1月17日、ふたつの地震がアフガニスタン北西部を襲い、多くの犠牲者を出しました。
ゴール州当局によると世界遺産「ジャムのミナレットと考古遺跡群」も被害を受け、レンガの一部が崩れてミナレットの傾きが拡大し、倒壊の可能性が高まったとしています。
■800-year-old Afghan minaret in danger of 'collapse' after quakes(Hindustan Times)
今回はこのニュースをお伝えします。
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1月17日午前9時5分、アフガニスタン北西部にあるバギス州の州都カラエナウの東41kmを震源にM4.9の地震が発生しました。
午後3時40分にはその9km北西を震源とするM5.3の地震が起こりました。
双子の地震は震源が地下18.8kmと浅かったため、大きな揺れが一帯を襲いました。
バギス州や隣のゴール州はイスラム教原理主義組織タリバンの支配域で、降りつづいた大雨によって地盤が脆くなっていたことや、途中の道路が崩落してアクセスが遮断されていたこともあって被害が拡大しました。
バギス州当局によると700~1,000棟の家屋が倒壊・損壊し、少なくとも28人が死亡、40人以上が負傷して病院に運ばれました。
タリバンは救援チームを派遣して被害者の救助を行い、テントや食料を提供して保護しており、国際社会にも支援を呼び掛けています。
また、ゴール州当局によると、地震の影響で世界遺産「ジャムのミナレットと考古遺跡群」に登録されているジャムのミナレット(ミナレットはイスラム教の礼拝を呼び掛けるための塔)を構成するレンガの一部が崩落しました。
さらに、もともとミナレットは少し傾いていましたが、目視で確認できるほど傾きが増したようです。
担当者は、これ以上、雨や雪が続いて河川が氾濫したり地盤が緩んだりした場合、倒壊の恐れがあるとしています。
このミナレットは1194年頃に完成した高さ65mのレンガ造で、基壇は八角形で頂部は円形となっています。
中央アジアでもっとも高いレンガ造の円楼ミナレットで、当時のペルシア・トルキスタンにおけるイスラム建築の最高峰と評価されています。
2002年に世界遺産リストに登録されましたが、内戦に伴う損傷や盗掘、河川による浸水、周辺道路の建設、保護体制の不備などの理由により、危機遺産リストにも同時に搭載されました。
UNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)のオードレ・アズレ事務局長は倒壊の危険に関して証拠は示されていないとしながらも、タリバンやゴール州に状況の確認と保全の支援を要請したということです。
タリバンの支配が強まっている2019年以降、UNESCOはジャムのミナレットの状況を確認できていないということで、一刻も早く現地調査と修復作業を進める意向を示しました。
一部では地震以前にUNESCOによって約200万ドルの拠出が割り当てられたと報道されていますが、それに基づく保護活動は行われていません。
タリバンの一部のメンバーはミナレットの破壊を切望しているともいわれており、状況は不透明です。
また、タリバンは世界遺産「バーミヤン渓谷の文化的景観と考古遺跡群」で宝物を求めて仏龕(ぶつがん。仏像を収める窪み)の周辺を掘削したとの報道も伝わっています。
盗掘は未遂に終わったようですが、アフガニスタンの文化遺産の現状が懸念されています。
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