12月中旬、ICOMOS(イコモス=国際記念物遺跡会議)の年次総会において、九州大学の河野俊行教授が日本人としてはじめてICOMOSの会長職に就任しました。
ICOMOSはUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)の世界遺産活動にも大きな影響を持つNGOですから、今後の活躍が大いに期待されます。
今回はこのニュースをお伝えします。
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ICOMOSは文化遺産の保護・保全を目的に1965年に設立された国際NGOで、世界遺産においてはUNESCOの諮問機関として文化遺産の調査や評価・状況監視・援助要請対応などを行っています。
たとえば登録プロセスについてですが、各国が推薦した文化遺産候補地に対して現地調査を含む調査を行い、ICOMOSが作成・提出した評価報告書をもとに世界遺産委員会が世界遺産リストへの登載の可否を決定します。
世界遺産委員会は各国の代表で構成されていて文化遺産の専門家というわけではありませんから、ICOMOSが唯一、プロの目から見た評価を行うことになります。
ですから世界遺産のクオリティの維持や方向性の決定に大きな役割を果たしているということができるでしょう。
現在、ICOMOS参加国は153か国に及び、会員は10,000人を超えています。
12月11~15日にインドのニューデリーで第19回国際ICOMOS年次総会が開催されていましたが、これまで副会長だった九州大の河野俊行教授が会長に就任しました。
任期は3年となります。
同職への就任は日本人で初となります。
河野教授は京都大の出身で、国際法を専門としています。
1986年に九州大法学部助教授となり、1997年から同大大学院法学研究院の教授を務めています。
2011年にICOMOS執行委員に選出されると2014年に副会長に就任し、今回の会長就任となりました。
報道資料にある河野教授のコメントを抜粋しましょう。
■河野教授のコメント
このほど8人目のイコモス会長に選出されました。会員の皆様、日本イコモスの先生方、国際イコモス前執行部の同僚達からいただいた信頼に心から感謝しています。現在世界のヘリテージ保全をめぐる状況は大変厳しいものがありますが、イコモスの奮闘なくして各国のヘリテージ保全も世界遺産も存続しえません。及ばずながら全力を尽くして信頼に応えたいと思います。
■日本イコモス国内委員会のコメント
河野先生の副会長としての献身的努力が多くの国の方々に認められた成果だと思います。同時に、長年にわたる日本のこの分野での貢献も認められたのではないかと感謝しています。日本初、アジアで二人目の会長を支えるべく、日本イコモス国内委員会としても万全のサポート体制で、今後の活動を行っていきたいと考えています。(西村幸夫委員長)
「世界の記憶」などを巡って現在日本とUNESCOの遺産事業は必ずしもよい関係を保ててはおりません。
分担金の留保といった外的な圧力もひとつの方法ですが、元UNESCO事務局長・松浦晃一郎氏が行ったような内部からの変革こそ長期的に国際社会に影響を与えつづける手段であり、結果的に日本の国益にもっとも合致する方策であると思います。
ご活躍をお祈りいたします。