「世界の七不思議」の起源は、紀元前2世紀の古代ギリシアの旅人フィロンが記した「世界の七大景観」に遡ります。
これが英語で "Seven Wonders"、さらに日本語で「七不思議」と訳されることになりました。
日本語で「世界の七不思議」というと「謎を秘めたミステリアスな遺跡」というようなニュアンスを感じますが、もともとはそういう意味ではありません。
"wonder" は「驚くべきもの」「すばらしいもの」といった意味なので、まぁざっくりと「本当にスゲー場所」といったイメージでしょうか。
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そのフィロンの七不思議を紹介しましょう。
なお、フィロンは下記の「ファロスの灯台」ではなく、「バビロンの城壁」を入れていたようですが、バビロンの建物がふたつ重なったことからのちの時代に入れ替えられたようです。
世界遺産については[ ]内に世界遺産名を表記しました。
○フィロンの七不思議
残念ながら、上の七不思議はギザのピラミッド以外は失われてしまって見ることができません。
おもしろいので簡単に紹介しておきましょう。
「バビロンの空中庭園」のバビロンは紀元前600年頃に造られた新バビロニアの首都。ある建物の屋上、高さ25mほどの場所に巨大な庭園があり、浮遊しているように見えたことからこの名がつきました。その後首都はアケメネス朝に滅ぼされ、完全に破壊されてしまいました。都市の遺跡はイラクの世界遺産「バビロン」に登録されていますが、空中庭園の跡はハッキリしていません。
「エフェソスのアルテミス神殿」は焼失などのため紀元前8世紀・紀元前6世紀・紀元前4世紀と三度建設された神殿で、特に紀元前323年建立の神殿は125×72mで、高さ20m近い円柱127本を使用したといわれます。これが本当ならアテネのパルテノン神殿の約2倍という信じがたい規模になります。残念ながら地震やゴート人の侵略、後世の建物に転用されるなどしてほとんど残っていませんが、遺跡は世界遺産「エフェソス」の構成資産となっています。
「オリンピアのゼウス像」は紀元前5世紀頃、ギリシアの聖地オリンピアに立てられた高さ12mの最高神ゼウスの黄金像で、象牙に覆われていて光り輝いていたといわれます。焼失、あるいはビザンツ帝国(東ローマ帝国)によってコンスタンチノープル(現在のイスタンブール)に運ばれたといわれますが、行方は謎に包まれています。
「ハリカルナッソスのマウソロス霊廟」は紀元前4世紀頃に建立されたカリア王マウソロスとその妻アルテミシアの廟で、高さ34mに及ぶ白大理石の美しいギリシア建築だったようです。地震等で部分的に崩れはしたものの15世紀頃まで立っていたようですが、聖ヨハネ騎士団が城の資材として解体してしまいました。トルコのボドルムにその遺跡が残っています。
「ロードス島の巨像」は紀元前3世紀頃、ギリシアのロードス島に作られた高さ30m、台座を入れると50mにもなる太陽神ヘリオスの像です。一説では、港の入口をまたぐように足を開いて立っており、その下を船が往き来し、敵の船を攻撃することもできたとか。しかし、50年少々で地震によって倒壊し、残骸もイスラム商人に売り払われてしまったようです。その後も長い間足首以下は残っていたといわれますが、いつの間にか消えてしまいました。
「ファロスの灯台」はエジプトのアレクサンドリア沖に浮かぶファロス島に、紀元前3世紀頃立てられた高さ120~130mの巨大な灯台です。その光は50km先の船からも確認できたといわれますが、796年の地震で倒壊してしまいました。20世紀末に島の沖で発見された残骸が灯台の一部ではないかと考えられています。
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さて。
中世になると以下のような七不思議がよく挙げられます。
このうち5件は世界遺産ですね。
○中世の七不思議
世界遺産ではない2件、「アレクサンドリアのカタコンベ」はローマ帝国のキリスト教徒迫害に対して築いた地下墓地・礼拝所で、「南京の大報恩寺陶塔」は陶器で造られた高さ80mの仏塔で現存しません。
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続いて現代の七不思議です。
いろんな組織や個人、雑誌や単行本・Webサイトが現在の七不思議を発表していますが、まずは科学雑誌ニュートンのものを紹介しましょう。
こちらは1997年の『Newton別冊 新・世界の七不思議-最新考古学があかす古代ミステリー』と『古代遺跡の七不思議 -Newtonが選ぶ新・世界の七不思議』に掲載されたもので、歴史の専門家による選出です。
このふたつの七不思議はいまだ未解明の謎が残るミステリアスな遺跡を選んでいるのが特徴です。
ニュートンの選考だけにディープでおもしろいです!
