世界的に気候変動による豪雨や渇水のニュースが相次いでいますが、ブラジルでは今年に入って沿岸部を中心に多くの地方が豪雨に見舞われています。
上流で豪雨が続くイグアスの滝では10月中旬に年平均の11倍という観測史上2番目の水量を記録しました。
この影響でアルゼンチン側・ブラジル側とも遊歩道が閉鎖され、アルゼンチン側についてはその多くが流されてしまいました。
ブラジル側では再開されましたが、遊歩道の下を濁流が流れるすさまじい光景が広がっています。
■Parte da passarela do lado argentino das Cataratas do Iguaçu cede após alta vazão(CNN BRASIL)
今回はこのニュースをお伝えします。
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世界遺産リストには「イグアス国立公園」という名称の物件が2件、記載されています。
イグアスの滝はアルゼンチン側とブラジル側で別々に登録されており、一方のイグアス "Iguazu" はスペイン語、もう一方のイグアス "Iguaçu" はポルトガル語となっています。
ふたつの国立公園にはそれぞれにエントランスがあるので、どちらかを選んで入園することになります。
ただ、両者は隣接しているので国境を越えて両側から滝を眺める人もたくさんいます。
そんなイグアスの滝ですが、雨季に入ったばかりのこの10月、雨が続いているようです。
10日以降、48時間で290mmという豪雨を受けてパラナ川の上流20kmほどにあるイタイプー・ダムが危険水域に到達し、水門を解放しました。
この影響で水量が急増し、アルゼンチン側・ブラジル側ともイグアスの滝の遊歩道が閉鎖されました。
ピークとなった13日には水量が毎秒16,500m^3(平方メートル)と年間平均の1,500m^3の11倍に到達。
1997年の観測開始後、2014年に続く史上2番目を記録しました。
そして赤茶色の濁流によって滝のハイライトである「悪魔の喉笛(のどぶえ)」の上に敷かれたアルゼンチン側の遊歩道の99セクションのうち51セクションが流されました。
現在、水量は減っており、上の写真にある悪魔の喉笛を見渡すブラジル側の遊歩道は再開されています。
ただ、下の動画のように濁流の上を歩くような形になっており、水煙が激しくて悪魔の喉笛はほとんど見えません。
アルゼンチン側の遊歩道ですが、毎秒5,000m^3まで減らないと修復作業が進められないということで、目処は立っていないようです。
実は、近年のイグアスの滝は乾季の6~8月に渇水に見舞われることが多く、2020・21年の同時期には下の動画(2020年5月)のようにほとんど滝がなくなってしまいました。
去年の9月は水位が下がりすぎて水力発電所で十分な発電ができず、大統領が節電を呼び掛けたほどです。
こうした豪雨や渇水には太平洋赤道域の東部から南アメリカ大陸沿岸にかけての海面水温が高くなるエルニーニョ現象や、反対に低くなるラニーニャ現象をはじめ、地球規模の気候システムが関わっているといわれています。
そして一帯は全体的に平均気温が少しずつ上昇している一方で、年間降水量は減少傾向にあり、温暖化と乾燥化が進んでいると考えられています。
ブラジルではアマゾンやパンタナールで近年、かつてない規模の火災が頻発しています。
これも気候変動の影響といわれていますが、世界最大級の森林と湿原であるだけにこちらの影響は世界規模と思われます。
豪雨にせよ渇水にせよ、気候変動は待ったなしであるようです。
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