アフリカ南部を記録的な干ばつが襲っています。
国連は1,100万人が食糧危機に直面しており、今後4,500万人に拡大すると見積もっています。
川や湖の水量も急激に低下しており、ザンビアとジンバブエの世界遺産「モシ・オ・トゥニャ/ヴィクトリアの滝」はここ25年で最低の水位を記録し、滝はほとんど消滅しかけています。
また、世界遺産「マナ・プールズ国立公園、サピとチュウォールのサファリ地域」をはじめとする自然保護区でも被害が拡大しており、ボツワナとジンバブエではそれぞれ100頭以上のゾウの死亡が確認されています。
■Drought ravages southern Africa, officials say 45 million at risk of hunger(Fox News。英語)
今回はこのニュースをお伝えします。
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上の動画は10月下旬の世界遺産「モシ・オ・トゥニャ/ヴィクトリアの滝」の様子です。
すっかり干上がっていますね。
ザンベジ川の水量は大幅に低下しており、滝の流量は1986年10月に記録した観測史上最低流量に迫っています。
この辺りでは降水量が1981年以降で最低を記録しており、その影響が表れています。
ザンベジ川下流にはジンバブエの世界遺産「マナ・プールズ国立公園、サピとチュウォールのサファリ地域」がありますが、川の水量低下や湖や池の消滅でここ数週間で10頭のゾウが死亡しています。
水源がなくなった結果、泥だらけの池をさまようゾウやスイギュウが増えており、沼の中で力尽きて果てているようです。
同様の事態は各地で起きており、ボツワナのチョベ国立公園では100頭以上、ジンバブエの自然保護区を総合すると105頭以上の死亡が確認されています。
保護区は本来、生態系に関与することはないのですが、マナ・プールズ国立公園では沼にはまった動物を救助するだけでなく、大量の干し草を用意して緊急用のエサとして給餌しています。
降水量は例年に比べて半減しており、草原が消滅するなど生態系に不可避なダメージを与えている可能性があることがその理由です。
水量豊富なヴィクトリアの滝
国連はアフリカ南部9か国(アンゴラ、エスワティニ、ザンビア、ジンバブエ、ナミビア、モザンビーク、マダガスカル、マラウイ、レソト)の1,100万人について食糧の「危機」あるいは「緊急事態」に直面しているとし、この先の半年で4,500万人が「深刻な食糧不安」に陥ると見積もっています。
特に農業は大きな被害を受けており、多くの農民が援助を必要としています。
11月に雨季がはじまれば干ばつは解消されますが、干ばつの原因は気候変動にあると考えられており、来年以降も起こりうると懸念されています。
実際、2015~16年にも数十年で最悪と呼ばれる干ばつを記録していますが、地域によっては今回、それを超えています。
こうして干ばつの頻度が増し、悪化している状況に対し、ジンバブエ観光局は「気候変動と地球温暖化にすぐに対処しなければ、私たちが誇るこうした遺産は過去のものになるかもしれません」とコメントしています。
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