17/11/05:クフ王のピラミッド内部に巨大空間を発見! - ART+LOGIC=TRAVEL [旅を考えるweb]

世界遺産NEWS 17/11/05:クフ王のピラミッド内部に巨大空間を発見!

日本やエジプトをはじめとする「スキャン・ピラミッド計画」の国際チームは11月2日、イギリスの科学雑誌『ネイチャー』電子版にてエジプトのピラミッドで最大を誇るクフ王のピラミッドの内部に巨大な空間を発見したことを発表しました。

 

約2年前に「世界遺産NEWS 15/11/15:ピラミッド&王家の谷で未知の空間発見!?」という記事を書いたのですが、この続報になります。

今回はこのニュースをお伝えします。

 

* * * 

2015年、エジプトの世界遺産「メンフィスとその墓地遺跡-ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」の構成資産であるギザのピラミッドを調査するためにエジプト、フランス、カナダ、日本にまたがる国際学術チームが組織され、「スキャン・ピラミッド計画 "Scan Pyramids Mission"」がスタートしました。

上はそのプロモーション動画です。

 

この計画はピラミッドの謎を明らかにするためにミューオンによるピラミッド透視や赤外線モニタリング、ドローンによる空中からの地表スキャンなどを行う計画で、日本からは名古屋大学の森島邦博特任助教や高エネルギー加速器研究機構の高崎史彦理学博士らのチームが参加しました。

2015年10月にデータの採取が開始され、2017年に入ってその分析結果が明らかにされつつあるのですが、11月2日には科学雑誌『ネイチャー』電子版上で計画の中核となるミューオンによるピラミッド透視の結果が発表されました。

 

「ミューオン」は宇宙から降り注ぐ素粒子のひとつなのですが、レントゲンで使用されるX線よりも透過力があるため、これを観察することで厚い物体の内部を透かし見ることができます。

名大と高エネルギー研が宇宙線ミューオンラジオグラフィ、フランスの宇宙基礎科学研究所がミューオン・テレスコープと呼ばれる技術を用いて観測を行った結果、クフ王のピラミッド内部で巨大な空間が確認されたということです。

これまでクフ王のピラミッドでは大回廊・上昇通路・下降通路・水平通路・盗掘路・脱出口といった通路や、王の間・女王の間・重量軽減の間・控えの間・地下の間といった部屋が発見されています。

現在確認されているピラミッドの内部空間についてはNHKスペシャル「シリーズ古代遺跡透視:大ピラミッド 発見!謎の巨大空間」のギャラリーをご覧ください。

 

360度パノラマギャラリー(NHKスペシャル「シリーズ古代遺跡透視」公式サイトより)

 

こうした空間の中で最大を誇るのが高さ8.5m・全長47mの大回廊なのですが、今回発見された空間は大回廊の真上、地上50~70mに位置し、高さ1~3m・幅1~2m・長さ30m超の細長い空間で、容積は200人乗りのジェット機に相当し、大回廊に次ぐ規模と見られています。

 

空間の正確な形や内部の様子はわかっていませんが、クフ王の玄室(棺を収める部屋)である可能性もあるということです。

 

クフ王の玄室についてですが、ピラミッドは長らく「ファラオ(王)の墓」とされてきたのですが、ギザの三大ピラミッドであるクフ王、カフラー王、メンカウラー王のピラミッドでは玄室も棺も発見されていません。

クフ王のピラミッドの王の間には石棺が置かれてはいるのですが、「王の間」や「石棺」といった名前は適当に付けられたもので、周囲には装飾もミイラもありません。

たとえばルクソール(古代都市テーベ)の王家の谷にあるファラオの墓はつねに豪華な装飾や副葬品とともにありますし、そもそも墓はすべて地下に造られていて地上に建設された例がないことから、ピラミッド内部にある空間は玄室ではないと考えるのが一般的になっています。

 

ただ、エジプト最古のピラミッドといわれるジェゼル王の階段ピラミッドの地下で玄室が発見されていることなどからピラミッド=王墓説が完全に否定されたわけではありません。

こうした事情もあり、クフ王の墓や玄室の発見はピラミッドの建設目的や建設方法といった謎解明に大きな影響を与えることから注目を集めているわけです。

 

* * *

ギザの三大ピラミッド。左からメンカウラー王、カフラー王、クフ王のピラミッド
ギザの三大ピラミッド。左からメンカウラー王、カフラー王、クフ王のピラミッド

 

クフ王のピラミッドに未知の空間があることは古代から言われ続けてきました。

 

紀元前5世紀に古代ギリシアのヘロドトスは著書『歴史』の中でピラミッドには墓室があると書いていますし、9世紀頃に編纂された『アラビアンナイト(千夜一夜物語)』でも内部に多くの空間があることが記されています。

また、ピラミッドの入口や大回廊などの空間がすべて中心から東にずれていることから、西側に左右対称の空間が存在するのではないかと言う学者もいます。

 

これまでも小規模な空間が発見されたことはありますが、岩を破壊して確認してみると緩衝材となる砂が詰まっているだけだったりと、大きな発見には至っていません。

でも今回は名大、高エネルギー研、フランス宇宙基礎科学研究所がそれぞれ別の場所でミューオンを測定して確認しているようですし、空間の大きさも並大抵のものではないということで、かなり期待できそうです。

 

本当に、ワクワクしますね。

 

 

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