世界遺産NEWS 26/06/06:2026年の世界遺産候補地と勧告結果
今年2026年7月19~29日に韓国の釜山で第48回世界遺産委員会が開催される予定です。
本記事では世界遺産候補地のリストと諮問機関による勧告結果をお知らせします。
現状、新登録の世界遺産候補地は文化遺産22件、自然遺産7件、複合遺産1件の計30件で、これらに加えて既存の物件の「重大な変更」が3件となっています。
ここには差し迫った危機に直面した物件に対して行われる緊急的登録推薦の物件2件が含まれています。
日本からは「飛鳥・藤原の宮都」が推薦されており、事実上の世界遺産登録内定といえる登録勧告を得ています。
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7月19日から29日にかけて韓国・釜山で第48回世界遺産委員会が開催される予定です。
世界遺産委員会の21委員国は以下となっています。
- 議長国:韓国
- 書記国:ジャマイカ
- 副議長国:ウクライナ、トルコ、レバノン、ジャマイカ、セネガル
- 委員国:ウクライナ、スイス、チェコ、トルコ、ポーランド、アゼルバイジャン、アルメニア、カザフスタン、韓国、クウェート、バングラデシュ、ベトナム、モンゴル、レバノン、グレナダ、ジャマイカ、ペルー、ケニア、セネガル、タンザニア、トーゴ
簡単に「勧告」について解説しておきましょう。
世界遺産を目指す物件は、登録を目指す年の前年2月1日までにUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)の世界遺産センターに登録推薦書を提出しなければなりません。
そして登録推薦書を提出した物件について、文化遺産は主にICOMOS(イコモス=国際記念物遺跡会議)、自然遺産はIUCN(国際自然保護連合)、複合遺産や文化遺産の文化的景観の場合は両諮問機関が現地調査を含む専門調査を行います。
その後、ICOMOSとIUCNは4段階の勧告と提言で構成される評価報告書を作成し、世界遺産委員会の6週間前までに世界遺産センターに提出します。
この報告書を参考に、21委員国からなる世界遺産委員会が正式に4段階の「決議」を行います。
○世界遺産委員会の4段階の決議
- 登録:世界遺産リストへ登録決定
- 情報照会:追加情報の提供を要請。3年以内の提出で世界遺産委員会での再審査が可能
- 登録延期:物件の構成やコンセプトを再考して登録推薦書の提出からやり直し
- 不登録:登録には不適で、決議された場合、再推薦も不可
例年、情報照会勧告や登録延期勧告からの逆転登録が起こっていますが、登録勧告からの逆転不登録は特殊な例外を除いて例がありません。
つまり、登録勧告は事実上の内定ということができるでしょう。
また、近年は情報照会勧告を受けた物件のほとんどが逆転登録に成功しています。
登録延期勧告や不登録勧告を受けた物件は推薦を取り下げることもあり、その場合は世界遺産委員会で審議されません。
特に、決議されると再推薦の道が閉ざされる不登録勧告を受けた物件は取り下げることが多くなっています。
変更についてですが、世界遺産登録と同様のプロセスが必要となるものは「重大な変更」、そのようなプロセスが必要ないものは「軽微な変更」と呼ばれます。
重大な変更は資産の範囲や登録基準の変更などに適用され、軽微な変更はきわめて小規模な資産の範囲変更やバッファー・ゾーンの範囲変更などに適用されます。
軽微な変更の場合は諮問機関の調査や評価を必要としません。
なお、以下の記事では登録勧告→登録失敗の「逆転不登録」と、不登録勧告→登録決議の「逆転登録」の例を紹介しています。
[関連記事]
世界遺産NEWS 16/07/20:ピマチオウィン・アキ、逆転で登録失敗
世界遺産NEWS 24/06/28:諮問機関は世界遺産候補地になぜ「不登録」を勧告するのか? ~不登録勧告と逆転登録の概要~
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日本からは「飛鳥・藤原の宮都」が推薦されていましたが、ICOMOSの勧告結果は「登録」となりました。
ここではICOMOS勧告と遺産の概要を紹介します。
なお、以下は文化庁の報道資料「世界遺産に推薦中の『飛鳥・藤原の宮都』に係るイコモスによる評価結果及び勧告についてお知らせします(概要)」と世界遺産「飛鳥・藤原」登録推進協議会の資料の抜粋です。
<イコモスの評価結果及び勧告の概要>
1.価値について
1-① 比較分析について
イコモスは、正当な比較分析がなされていると考える。
1-② 評価基準の適用について
イコモスは、資産が評価基準(ii)および(iii)を満たしていると考える。また、構成資産の選択は適切であり、シリアル推薦は妥当である。
1-③ 完全性について
イコモスは、シリアル推薦全体及び個々の構成資産の完全性はいずれも満たされていると考える。
