21/12/12:サグラダ・ファミリアの「聖母マリアの塔」が完成 - ART+LOGIC=TRAVEL [旅を考えるweb]

世界遺産NEWS 21/12/12:サグラダ・ファミリアの「聖母マリアの塔」が完成

スペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリアで聖母マリアの塔が完成し、12月8日に落成式が行われました。

高さ138mに位置するマリアの星が点灯すると、集まった数千人の歓喜の声と拍手が響き渡りました。

 

Sagrada Família tower of the Virgin Mary inaugurated(BASÍLICA DE LA SAGRADA FAMÍLIA)

 

今回はこのニュースをお伝えします。

 

* * *

聖母マリアの塔の落成式の様子

サグラダ・ファミリアの正式名称は "Templo Expiatorio de la Sagrada Familia" で「聖家族の贖罪寺院」を意味します。

日本語ではしばしば「聖家族贖罪教会」と訳されています。

 

「聖家族」はイエスと聖母マリア、養父ヨセフの一家のことで、「贖罪」は罪を償うこと、特にアダムとイブ以来の全人類が持つ原罪をイエスが犠牲になることで贖うことを示しています。

また、ひとつの贖罪としての寄付行為によって賄われる教会を「贖罪教会」「贖罪礼拝堂」などと呼びます。

実際にサグラダ・ファミリアは入場料を含む人々の寄付によって建設や修復が進められています。

 

サグラダ・ファミリアの建設がはじまったのは1882年で、最初の建築家が辞任した後、1883年にアントニ・ガウディが起用されました。

ガウディは1から設計し直しましたが、そのあまりの巨大さから完成に300年はかかるといわれました。

実際、ガウディの存命中に完成したのは聖誕のファサード(正面)とクリプト(地下聖堂)、アプス(後陣)の一部にすぎませんでした。

 

その後、スペイン内戦や第2次世界大戦で建設は中断され、ほとんどの資料が失われてしまいました。

ガウディは設計図を描かず、紐と錘を用いて「逆さ吊り模型」で設計していましたが、その模型ももう存在しません。

現在は職人の聞き取りやわずかなデッサンを元に、2026年の完成を目指して建設が進められています。

 

ガウディの作品群は1984年に「バルセロナのグエル公園、グエル邸、カサ・ミラ」の名称で世界遺産リストに登録されましたが、このときはサグラダ・ファミリアは含まれていませんでした。

2005年にカサ・ビセンス、カサ・バトリョ、コロニア・グエル教会のクリプトとともにサグラダ・ファミリアが拡大登録されましたが、完成していた聖誕のファサードとクリプトのみが対象となりました。

これは現在も変わっていません。

世界遺産「アントニ・ガウディの作品群」、サグラダ・ファミリアの聖誕のファサード
世界遺産「アントニ・ガウディの作品群」の構成資産に含まれているサグラダ・ファミリアの聖誕のファサード

建設中のサグラダ・ファミリアは「†」形のラテン十字式の教会堂で、117×82.5mという巨大なものになる予定です。

ラテン十字の長軸はおおよそ南北、短軸は東西を指しており、頭の部分が北に置かれています(実際には少しズレています)。

この頭の部分がアプスで、数々の礼拝堂や祭壇を備えた内陣(神々あるいは聖職者のエリア。信者のエリアは外陣)となっています。

エントランスは東の聖誕のファサード、西の受難のファサード、南の栄光のファサードに設置され、南がメイン・エントランスとなります。

 

サグラダ・ファミリアの外観を特徴付けるのはなんといっても塔です。

これまで8基の塔が完成していましたが、それだけでも壮観でした。

しかし、完成時は18基が立ち並ぶ予定です。

 

その内訳ですが、3つのファサードそれぞれに4基の塔が備わります。

合計12基ですが、これはイエスの十二使徒を表します。

 

アプスの上に立つのが2番目に高いマリアの塔で、高さ138mを誇ります。

十字形の中央部、クロス部分から立ち上がるイエスの塔は高さ172.5mで、完成すると世界でもっとも高い教会堂になる予定です。

そしてイエスの塔の周囲を4福音記者に捧げられた4基の塔が取り囲む計画です。

 

下はサグラダ・ファミリアの完成予想図ですが、本当にスゴい建物です。

もっとも高い塔がイエスの塔で、頂部に立体十字架を掲げています。

一方、マリアの塔はその手前で、頂部に星が輝いています。

さて、今回のニュースです。

 

サグラダ・ファミリアではこれまで聖誕のファサードと受難のファサードが完成しており、8基の塔がそびえていました。

11月29日に9基目の塔の頂部に重さ5.5tの星が配置され、全体で2番目に高いマリアの塔が完成しました。

 

そして12月8日の無原罪の御宿りの祝日(すべての人間が持つはずの原罪を持たず、処女のままイエスを懐胎した聖母を祝う日)にマリアの塔の落成式が行われました。

数千人の見学者が見守る中、塔身を飾る約800枚の窓が輝き、マリアの星が点灯すると、辺りに歓喜の声と拍手が響き渡りました。

 

マリアの星は、ベツレヘムでイエスが生まれた際に天に輝いていたという星で、ベツレヘムの星とも呼ばれます。

クリスマス・ツリーの頂部に輝いているあの星です。

そして星は東方の三博士をベツレヘムに導き、三博士は贈り物を贈って祝福したと伝えられています。

 

実は、サグラダ・ファミリアは新型コロナウイルス感染症の影響で2020年3月に閉鎖され、建設工事も中断されました(営業はその後、再開・中断を繰り返し、現在は営業しています)。

工事は2021年1月に再開されましたが、2026年の完成は絶望的になりました。

 

日程的に厳しくなったのはもちろんですが、入場料収入と寄付が激減しているのが最大の原因で、一説ではマリアの塔の建設費しか残されていないともいわれています。

贖罪教会ということで、喜捨に頼っているがゆえの事態かもしれません。

 

そのような状況であるため工事は再開したものの工事箇所はきわめて限られており、今回は特にマリアの塔に絞って建設が進められました。

ベツレヘムの星がそうだったように、このような状況の中でこの塔と星が人々の希望となり、幸せを導くようにとの願いが込められているそうです。

 

 

[関連記事&サイト]

Sagrada Família(公式サイト)

Help make Gaudí's dream come true: the Sagrada Família(公式サイトの寄付のページ)

世界遺産NEWS 13/10/04:サグラダ・ファミリア、2026年完成へ

世界遺産NEWS 18/10/23:違法建築!? サグラダ・ファミリアにようやく建築許可

世界遺産NEWS 15/12/26:バチカン・ベツレヘムでクリスマス・ミサ開催

世界遺産NEWS 19/10/23:カタルーニャのバルセロナで大規模デモ

 


トップに戻る パソコン版で表示