20/05/23:パパハナウモクアケアで世界最大の火山を発見 - ART+LOGIC=TRAVEL [旅を考えるweb]

世界遺産NEWS 20/05/23:パパハナウモクアケアで世界最大の火山を発見

5月上旬、ハワイ大学の研究チームが北西ハワイ諸島の世界遺産「パパハナウモクアケア」の資産内で世界最大の楯状火山を発見したことを発表しました。

火山はプハホヌと呼ばれるもので、これまで世界最大と考えられてきた世界遺産「ハワイ火山国立公園」のマウナ・ロアを体積で2倍も上回っているということです。

 

Earth's largest shield volcano revealed in the Hawaiian Islands(FOX NEWS)

 

今回はこのニュースをお伝えします。

 

* * *

ハワイ諸島の形成メカニズム

アメリカのハワイ諸島にはふたつの世界遺産があります。

ひとつはハワイ島のマウナ・ロアやキラウエアといった火山を登録した「ハワイ火山国立公園」。

もうひとつはハワイ島の西約250kmから北西に1,930km以上にわたって伸びる北西ハワイ諸島の「パパハナウモクアケア」です。

これらの島々はすべて同じシステムで形成されたもので、一連の島々を「ハワイ海山群」と呼びます。

 

ハワイ島のはるか地下深くにマグマが上昇するホット・スポットがあり、太平洋プレートと呼ばれる地表の巨大な岩盤に衝突してマグマ溜まりを形成しています。

マグマ溜まりから一部のマグマがプレートを突き破って上昇して噴火を起こします。

噴火したマグマが海中で冷えて岩石となり、やがて島(海洋島)が誕生します。

 

太平洋プレートはわずかずつ北西に移動しているので島は100万年ほどでホット・スポットから外れ、その代わりホット・スポットの上に新しい島が形成されます。

こうしてできた島の連なりがハワイ諸島です。

ですから北西の島ほど古い時代にできたことになるわけですが、ハワイ海山群でもっとも古い島は4,000万年ほど前までさかのぼります(実はさらに北に天皇海山群が続いており、こちらは8,500万年前ほどまでさかのぼります)。

 

この中でハワイ島はもっとも新しい島のひとつで、100万年ほど前に活動がはじまったと見られています。

すでに次の島の候補となる海底火山がハワイ島の南東沖合にできており、ロイヒと呼ばれています。

 

そのハワイ島ですが、この島には5つの火山があることが知られていますが、その中で最大規模を誇るのがマウナ・ロアで、単一の火山としては世界最大と考えられています。

 

まず83,000立方kmの体積は世界一で、富士山の1,400立方kmの53.6倍にあたります。

標高は4,169mですぐ隣にある4,205mのマウナ・ケアにさえ及びませんが、海底から測ると9,170mとエベレストさえ凌駕します。

質量においても世界一で、あまりの重さから8kmも沈降していると見られ、沈み込んだ部分を含めると山体は高さ17,170mに達するともいわれます。

さて、今回のニュースです。

 

5月上旬、ハワイ大学マノア校のSOEST(海洋地球科学技術研究科)を中心とする調査チームはハワイ語でプハホヌ(Pūhāhonu。息を飲むカメ)と呼ばれる火山が世界最大の楯状火山(シールド火山)であることを確認したと発表しました。

楯状火山は溶岩の粘性が低いため緩い傾斜を持つ円錐状の火山で、これまで世界最大の楯状火山はマウナ・ロアとされてきました。

 

パパハナウモクアケアの中央やや東に位置するプハホヌは約1,230万年前に形成された火山で、頂部がわずかに海上に顔を出しているにすぎません。

ガードナー尖礁と呼ばれるふたつの岩でできた小さな小島がそれで、高さはわずか52mです。

 

ところが2014年にソナーを用いて海中を計測したところ、きわめて広範囲にわたって楯状火山が広がっていることが確認されました。

調査チームは今回、海底調査を行って岩石を分析し、この事実を確認。

体積は約150,000立方kmとマウナ・ロアの2倍近くに及ぶ大きさであることが明らかになりました。

 

研究によると、もともとガードナー尖礁は5つの火山が集まっているハワイ島に匹敵する大きさを持つ島だったようです。

しかし、マウナ・ロアと同様に自重で海底に沈降してしまいました。

海中に露出しているのはわずか1/3で、残りの2/3は海底に沈み込んでおり、本来の高さは4,500mに達すると考えられています。

 

ハワイ諸島には他にもこのような火山が海底に眠っている可能性があり、今後もハワイ海山群で記録を塗り替える新たな火山が発見されるかもしれません。

 

* * *

世界遺産「パパハナウモクアケア」、ガードナー尖礁
世界遺産「パパハナウモクアケア」、ガードナー尖礁

今回のプハホヌは富士山の約100倍の体積を持つということですから、とんでもない大きさですね。

しかし、単独の火山ということでなければ上には上があります。

 

2013年に日本列島の沖合1,600km、海底2,000mでマウナ・ロアの数十倍という桁外れの面積を持つ超巨大火山が発見されました。

タム山塊と名付けられた1億4,500万年前の火山跡は地球どころか太陽系で最大の火山といわれましたが、2019年に複数の火山が集まったものであるとの研究結果が発表されてマウナ・ロアが世界一の火山に返り咲きました(今回また2番目に戻ってしまったわけですが)。

このタム山塊、複数の山塊が積み重なっており、それらをすべて含めると日本列島の大きさをも超えるというのですから驚きです。

 

さらに規模が大きいのが「破局噴火」と呼ばれるもので、もはや火山の噴火と呼べる規模ではなく、大地を引き裂いて火山を吹き飛ばすほどの噴火で、流出するマグマの面積は日本列島を超えるほどになってきます。

2億5,000万年前に史上最大の大量絶滅を起こしたロシアのシベリア・トラップや、チクシュルーブ隕石とともに恐竜絶滅の原因の候補に挙げられることもあるインドのデカン・トラップといった溶岩台地はそれぞれ日本列島の数倍の面積に達するとされています。

前者は世界遺産「プトラナ高原」、後者は「西ガーツ山脈」が関係しているのでぜひ調べてみてください。

 

地球はやはり想像を絶しますね。

 

 

[関連記事]

世界遺産と世界史2.大陸の形成

世界遺産NEWS 22/12/01:ハワイ島のマウナ・ロアが38年ぶりに噴火

世界遺産NEWS 18/11/27:ハワイとパラオ、サンゴ礁保護で日焼け止め規制へ

世界遺産NEWS 18/10/27:ハワイ諸島のイースト島がハリケーンで消滅

世界遺産NEWS 18/05/10:ハワイ・キラウエア火山の噴火で被害広がる

世界遺産NEWS 17/02/04:ハワイ・キラウエア火山の溶岩の滝

 


トップに戻る パソコン版で表示