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世界遺産NEWS 19/10/29:エジプト・王家の谷近くで30基の棺とミイラを発見

2019年4月、世界遺産「古代都市テーベとその墓地遺跡」の構成資産のひとつである「王家の谷」近くでミイラを収めた30基の棺が発見されました。

いずれも開封された跡がなく手つかずで、この1世紀で最大の発見とも言われています。

そしてこれらの棺が10月19日、報道陣に公開されました。

 

Egypt uncovers 3,000-year-old mummies in the Valley of the Kings(NBC News。英語)

 

今回はこのニュースをお伝えします。

 

* * * 

エジプト文明では太陽が昇るナイル川の東岸を生者の町、日が沈む西岸を死者の町=ネクロポリスとする思想がありました。

このため墓や葬祭殿(葬儀を行い魂を祀る廟)といった死にまつわる建物は西岸に築かれ、一方東岸には人々が参るための神殿が建てられました。

ピラミッドもすべて西岸に築かれていることから、ピラミッド=王墓説や葬祭殿説が唱えられるようになりました。

 

紀元前1600~前1000年前後の新王国時代、王家やその関係者の遺体は首都テーベの西岸のネクロポリスに葬られました。

遺体は内臓を取り出し、特殊な防腐処理を施して棺に収められたためミイラとなりました。

こうした墓が集まっているのが王家の谷であり、王妃の谷や貴族の谷です。

世界遺産「古代都市テーベとその墓地遺跡」、ハトシェプスト女王葬祭殿
世界遺産「古代都市テーベとその墓地遺跡」、ハトシェプスト女王葬祭殿。背後の山の向こうが王家の谷

2019年4月、王家の谷とその南に位置するハトシェプスト女王葬祭殿のあいだ辺りに広がるエル・アサシフのネクロポリスで30基の木棺が発見されました。

発見した考古学チームは墓のマッピングをしており、掘り当てたのはまったくの偶然でした。

 

棺は地下1mに2列に積み上げられており、封じられたあと開封された跡がないことから未盗掘の手つかずと見られます。

装飾の塗装やレリーフ、ヒエログリフ(古代エジプト神聖文字)は色鮮やかでハッキリしており、状態はきわめて良好です。

棺の中には成人男性23体、成人女性5体、子供2体のミイラが収められていました。

 

時代的には新王国末期~第3中間期の第22王朝(紀元前945~前715年)のものと考えられています。

一部は神官の家族と見られ、王家の谷に隣接していることから非常に高い身分を与えられていたようです。

 

このところ外国人考古学者による発見が続いていましたが、今回の発見はエジプト人チームによるものです。

エジプト考古最高評議会のムスタファ・ワジリ事務局長は「エジプトにおいてこの1世紀で最大の発見」と語っています。

 

周辺では陶器の窯跡なども発見されており、今後さらなる発見が期待できそうです。

これらの棺とミイラは首都カイロに輸送され、2020年末にギザのピラミッド近くにオープンする大エジプト博物館で公開される予定です。

 

 

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