1-④ 真実性について
イコモスは、シリアル推薦全体及び個々の構成資産の真実性はいずれも満たされていると考える。
1-⑤ 範囲について
イコモスは、資産範囲及びバッファ・ゾーンの範囲は適切であると考える。大和三山(畝傍山、耳成山、香具山)の重要性はインタープリテーション計画において明記され、重要な視覚軸が視界範囲分析、遺産影響評価、その他適用可能な手法により守られることを提案する。
2.保存・管理について
2-① 資産に影響を与える要因について
イコモスは、資産に与える主な懸念は、バッファ・ゾーンにおける住宅開発・インフラ開発、営農活動、自然災害及び自然の劣化であると考える。ただし資産は適切に管理されており、これらの要因に対してもすでにモニタリング体制が敷かれている。
2-② 保全手法とモニタリングについて
イコモスは、記録・保全手法・モニタリング手法のいずれも適切であると考える。石舞台古墳の近傍を走る自動車交通について、振動による影響を評価するこ(別添)とが有効であるとしている。また、高松塚古墳・キトラ古墳の壁画に関しては、壁画を移動させる安全な手法についての調査研究も行うべきだと提案する。
2-③ 保護措置と管理について
イコモスは、各資産は法的に保護が担保されており、来訪者管理や構成資産同士をつなげる解説など、効果的な管理がなされていると考える。藤原宮跡については、可能な限り早期に全域が史跡指定されることを勧める。また、各自治体の防災計画に基づいて、資産全体のリスク対策・防災戦略を構築することが有益であると考える。さらに、地域住民や信仰にかかる組織などのコミュニティがよりこの管理体制に参画できるよう努めることを提案する。
3.勧告
イコモスは、評価基準(ii)、(iii)の下に世界遺産一覧表に記載することを勧告する。
◯追加的勧告
イコモスは、締約国が以下を考慮することを併せて勧告する。
a)大和三山の藤原京の場所選択における重要性が、インタープリテーション計画において認識され、重要な視覚軸が視界範囲分析と遺産影響評価によって守られることを確実にすること、
b)キトラ古墳(資産018)及び高松塚古墳(資産019)より取り外された重要な壁画の保存及び原位置復帰に関する科学的研究を継続すること、
c)藤原宮跡(資産013)の史跡指定のできるだけ早い完遂のために、必要な協議プロセスを継続すること、
d)シリアル資産全体の具体的なリスクへの備え及び危機対応戦略を策定し、管理システムを通じて実行すること、
e)近傍の交通がその保存に影響を与え得る資産について、振動を監視すること、
f)すでにあるインタープリテーション戦略を基に、実施方針・計画をさらに改善し実行すること、
g)地元住民及び社寺の利用者の権利が、どのように管理計画に効果的に組み込まれるのか明確にすること。
<「飛鳥・藤原の宮都」概要>
■価値の概要
- 東アジアの東端の日本列島中央に位置する「飛鳥・藤原」は、中国の律令制度を模範とした中央集権体制に基づく宮都が日本ではじめて誕生した証拠です
- 東アジアが前例のない国際的な緊張関係にあった時期7世紀に、積極的に中国大陸や朝鮮半島からの渡来人を受け入れた日本列島と東アジアとの政治的・文化的な交流によるものです
- 飛鳥の宮都では、天皇の居住する飛鳥宮に政治権力が集中し、徐々に宮殿を中心に官衙・統治機能が宮殿の周辺に展開していきました
- 藤原の宮都は、中国の律令制度を模範とした中央集権体制を具現化するために計画的に造営されました。官衙機能も内包した藤原宮が、宮都の中心に配置されました
- 飛鳥の宮都から藤原の宮都への変遷は、日本列島における中央集権体制に基づく初の宮都の形成過程を示しています
■顕著な普遍的価値
- 登録基準(ii):重要な文化交流の跡 → 「飛鳥・藤原」は、建築・土木などの分野における価値観の交流の所産であり、その後の日本の古代宮都に多大な影響を与えました
- 登録基準(iii):文化・文明の稀有な証拠 → 「飛鳥・藤原」は、古代宮都の形成過程を端的に示すことができる証拠です
■構成資産 19件
○飛鳥の宮都
- 1. 飛鳥宮跡(明日香村)
- 2. 飛鳥京跡苑池(明日香村)
- 3. 飛鳥水落遺跡(明日香村)
- 4. 酒船石遺跡(明日香村)
- 5. 飛鳥寺跡(明日香村)
- 6. 橘寺跡(明日香村)
- 7. 山田寺跡(桜井市)
- 8. 川原寺跡(明日香村)
- 9. 檜隈寺跡(明日香村)
- 10. 石舞台古墳(明日香村)
- 11. 菖蒲池古墳(橿原市)
- 12. 牽牛子塚古墳(明日香村)
○藤原の宮都
- 13. 藤原宮跡(橿原市)
- 14. 大官大寺跡(橿原市・明日香村)
- 15. 本薬師寺跡(橿原市)
- 16. 天武・持統天皇陵古墳(明日香村)
- 17. 中尾山古墳(明日香村)
- 18. キトラ古墳(明日香村)