ちなみに、ニュートンとナショナル・ジオグラフィック日本語版は創刊号から買っていました。
ニュートンの創刊号はまだ実家にとっておいてあります。
大好きでした。
○Newton別冊 新・世界の七不思議-最新考古学があかす古代ミステリー
※1997年、専門家による選考
※世界遺産に登録されているものは[ ]内に表記
いいですねー。
ピラミッドでぼくが言いたいのは、ギザのピラミッドもいいけれど、ダハシュールやサッカーラも最高だ!ということ。
サッカーラは階段ピラミッドやウナス王のピラミッド、ダハシュールは屈折ピラミッドや赤のピラミッドなんかがあって、広大な砂漠の中にピラミッドがポツリポツリと立っています。
その景色はギザの迫力にも劣らないものだと思うのですよね。
パルミラも最高に美しい遺跡なので「最も美しい」という表現がうれしいですね。
エル・ミラドール、近くまで行ったのですが結局断念したのが悔しいです。
○古代遺跡の七不思議 -Newtonが選ぶ新・世界の七不思議
※2013年、専門家による選考
※世界遺産に登録されているものは[ ]内に表記
こちらはかなりオーソドックスな選出です。
オーソドックスですが『Newton』だからこそのディープな記事がたまりません。
続いてテレビ東京が2007~2013年まで毎年選んできた「21世紀の世界七不思議」です。
2013年1月4日に放送された「古代ミステリー たけしの新・世界七不思議」で七不思議が出そろいました。
七不思議はすべて世界遺産、ノミネートもほとんどが世界遺産ですね。
アヤソフィアって結構いろいろなところに顔を出していますが、人気あるのですよね。
私はテーベが好きで、特にカルナック神殿、ルクソール神殿、ハトシェプスト葬祭殿なんかは感銘を受けました。
なお、[ ]内が世界遺産名です。
○古代ミステリー たけしの新・世界七不思議
※2007~2013年、TV内選考
○21世紀の世界七不思議
○ノミネート
世界遺産ではありませんが、注目したいのがインドのアダラジ・ヴァヴ。
インドにはたくさんの階段井戸があり、伝統的なデザインと近未来的でミニマルなデザインが融合したとても不思議な形をしています。
その頂点がアダラジ・ヴァヴとチャンド・バオリです。
Google画像検索結果はこちら→アダラジ・ヴァヴ、チャンド・バオリ
「現在の七不思議を決めよう!」
New 7 Wonders Foundationという組織が世界中に呼び掛け、インターネットや電話による投票を集計して2007年に「新・世界の七不思議」、2012年には「新・世界七不思議 自然版」を発表しました。
これも紹介しておきましょう。
「新・世界の七不思議」「新・世界七不思議 自然版」の各7件・計14件はすべて世界遺産です(ただし、世界遺産の一部だったり、一部が世界遺産だったりすることがあります)。
最終候補に残った物件も多くが世界遺産です。
なお、世界遺産名は[ ]内に示しました。
○新・世界の七不思議
※2007年、New 7 Wonders Foundationによるネット集計
※世界遺産名は[ ]内に明記。ないものは世界遺産ではない
※元記事
○七不思議
○最終ノミネート
■新・世界七不思議 自然版
○自然版七不思議
○最終ノミネート
新・世界の七不思議ですが、組織票だとか金銭的なやりとりがあったのではないかとか、ノミネートや立候補の仕方・投票法に問題があるのではないかとかいろいろありました。
裏事情はわかりませんが、投票という時点で組織票は避けられないものかもしれませんね。
他にも "New7Wonders Cities"なども行っているようですので、興味がある方は公式サイトを見てみてください。
[関連サイト]
N7W - New7Wonders(公式サイト。英語)
次回は日本で集計されたの世界遺産ランキングを紹介します。