エジプトの世界遺産「古代都市テーベとその墓地遺跡」に登録されているナイル川西岸のネクロポリス(死者の町)で発見が相次いでいます。
12月上旬には役人のものと見られる2基の墓に約3,500年ぶりに人が入り、ほぼ完璧なミイラと、ここ100年で最高と言われる壁画が発見されています。
■3,500-Year-Old Tombs Uncovered in Egypt. One Has a Mummy(NATIONAL GEOGRAPHIC)
今回はこのニュースをお伝えします。
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この2017年、エジプトは「発見の1年」であったようです。
3月、首都カイロ近郊に広がる古代都市ヘリオポリスの太陽神殿付近で全長8~9mの巨大な石像が発見されました。
太陽神殿がラムセス2世の建設であることから当初はラムセス2世の像と思われていましたが、その後、胸部に彫られたヒエログリフなどから第26王朝のファラオ、プサメティコス1世の像で、紀元前600年代のものと推測されています。
8月にはカイロ郊外で3つの墓地遺跡が発見されました。
第27王朝の紀元前6世紀からプトレマイオス朝を経てローマ時代に至る紀元前1世紀まで、長きにわたって使われていた共同墓地と見られ、老若男女を問わずさまざまな遺体が葬られているようです。
すでに発見されていた20の墓地とあわせて発掘中で、さらなる墓の発見も期待されています。
一方、カイロの南約500kmに位置するルクソールの世界遺産「古代都市テーベとその墓地遺跡」ではナイル川西岸のネクロポリスで新たな墓の発掘が進んでいます。
4月には役人のもの、夏には金細工職人のものと見られる墓が発掘され、数多くの棺や副葬品が発見されました。
墓の建設は第18王朝期(紀元前16~前13世紀)のものと見られますが、第22王朝(紀元前10~前8世紀)と見られる棺も出土しています。
長期にわたって使用された貴族の墓なのかもしれません。
そしてこの12月上旬にはさらにふたつの墓が発掘され、ミイラや壁画・副葬品の数々が発見されました(上の動画です)。
墓は地下7m、10mに位置する2基で、なんらかの墓があることは1990年代に明らかになっていました。
今回ようやくの発掘となったわけですが、その結果ミイラや仮面、40の葬送用コーン、36の副葬像ウシャブティ、36の家具等々が出土しています。
保存状態は良好で、ミイラは欠損のないほぼ完璧なもので、壁画の色彩も明瞭でここ100年で発見されたものの中では最高レベルということです。
第18王朝期の建設と見られており、春・夏に発見された役人や金細工職人の墓との関連性が指摘されています。
貴族や王族の墓はカイロでもルクソールでも日の沈む方角であるナイル川西岸に築かれているのですが、これらの墓はそうした支配層の墓地だったと考えられています。
チームは今後さらに別の墓の発掘も予定しており、新たな発見が期待されています。
ただ、現在エジプトはイスラム原理主義組織によるテロ活動や政情不安から観光客が激減しており、予算確保が難しい状況にあるようです。
2010年頃から計画されていたギザの大エジプト博物館がようやく来年オープンを迎える予定ですが、イスラエルを巡る情勢も不安定で種々の懸念を呼んでいます。
大エジプト博物館では上に記したプサメティコス1世の巨像も展示される予定だそうです。
ぜひ、見学したいものですね。
来年はインドとエジプトを訪ねたいと考えているのですが、情勢が回復することを祈ります。
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