世界遺産の中には観光客が立ち入ることが許されていない物件なんてものが存在します。
たとえば世界遺産「スルツエイ(アイスランド)」は1963年の噴火でできた島で、人の出入りを禁止して動植物がどのように定着・繁殖するか注意深く観察が続けられています。
「トゥン・ヤイ-ファイ・カ・ケン野生生物保護区群(タイ)」は東南アジアのほとんどの森林タイプが集合しているという自然遺産で、世界遺産登録翌年には観光客の立ち入りを禁止して保護しています。
文化遺産では、実は洞窟壁画で知られる多くの世界遺産が入場を禁止、あるいは制限しています。
その理由は、洞窟壁画が外気に触れることで著しく劣化してしまうため。
特に人の呼気は温度・湿度・酸素などさまざまな形で害をなすそうです。
中国の世界遺産「清の始皇陵」で知られる兵馬俑の一部は極彩色で彩られていましたが、土の中から出すや否や色あせてしまったそうです。
そのためいまでも一部は発掘せずにそのまま埋められているとか。
日本でもキトラ古墳の壁画ははぎ取られて保存されていますし、高松塚古墳の壁画をどう残すか長年議論されています。
世界遺産でいえば世界史の教科書に出てくるスペインのアルタミラ洞窟①やフランスのラスコー洞窟②も観光客立入禁止です。
その代わり、いずれも近くに洞窟をそっくりそのまま再現したレプリカがあって、観光客に開放されています。
※①世界遺産「アルタミラ洞窟と北スペインの旧石器時代の洞窟画」
②世界遺産「ヴェゼール渓谷の先史遺跡群と装飾洞窟群」
そしてこのほど世界最古の洞窟壁画で知られるショーヴェ洞窟③のレプリカがオリジナルの洞窟付近に完成し、4月25日より一般公開されるということです。
※③世界遺産「ショーヴェ=ポン・ダルク洞窟として知られるアルデシュ県ポン・ダルクの装飾洞窟」
ショーヴェ洞窟は古いもので3万6千年以上前に遡ると見られる動物壁画や手形で知られており、現在ヨーロッパでは見られないサイやライオンなどの姿も見ることができます。
約2万3千年前に落盤によって入口が完全にふさがれて密封されたため、1994年に発見された際には驚くほど鮮やかに保存されていたということです。
ただ、発見以降急速に劣化したためフランス政府は一般に公開していませんでした。
この人口洞窟を再現したのはグラフィック・アーティストのジル・トセロ(Gilles Tosello)氏。
その仕事は下の動画で確認してください。
英語でもなんとなくわかると思いますし、後半にレプリカ洞窟の全貌についても紹介されています。
いやー、行ってみたい!
私は絵画鑑賞が好きなのですが、古代壁画にもとても惹かれるのですよね。
アルタミラやラスコー、ショーヴェ、いつか訪ねるつもりです。
それから立ち入りができない世界遺産については私の下記の外部記事でも紹介しています。
よろしければご参照ください。
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