- 19. 高松塚古墳(明日香村)
[関連サイト&記事]
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世界遺産NEWS 24/09/09:文化審議会、2026年の世界遺産登録を目指し「飛鳥・藤原の宮都」を推薦候補に選定
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それでは2026年の世界遺産候補地と勧告結果を紹介します。
掲載順は文化遺産→自然遺産→複合遺産→重大な変更で、それぞれは緊急的登録推薦→トランスナショナル・サイト/トランスバウンダリー・サイト(複数国による共同推薦物件)→ヨーロッパ→アジア→オセアニア→北アメリカ→南アメリカ→アフリカ、さらにその下は国別五十音順となっています。
なお、緊急的登録推薦とは、顕著な普遍的価値が明白で価値を喪失する危機に直面した物件を、手順を短縮して緊急的に推薦することを示します。
日本語名は私が適当に訳したものです。
正式な推薦名称は英語の表記になります。
ただし、名称や登録基準は今後変わる可能性があります。
★新世界遺産候補地と勧告結果
<文化遺産:22件>
■セバスティア →緊急的登録推薦
Sebastia
パレスチナ、文化遺産(ii)(iii)(vi)
■シルクロード:フェルガナ=シルダリヤ回廊 →登録延期勧告
Silk Roads: Fergana-Syrdarya corridor
ウズベキスタン/カザフスタン/キルギス/タジキスタン共通、文化遺産(ii)(iii)(iv)(v)(vi)
■イタリア中部における18世紀及び19世紀のイタリア式コンドミニオ劇場システム →登録延期勧告
The system of Italian-style condominio theatres of the 18th and 19th centuries in Central Italy
イタリア、文化遺産(iii)(iv)
■リベイラ・サクラの水景 →不登録勧告
Ribeira Sacra Waterscape
スペイン、文化遺産(v)
■ゼルゼヴァン城とミトラ神殿 →不登録勧告
Zerzevan Castle and Mithraeum
トルコ、文化遺産(iii)(iv)(vi)
■アールトの作品群 →登録勧告
Aalto Works
フィンランド、文化遺産(ii)
■カルカッソンヌのセネシャル管区要塞システム[13~14世紀] →登録勧告
The System of Fortresses of the Seneschalty of Carcassonne (13th-14th centuries)
フランス、文化遺産(ii)(iv)
■ノルマンディーのD-デイ・ランディング・ビーチ群、1944年 →登録勧告
Beaches of the D-Day Landings, Normandy, 1944
フランス、文化遺産(iv)(vi)
■グディニャのモダニズム都市中心部 →2025年に情報照会勧告
Gdynia Modernist City Centre
ポーランド、文化遺産(ii)(iv)
■ライアの稜堡式要塞群 →登録延期勧告
Bulwarked Fortresses of the Raia
ポルトガル、文化遺産(ii)(iv)(vi)
■アラムート城と関連の城砦群[ACRF] →登録勧告
Alamūt Castle and Related Fortifications (ACRF)
イラン、文化遺産(ii)(iii)(v)(vi)
■古代仏教遺跡:サールナート、ヴァラナシ →登録勧告
Ancient Buddhist Site, Sarnath, Varanasi
インド、文化遺産(ii)(iii)(iv)(vi)
■タシケントのモダニズム建築:中央アジアにおける現代性と伝統 →登録勧告
Tashkent Modernist Architecture. Modernity and Tradition in Central Asia
ウズベキスタン、文化遺産(ii)(iv)
■マンギスタウの岩窟モスク群及び関連の聖域群 →登録勧告
Rock Mosques and Associated Sacred Sites of Mangystau
カザフスタン、文化遺産(ii)(iii)(vi)
■ナコーンシータンマラートのワット・プラ・マハタート・ウォラマハーウィハーン →登録勧告
Wat Phra Mahathat Woramahawihan, Nakhon Si Thammarat
タイ、文化遺産(ii)(vi)
■景徳鎮の手工芸磁器産業遺跡群 →登録勧告
Jingdezhen Handicraft Porcelain Industry Sites
中国、文化遺産(ii)(iii)(iv)(vi)
■飛鳥・藤原の宮都 →登録勧告
