になると考えられています。

 

おもしろいのは火山の女神ペレの伝説で、彼女は安住の地を求めて北西から南東へ移動しており、現在キラウエアに住んでいると伝えられています。

彼女の移動経路はハワイ諸島の島の誕生順と一致するといわれています。

世界遺産「ハワイ火山国立公園」、マウナ・ロアの噴火の様子
世界遺産「ハワイ火山国立公園」、マウナ・ロアの噴火の様子 (C) M. Patrick / USGS

マウナ・ロアは世界でもっとも大きな火山といわれています。

標高4,170mは北東に位置するマウナ・ケアの4,205mに及びませんが、山体は水深約5,000mの海底からはじまっているため高低差9,000m超とエベレストを超えており、総体積約80,000立方kmで世界最大の山体を有しています。

 

1843年から現在まで33回の噴火が記録されていますが、1984年以降は噴火していませんでした。

キラウエアが前世紀から現在まで100回以上も噴火を繰り返しているのと比べると活動はおとなしくなっているようです。

 

11月27日23時30分、そのマウナ・ロアで1984年以来、38年ぶりとなる噴火がありました。

ハワイ州のイゲ州知事は同日中に非常事態を宣言し、住民に注意を呼び掛けています。

USGS(アメリカ地質調査所)やHVO(ハワイ火山観測所)、HIEMA(ハワイ緊急事態管理庁)などが状況を注視していますが、溶岩流は山頂のモクアウェオウェオと呼ばれるカルデラ内に限られているようです。

キラウエア・カルデラから眺めたハレマウマウ火口(左下)とマウナ・ロア(右)
キラウエア・カルデラから眺めたハレマウマウ火口(左下)とマウナ・ロア(右)(C) J.Ibasan - NPS

噴火直後はいくつかの航空機が欠航しましたが、現在はハワイ島のふたつの空港(エリソン・オニヅカ・コナ国際空港、ヒロ国際空港)のいずれも平常通りの運航を行っています。

また、ハワイ火山国立公園についても多くのエリアが通常通りオープンしていますが、マウナ・ロアの一部については閉鎖したようです。

 

ハワイ州観光局はハワイ島観光には影響はないとしており、むしろ珍しいキラウエアとマウナ・ロアの二重噴火を見ることができるとして見学できる場所を案内しています。

一例がキラウエア・カルデラで、夜になると真下にキラウエアのハレマウマウ火口の赤い光、遠くにオレンジ色の光を放つマウナ・ロア山頂が確認できます。

 

ぜひ見てみたい光景ですね。

ただ、ハワイ島の訪問を計画している人は最新の情報を入手するよう心掛けてください。

 

 

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