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世界遺産NEWS 20/08/22:増水で70年ぶりに長江の水位が楽山大仏の爪先に到達

増水や洪水が続いている長江流域ですが、四川省の楽山市でも増水によって水位が上昇しています。

今月中旬には世界遺産「峨眉山と楽山大仏」の楽山大仏で長江の支流である岷江(みんこう)の流れが足先にかかっているのが確認されました。

1949年以来の出来事であるとしています。

 

Flood waters reach the toes of China's famous giant Buddha statue(CNN travel)

 

今回はこのニュースをお伝えします。

 

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中国の世界遺産「峨眉山と楽山大仏」の楽山大仏
中国の世界遺産「峨眉山と楽山大仏」の楽山大仏。下部の土台の上に観光客がいるのがわかります

上の地図を調整していただけるとわかると思いますが、楽山大仏は岷江の東岸に位置しています。

西からは大渡河が流れ込み、その大渡河には北から青衣江が注いでおり、3つの河川が合流する場所となっています。

このため古代から非常に水害が多い土地として知られていました。

 

仏教僧・海通は仏の功徳によって水害を防ごうと人々から布施を募って準備を整え、713年に凌雲寺近くの凌雲山の断崖で弥勒菩薩(みろくぼさつ)の坐像を彫りはじめます。

あまりに巨大な磨崖仏(岩壁に彫られた仏像)であったことから743年に亡くなった際にもまったく未完成で、弟子たちの手によって完成したのは起工から90年を経た803年でした。

 

そのスケールは驚くべきもので、土台も含めた全高71m、像本体の高さである像高59.98m、肩幅28mで、中指の長さだけで8.3mに及びます。

近代以前に建造された仏像としては世界最大で、東大寺の大仏(盧舎那仏)の像高14.98m(中指は1.08m)、鎌倉の大仏(阿弥陀如来)の像高11.312mと比較するとその巨大さがわかります。

 

これだけのものがほとんど僧と民衆の力によって造られたというのですから願いの強さがわかります。

上の動画は8月12~18日頃のものと思われますが、楽山大仏の下の土台が水没し、川が足の爪先にかかっているのがわかります。

このレベルに増水したのは1949年以降、はじめての事態で、スタッフと警察は土嚢を積んで浸水を防ごうとしましたが設置が間に合わなかったようです。

 

複数の観測地点の水位が洪水警戒水位を5m以上も超過しており、四川省は最高度の緊急警報を発令しています。

楽山や西隣の雅安では洪水被害でこれまでに約10万人が避難しています。

 

19日には大仏周辺の水位がやや下がり、土台から2m下に移動しました。

しかしながら増水のピークは下流に移動しており、直線距離で700km下流に位置する三峡ダムは22日、洪水被害が拡大しているダムの下流域はさらに数日後にピークを迎えることになりそうです。

 

中国応急管理省によると、6月以降の増水でこれまでに6,346万人が被災しており、219人の死者・行方不明者と1,790億元(2兆7,400億円)の損害を出しているということです。

習近平国家主席は18日から安徽省に入って視察を行い、被災者や救助隊を見舞っています。

 

 

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