21/03/07:イタリア・ポンペイでファスト・フード店と儀式用戦車を発見 - ART+LOGIC=TRAVEL [旅を考えるweb]

世界遺産NEWS 21/03/07:イタリア・ポンペイでファスト・フード店と儀式用戦車を発見

西暦79年8月24日の噴火で火砕流や火山灰に埋もれて消えた古代都市ポンペイ。

いまだに遺跡の1/3は未発掘といわれており、発掘調査が進んでいます。

 

ポンペイ考古学公園は2020年12月下旬、「テルモポリウム」と呼ばれる古代のレストランあるいはファスト・フード店で色鮮やかなフレスコ画で彩られたフード・カウンターを発掘したことを発表しました。

 

Exceptionally well-preserved snack bar unearthed in Pompeii(The Guardian)

 

また、同園は今年2021年2月末にポンペイ遺跡の外にあるチヴィタ・ジュリアーナという遺跡でほぼ完全な形の4輪馬車を発見したことを発表しました。

同園の担当者はいずれも「比類ない発見」としています。

 

Pompeii: Archaeologists unveil ceremonial chariot discovery(BBC)

 

今回はこれらのニュースをお伝えします。

 

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イタリアの「ポンペイ、エルコラーノ及びトッレ・アヌンツィアータの考古地域群」は古代都市ポンペイとその衛星都市あるいは別荘リゾートであるヘルクラネウム(現・エルコラーノ)とオプロンティス(現・トッレ・アンヌンツィアータ)の3件を登録した世界遺産です。

 

遺跡はこの3件以外にもいくつかあるのですが、これらを管理しているのがポンペイ考古学公園です。

そして同園は2020年12月下旬、2019年に発見されたテルモポリウムで色鮮やかなフレスコ画で彩られたカウンターを発掘したことを発表しました。

 

描かれていたのはウマに乗った海の妖精ネレイドや、紐でつながれたイヌ、逆さに並べられたマガモ、ニワトリといった動物、それに店内風景や植物です。

文字も発見されており、ラテン語で「ニキアス、この恥知らずのクソ野郎!」とあったそうです。

 

カウンターに埋め込まれていた容器の中にはブタ、ヤギ、アヒル、サカナ、貝の骨片や貝殻が見つかっています。

また、部屋にあったアンフォラ(ふたつの持ち手を持つ細長い陶器)の中からはワインや、ワインに加えていたと見られるマメの成分が発見されています。

 

ポンペイには80店舗ほどのテルモポリウムがあったようですが、この店は簡単な料理を出す店で、肉や魚をサッと調理して提供していたようです。

ワインもあることから夜はワイン・バーのような使われ方をしていたのかもしれませんね。

 

また、カウンターの奥から50歳ほどと見られる人物の骨と、部屋の隅からはイヌの全身骨格も発掘されています。

これらは西暦79年8月24日の噴火で逃げ遅れて亡くなったものと見られます。

 

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ポンペイ考古学公園は今年2021年2月末にポンペイ遺跡の外700mほどにあるチヴィタ・ジュリアーナという遺跡でほぼ完全な形の4輪馬車を発見したことを発表しました。

 

チヴィタ・ジュリアーナはローマ時代のヴィッラ(別邸・別荘)の遺跡で、2017年から発掘が開始されました。

2018年には厩舎跡から3頭のウマの骨が発見されており、1頭については馬具を装備していました。

 

今回の遺物はスキャンしたデータをもとに慎重に発掘が行われ、4輪の車輪と金属部品、炭化した木材やロープといった馬車本体に加えて青銅や錫(スズ)の装飾まで、全体がほとんど損なわれることなく現れました。

馬車は戦車と見られますが、装飾から儀式用のものと考えられます。

これまでローマ時代のものとしては運搬用の馬車は出土していますが、このような装飾を持つ戦車ははじめての発見です。

 

馬車の青銅製のシートに取り付けられたメダリオン(メダル状の装飾)にはローマ神話の愛の神クピド(キューピッド)や精霊サテュロスにニュンペー(ニンフ)、男女が重なった官能的な姿などが描かれていました。

花の装飾などと合わせて結婚に関する儀式に使用されたものと見られ、花嫁を新しい家庭に迎えるための嫁入りの儀式のための戦車ではないかと考えられているようです。

 

なお、チヴィタ・ジュリアーナは世界遺産の資産には含まれていません。

 

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ポンペイの公共広場フォルムから眺めたヴェスヴィオ山
ポンペイの公共広場フォルムから眺めたヴェスヴィオ山

西暦79年といえばいまから2,000年近く前の話です。

現代とはまったく違う考えや環境の下で生活をしていたはずですが、人々はおいしいものを食べ、冗談を交わし、結婚に胸をときめかせていたようです。

 

どんな時代であっても、人の生活はそれほど変わらないものであるようです。

 

 

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