今年の夏に開催される第44回世界遺産委員会で世界遺産登録の可否が決まる「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」ですが、沖縄県は西表島について2020年度以降、入島者を年間33万人以下に制限する方針を決めました。
■世界自然遺産候補地の西表島、入島制限は年33万人へ 沖縄県が方針、来年度導入目指す(琉球新報)
今回はこのニュースをお伝えします。
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今年の6月29日~7月9日に中国の福州で開催される予定の第44回世界遺産委員会。
日本からは2度目の挑戦となる「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が推薦されています。
前回は2017年に推薦され、2018年夏の登録を目指していましたが、自然遺産の調査や評価を行っているIUCN(国際自然保護連合)から登録延期を勧告されたため、2018年6月に推薦を取り下げました。
登録延期の主な理由は構成資産が小さく分断されていることでしたが、その詳細については過去記事「世界遺産NEWS 18/06/06:『奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島』推薦取り下げを決定」を参照してください。
西表島に関するところでは観光の管理やモニタリングが課題として挙げられました。
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」にとって、西表島は非常に重要な島です。
総推薦面積37,946haに対して西表島の推薦面積は18,835haと約半分を占めています。
島の面積が28,961haですから、島の約54%が世界遺産の候補地になっているわけです。
加えてIUCNレッドリストの絶滅寸前種であるイリオモテヤマネコやモノドラカンアオイ、絶滅危惧種のミナミイシガメやオオハナサキガエル、ヤエヤマハナダカトンボなど絶滅危惧種や固有種も数多く生息しています。
西表島の観光客ですが、2018年は約301,400人、過去10年で最多となった2015年は約388,000人が訪れています。
2015年の場合、1日平均1,000人を超える計算です。
ちなみに島の人口は約2,400人です。
世界遺産「屋久島」や「小笠原諸島」では世界遺産リストに登録されて観光客が1.5~2倍近くに増えたこともあり、適切な観光管理が必要であることは以前から指摘されていました。
そこで今回の決定です。
1月20日、県や自治体・環境省などは西表島で観光管理に関する住民説明会を開催して観光制限の意向を示しました。
県によると島内5か所の上水施設における供給可能な水量からピーク時の観光客数の基準値を試算したということです。
具体的には、観光客数について1日の上限が1,230人、年間の上限が33万人です。
これによりピーク時の観光客数を抑制して平準化を図り、環境への影響を抑える方針です。
ただこの数字は強制力のない目標なので、民間企業と協力態勢を整えたうえで、定期船を運行する船会社やツアーを企画する旅行会社によるアナウンスや誘導、宿泊施設や交通機関の事前予約・変動料金制度の導入などで実効性を担保したいとしています。
この計画について、1月30日には地元との会合で了承を得ました。
今後、県は観光管理計画を作成し、2020年4月にはじまる新年度からの導入を目指しています。
完成した計画書は2月中に世界遺産登録の可否について勧告を出すIUCNにも提出される予定です。
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