アメリカの世界遺産「マンモス・ケーヴ国立公園」は世界最長を誇る洞窟系として知られています。
9月中旬、アメリカのNPS(国立公園局)はマンモス・ケーヴ国立公園で新たに13km(8マイル)の地下通路を発見したことを発表しました。
これで総延長は676km(420マイル)に延びています。
■Explorers add 8 miles to world's longest known cave system(Live Science)
今回はこのニュースをお伝えします。
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世界には数多くの洞窟が存在します。
洞窟はアリの巣のように張り巡らされていることも多く、水中に隠された穴や人が通り抜けられないような小さな穴の先に全長数kmもの空間が広がっていることも珍しくありません。
ですからベトナムの世界遺産「フォンニャ=ケバン国立公園」やマレーシアの世界遺産「グヌン・ムル国立公園」といった世界クラスの洞窟系では調査のたびに新たな洞窟や通路が発見されています。
その最たる例がアメリカの世界遺産「マンモス・ケーヴ国立公園」でしょう。
マンモス・ケーヴ国立公園は約3億年前の古生代石炭紀(約3億6,000万~3億年前)の石灰岩層が1億年にわたる侵食を受けてできあがった長大な洞窟系です。
調査のたびに総延長は延びており、1969年の時点では105kmでしたが、1972年に隣接する洞窟系とつながっていることが確認されて一気に232kmまで延びました。
1981年に世界遺産リストに搭載されていますが、推薦時点の総延長は306kmです。
これが2013年には園内458km・園外128km、計586kmに修正されています。
下は3Dレーザー・スキャンによって明らかにされたマンモス・ケーヴ国立公園の洞窟系の3Dマップです。
石灰岩層に沿って形成されているので、深さ60~90m、幅11km(7マイル)四方ほどの比較的狭い空間に木の根のように張り巡らされているのがわかります。
現地時間9月11日、NPSはFacebook上でCRF(洞窟研究財団)のチームが新たに13km(8マイル)の通路を発見したことを発表しました。
これにより総延長は676km(420マイル)に延びています。
発見には多くの困難が伴ったようで、垂直の壁を乗り越え、地底湖を泳ぎ、泥沼を超えてようやく今回の探査が完了したようです。
局員は「マンモス洞窟での発見には本当に終わりがありません!」と記しており、さらなる発見に期待を寄せています。
実はマンモス・ケーヴ国立公園の周辺には他の洞窟系が点在しており、どこかでつながっている可能性が指摘されています。
フィッシャー・リッジ洞窟系は200km以上、マーティン・リッジ洞窟系は50km以上という規模ですから、これらが一気に追加される可能性もあるわけです。
マンモス・ケーヴ国立公園は長大であるだけでなく、あらゆる洞窟タイプが存在し、固有種を含む独自の生態系でも知られています。
一例が暗闇に適応して目を失ったケーヴ・フィッシュ(洞窟魚)やケーヴ・シュリンプ(洞窟エビ)の仲間です。
また、石灰岩層の中からは古生代の化石が発見されており、これらにも非常に興味をそそられます。
マンモス・ケーヴ国立公園はこれからもぼくたちを大いにワクワクさせてくれそうです。
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