前回、オーストラリア南東部・ニューサウスウェールズ州の世界遺産「グレーター・ブルー・マウンテンズ地域」における火災のニュースをお伝えしました。
周辺の土地でも同様の火災は頻発していますが、隣のビクトリア州の世界遺産「ブジ・ビムの文化的景観」でも被害が出ています。
こちらでは12月下旬に発生した火災によって一部が焼失しましたが、草木が一掃された土地から古代の水路の跡が発見されています。
■An ancient aquatic system older than the pyramids has been revealed by the Australian bushfires(CNN International)
今回はこのニュースをお伝えします。
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世界遺産「ブジ・ビムの文化的景観」は4万~3万年ほど前に起こったブジ・ビム山の噴火によってできた溶岩地形で、溶岩流はフィッツロイ川の流れを変えて数多くの湖沼や湿地・支流を抱える複雑な地形を生み出しました。
先住民族であるアボリジニのグンディジマラ族は少なくとも6,600年前にこの土地で定住をはじめ、漁業を中心とする生活を行っていました。
漁では乾季と雨季の水量の変化や季節的な移動を繰り返す魚(主にウナギ)の習性を読み、水路を作って魚を追い込んだり罠を仕掛けて魚を捕まえていました。
水路の先にダムと人工湖を造って養殖を行っていた例もあり、人類最古の養殖の跡とされています。
昨年12月下旬、世界遺産登録地を含むブジ・ビム国立公園のコンダ湖の近くに雷が落ちて火災が発生し、790ha(東京ドーム161個分)を焼きました。
ビクトリア州は文化遺産を守るために航空機から周辺に難燃剤を撒き、迫った火に対しては水を撒いて消火を行いました。
また、地上のチームは周辺の木々を伐採し、陸からも放水を行いました。
こうした活動が奏功して遺産の焼失を食い止めることに成功しました。
火災で避難していた "Gunditj Mirring Traditional Owners Aboriginal Corporation" という非営利団体のメンバーが同地に戻ると、草木が焼き払われた土地に未発見の水路が姿を表していました。
全長約25mとこれまでに発見されている水路の中でもかなり大きく、火山岩を積み重ねて築かれていました。
これ以外にも何点か未知の水路が発見されており、水路やダムのシステムは考古学者たちが考えていたものよりはるかに大きかった可能性を示唆しています。
今回の火事の跡をより詳細に調査するため、今後は考古学者や先住民のレンジャーが陸と空から調査を行う予定です。
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オーストラリア南東部の火災は世界遺産「グレーター・ブルー・マウンテンズ地域」や「オーストラリアのゴンドワナ雨林」に多大な被害をもたらしています。
世界遺産「ブジ・ビムの文化的景観」でも火災が発生していますが、今回燃えた地域は下草が焼けた程度で大きな被害には至っていないようです。
ただ、いまだに火災は頻発しており、今後の被害が心配されます。
そんな中で今回の発見は不幸中の幸いといったところでしょうか。
複数の英語の記事を読みましたが、いくつかの記事ではブジ・ビムの水路をエジプトのピラミッドやイギリスのストーンヘンジよりも古い古代の土木工作物と紹介しています。
今回の水路の年代は明らかではありませんが、意外な場所に未知の巨大建造物が眠っているのかもしれません。
そんな可能性を感じさせてくれる発見です。
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