2001年2月26日、アフガニスタンのイスラム教原理主義組織タリバンは、イスラム教の偶像崇拝禁止の教えに反しているとしてバーミヤン渓谷の磨崖仏(まがいぶつ。岩壁に収められた仏像)の破壊を宣言しました。
これに対して国連総会は全会一致で中止決議を採択しましたが、3月12日に2体の石仏が爆破され、その様子はインターネットで配信されました。
下がその映像です。
破壊されたのは高さ55mを誇る西大仏と、高さ38mの東大仏の2体です。
いずれも6世紀の作品で、当時この辺りは仏教の都として大いに栄えていました。
三蔵法師(玄奘)もここを訪れ、著書『大唐西域記』で繁栄の様子を伝えています。
2003年に一帯は「バーミヤン渓谷の文化的景観と考古遺跡群」として世界遺産リストに登録され、登録と同時に危機遺産リストに掲載されました。
しかしながらいま現在でも破壊された石仏は修復されておらず、引き続き対応が検討されています。
そして6月7日と8日、その西大仏の壁龕(へきがん。仏像を入れる窪み)に石仏の姿が復活しました。
プロジェクション・マッピングを手掛けたのは、中国のドキュメンタリー映像作家、ジャンソン・ユー氏とリヤン・フー氏。
25台のプロジェクターを使って画像をつなぎ合わせることで、3Dの石仏が高さ55mのフルスケールで映し出され、玄奘が「黄金の仏像が輝いていた」と書いた通りの輝きが再現されました。
これはすごい!
ぼくも巨大な大仏は奈良とか京都とか龍門とか楽山とか莫高窟とかラサなんかで見ましたが、こんなに巨大で金ピカなものは見たことありません。
簡単に旅行に行ける場所ではありませんが、ぜひ見てみたいですね。
当日は宣伝もしていなかったようですが、周辺住民150人が噂を聞きつけて集まったようです。
住民の方々はイスラム教徒なのでしょうけれど、自国の誇りと認識してもらえるとよいですね。
この話とは別に、スイス連邦工科大学では3D技術を駆使した石仏の再現が進められており、西大仏の1/10スケールでの再現を目指しているそうです。
すでに3D画像は完成しており、現在ポリウレタンなどを用いて制作中ということです。
来年春にもカブール博物館で展示されるようです。
3D映像や1/10モデルもよいのですが、いまも瓦礫になっているオリジナル、なんとか上手に修復できないものでしょうか。
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