Ancient Capitals of Asuka and Fujiwara
日本、文化遺産(ii)(iii)
■匈奴貴族の墓地複合遺跡群 →登録勧告
The Cemetery Complexes of the Xiongnu Nobility
モンゴル、文化遺産(ii)(iii)(iv)
■アマゾニアの劇場群 →登録勧告
Amazonia Theaters
ブラジル、文化遺産(ii)(iv)
■コモロの歴史的スルタン諸国のメディナ群 →登録勧告
The Medinas of the Historic Sultanates of the Comoros
コモロ連合、文化遺産(ii)(iii)(iv)
■サントメ・プリンシペのロサ群:植民地時代の農業システムと強制移住 →報照会勧告
The Roças of Sao Tome and Principe: Colonial Agricultural System and Forced Migration
サントメ・プリンシペ、文化遺産(iv)(v)
■シディ・ブ・サイドの村:地中海における文化的・精神的インスピレーションの拠点 →登録勧告
Village of Sidi Bou Saïd: Hub of Cultural and Spiritual Inspiration in the Mediterranean
チュニジア、文化遺産(ii)(iv)(vi)
<自然遺産:7件>
■ボマ=バディンギロの回遊景観 →緊急的登録推薦
Boma-Badingilo Migratory Landscape
南スーダン、自然遺産(vii)(ix)(x)
■リムフィヨルド西部の硬骨魚類化石地帯-始新世最初期の進化と気候適応 →登録勧告
The Bony Fish Fossils of the Western Limfjord – Evolution and Climate Adaptation in the Earliest Eocene
デンマーク、自然遺産(viii)
■トラタウ、クシュタウ及びユラクタウのバシキール・シハン群 →情報照会勧告
The Bashkir Shikhans of Toratau, Kushtau and Yuraktau
ロシア、自然遺産(viii)
■ワディ・ウラヤ →登録延期勧告
Wadi Wurayah
アラブ首長国連邦、自然遺産(ix)(x)
■サウジアラビア王国の紅海・アカバ湾におけるサンゴ礁地帯:アカバ湾 →情報照会勧告
Coral Reefs in the Gulf of Aqaba, Red Sea in the Kingdom of Saudi Arabia: Gulf of Aqaba
サウジアラビア、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
■アカバ海洋保護区 →登録勧告
Aqaba Marine Reserve
ヨルダン、自然遺産(ix)(x)
■オケフェノキー国立野生生物保護区[ONWR] →登録勧告
Okefenokee National Wildlife Refuge (ONWR)
アメリカ、自然遺産(ix)(x)
<複合遺産:1件>
■オリンポス山の広域 →文化遺産:情報照会勧告、自然遺産:情報照会勧告
The wider area of Mount Olympus
ギリシア、文化遺産(vi)、自然遺産(viii)(ix)(x)
<重大な変更・再推薦:3件>
■ベルリンのモダニズム集合住宅群 →承認勧告
Berlin Modernism Housing Estates
ドイツ、文化遺産(ii)(iv)
※世界遺産「ベルリンのモダニズム集合住宅群(ドイツ、2008年、文化遺産(ii)(iv))」の範囲拡大(ヴァルトジードルング・ツェーレンドルフの追加)
■ゲボル、韓国の干潟[フェイズ2] →承認勧告
Getbol, Korean Tidal Flats (Phase II)
韓国、自然遺産(x)
※世界遺産「ゲボル、韓国の干潟(韓国、2021年、自然遺産(x))」の範囲拡大
■ガランバ国立公園 →承認勧告
Garamba National Park
コンゴ民主共和国、自然遺産(ix)(x)
※世界遺産「ガランバ国立公園(コンゴ民主共和国、1980年、自然遺産(vii)(x))」の再推薦(遺産を特徴付けるキタシロサイが絶滅するなど顕著な普遍的価値が揺らぐ現状があり、その正当性を見直すため)
[関連サイト&記事]
48th session of the World Heritage Committee(UNESCO)
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世界遺産NEWS 25/05/29:2026年の世界遺産候補地
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