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世界遺産NEWS 19/01/17:ガラパゴス諸島サンチャゴ島にリクイグアナを再導入

DPNG(ガラパゴス国立公園局)と国際NGOである島の保護局は、1月4日にガラパゴス諸島の主島のひとつであるサンチャゴ島(サン・サルバドル島)に1,436匹のガラパゴスリクイグアナを放ったと発表しました。

ガラパゴスリクイグアナは1838年以降目撃例がなく、同島では絶滅したと考えられていました(下のガーディアンの記事では最後の目撃が1835年となっていますが、別の記事によると1838年に目撃例があるようです)。

 

Galápagos island gets its first iguanas since Darwin after mass-release(The Guardian。英語)

 

今回はこのニュースをお伝えします。

 

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ガラパゴス諸島はもっとも近い大陸(南アメリカ大陸)から約1,000kmも離れた諸島で、一度も大陸とつながったことがありません。

火山活動によって生まれた島々で、いまも激しい活動が行われている一方で、活動が収まった島はしだいに沈降して海の中へと消えつつあります。

 

イギリス人のチャールズ・ダーウィンが測量船ビーグル号に乗ってこれらの島を訪れ、1835年9~10月の約1か月滞在し、環境に適応して種が分化していくという自然選択説(自然淘汰説)を着想したことで知られています。

 

世界遺産としての「ガラパゴス諸島」は19の島と127の岩礁からなっています。

主な構成資産は以下を参照ください。

ダーウィンは4つの島に上陸したと伝えられていますが、そのうちのひとつがサンチャゴ島です。

彼はサン・サルバドル島とも呼ばれこの島で、のちにガラパゴスリクイグアナと呼ばれることになるイグアナを見たことを日誌に書いています。

 

ガラパゴス諸島には何種類かのイグアナがいますが、特に有名なのがウミイグアナとガラパゴスリクイグアナです。

 

ウミイグアナは海岸で生活を行うイグアナで、主に海藻を食べています。

鋭い爪を使って磯場にへばりつき、細長く平たい尾を使って海を泳ぎ、塩を排出するための腺を備え、冷えた身体を温めるために黒っぽい色をしています。

これに対してガラパゴスリクイグアナは内陸部で暮らしており、主食はウチワサボテンです。

走りやすいように爪は短く、尾は短く丸く、固いサボテンをかみ砕くために歯は大きく、木々に紛れるように身体は茶色くなっています。

 

このように見た目から異なる両種ですが、もともとは同種だったと考えられています。

ガラパゴス諸島において動植物の種は著しく偏っていますが、このように同じ種の中で多様な展開が見られます。

これが、ダーウィンが自然選択説にたどり着いた大きな理由です。

 

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ガラパゴスリクイグアナ。IUCN(国際自然保護連合)レッドリスト危急種
ガラパゴスリクイグアナ。IUCN(国際自然保護連合)レッドリスト危急種
ウミイグアナ。同危急種
ウミイグアナ。同危急種

ダーウィンが去ったのちの1838年、フランス人航海士がサンチャゴ島でガラパゴスリクイグアナを見ているようですが、これを最後に目撃例は途絶えてしまいました。

島では西洋人が持ち込んだブタやヤギ、ロバ、イヌ、ネコ、あるいは船に巣くっていたネズミなどが繁殖し、ガラパゴスリクイグアナの卵が捕食されたり、サボテンの花や実を食べられた結果、絶滅に追い込まれてしまったようです。

 

2000年前後からDPNGと保護局はこうした外来種の駆除に乗り出し、諸島全体でおよそ20,000頭のブタと55,000頭のヤギを駆逐しました。

サンチャゴ島からは2000年にブタ、2005年にヤギが駆除されています。

 

そして今年1月4日、生態修復プログラムの一環として、1,436匹のガラパゴスリクイグアナが放たれました。

これらのガラパゴスリクイグアナはもともとサンチャゴ島の東30kmほどに浮かぶセイモア・ノルテ島に生息していたものです。

同島では1930年代に再導入されていますが、約5,000匹にまで増えて過剰ではないかと心配されていました。

 

2018年後半にセイモア・ノルテ島で再導入のための捕獲がはじまり、近郊のサンタ・クルス島で検疫を受け、3~4週間にわたって管理されたエサを与えつづけました。

これによりセイモア・ノルテ島の種子がサンチャゴ島に移動するといった影響を極力廃することができるということです。

 

再導入されたガラパゴスリクイグアナは種子を食べることで植物を適度に拡散し、また過剰な植物を減らすことで植物相の最適化をもたらすと期待されています。

2月にはDPNGとニュージーランドのマッセイ大学によってモニタリングが開始される予定です。

 

* * *

サンチャゴ島に再導入されたガラパゴスリクイグアナが無事定着するか、気になりますね。

もうひとつ、気になることがあります。

 

昨年12月頃から赤道付近の太平洋の海水温が上がるエルニーニョ現象が観察されていますが、場合によっては4月以降まで続く可能性があると見られています。

上の動画で赤道付近、西(左)側に赤い温水域、右(東)側に青い冷水域が示されていますが、ガラパゴス諸島は冷水域に属しています(熱帯にもかかわらずペンギンがいる理由です)。

しかしながらエルニーニョ現象が起こると数日で水温が数度も上がり、温水域に含まれてしまいます。

 

このようにエルニーニョ現象や逆に海水温が下がるラニーニャ現象の影響をダイレクトに受ける土地で、1982~83年のエルニーニョ現象では多くのイグアナやアシカ、ペンギンが死に、7割を超える減少を記録した種もあったりします。

心配は尽きません。

 

 

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