16/08/25:ミャンマー・バガンのパゴダが地震で損壊 - ART+LOGIC=TRAVEL [旅を考えるweb]

世界遺産NEWS 16/08/25:ミャンマー・バガンのパゴダが地震で損壊

日本時間8月24日午後19時半前後(現地時間17時前後)、マグニチュード6.8の地震がミャンマー中部を襲いました。

 

震源はチャウという街の地下で、深さは84km。

地震はタイのバンコクやインドのコルカタ(カルカッタ)などでも観測されており、これまでに近郊の街マグウェなどで4人の死亡が確認されています。

 

ミャンマー在留の日本人の多くはチャウから450km離れたヤンゴンに住んでいますが、そのひとりであるぼくの友人によると、揺れは感じたけれども日本では話題にならない程度ということでした。

 

ミャンマー政府によると、チャウの北約30kmに位置するバガンでは200近いのパゴダ(仏塔)が損壊し、一部は深刻なダメージを受けているとのことです。

パガンはいずれも世界遺産であるカンボジアのアンコール、インドネシアのボロブドゥールと並んで「世界三大仏教遺跡」に数えられています。

ぼくも訪ねたことがありますが、3,000以上に及ぶパゴダが大地から突き出す様は実に神々しく、アンコールやボロブドゥールに少しも劣るものではありませんでした。

 

ミャンマー政府は以前から世界遺産登録を目指しており、世界遺産暫定リストには "Bagan Archaeological Area and Monuments"(バガンの考古地域と遺跡群)の名前で記載されています。

1997年の第21回世界遺産委員会に推薦されましたが、保護体制や登録範囲の設定が不十分であることなどから登録には至りませんでした。

 

しかしながら世界遺産委員会は顕著な普遍的価値を有すること認め、ミャンマー政府に状況を改善して早急に再推薦するよう要求しています。

実はバガンの世界遺産登録はここ数年で急速に進展しています。

 

1997年に登録が却下された最大の原因は、軍事政権によるゴルフ場や展望台など周辺地域の無計画な開発や、パゴダの勝手気ままな修復だと言われています。

しかしミャンマーでは2010年代に民主化・自由化が進んで観光業が主要産業のひとつに成長し、政府はバガンの保護・保全体制の見直しに着手しはじめました。

 

2012年にUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)のイリーナ・ ボコバ事務局長がバガンを訪問。

2014年にはUNESCOの国際協議会がバガンで開催され、世界遺産登録の推進と専門家の派遣に対して協力を表明しました。

そして同年にはミャンマー初となる世界遺産「ピュー古代都市群」が誕生しています。

 

バガンでは文化遺産の保護・保全に関する啓蒙活動や、ガイドや修復の専門家の育成計画などが立案・実行されており、長年問題となっている歴史地区における違法なホテルやゲストハウスの建設・操業に対しても対策を強化しつつあるようです。

 

そしてこの8月2日、UNESCOのミャンマー支部はバガンを世界遺産リストに再推薦する意思を表明しました。

 

可能であれば2017年9月に暫定推薦書を世界遺産センターに提出し、アドバイスを得たのちに正式な推薦書を2018年はじめに提出。

そして2019年の第43回世界遺産委員会で世界遺産リストへの登録を実現したいということです。

 

そんなときに今回の地震です。

第一に人的被害が心配ですが、世界遺産登録活動への影響も懸念されるところです。

UNESCOもミャンマーの支援を表明し、専門家を派遣して被害の調査を行っているようです。

 

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なお、同日午前10時半頃(現地時間午前3時半頃)、イタリア中部で起こったマグニチュード6.2の地震では240人以上の死者と350人以上の負傷者を出しています。

震源に近い古都アマトリーチェは壊滅的な被害を受け、市街地の75%が破壊されたと見られています。

いまも多くの被害者ががれきの下に埋もれており、200回以上に及ぶ余震の中で決死の救出活動が続けられています。 

イタリア中部の地震で思い出されるのは1997年、2009年の大地震で大きな被害を受けたアッシジです。

今回震源にもっとも近い世界遺産がアマトリーチェの北東75kmに位置する「アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂と関連遺跡群」なのですが、いまのところ聖堂への被害は確認されていないようです。

 

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ミャンマーでもイタリアでも、被害がなるべく小さいことを祈ります。

 

 

[関連サイト]

未来の世界遺産2 バガン(All About 世界遺産)

世界遺産NEWS 18/05/20:2019年の世界遺産候補地(「バガン」を含む)

 


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