世界遺産NEWS 26/03/06:米以の空爆でイランの世界遺産「ゴレスタン宮殿」が損壊

2月28日にアメリカとイスラエルによるイラン攻撃が開始されました。

中東から南アジアに至る各地で被害が報告されていますが、イランでは首都テヘランに位置する世界遺産「ゴレスタン宮殿」への空爆が確認されました。

 

ゴレスタン宮殿はペルシア美術のひとつの到達点とされる華麗な装飾で知られます。

特に昨年2025年にUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された伝統的鏡細工アイネ・カリは非常に名高いものとなっています。

その最高峰とされる「鏡の間」にも大きな被害が出ており、事態は深刻であるようです。

 

これに対してUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)は懸念を表明し、教育施設や文化施設を攻撃対象から外して保護するよう要請しています。

 

Iran's UNESCO-listed Golestan Palace Damaged in US-Israeli Air Strikes(AD Middle East)

 

今回はこのニュースをお伝えします。

 

* * *

2月28日以降、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃が続いており、被害は軍事施設や官公庁のみならず文化施設や教育施設といった非軍事施設にも及んでいます。

 

3月1日には首都テヘランに位置する世界遺産「ゴレスタン宮殿」のバッファー・ゾーン(世界遺産の登録範囲である資産に隣接して設けられた間衝地帯)に含まれているアルグ広場にミサイルが命中しました。

その爆風や衝撃波・飛散した瓦礫が宮殿を直撃し、外装や内装が大きく損傷しました。

 

ゴレスタン宮殿の場所には古くから城塞があったのですが、16世紀に城館が整備されました。

サファヴィー朝(1501~1736年)の時代までペルシアの国々の首都は主にイスファハンだったのですが、ガージャール朝(1785~1925年)の初代シャー(国王)であるアーガー・ムハンマドがテヘランを首都に定めた際に王宮として整備されました。

 

19世紀に第4代シャー・ナーセロッディーンと歴史的名建築家ハージ・アボル=ハサン・ミマル・ナヴァイによって大幅に増改築され、ペルシャ美術と西洋美術を融合させた特有のスタイルが完成しました。

特筆すべきが装飾で、各種のドームやアーチ、イーワーン(門状の構造)、ムカルナス(鍾乳石を模した装飾)、アラベスク(イスラム文様)、イスラミック・カリグラフィー(装飾文字)、スタッコ(化粧漆喰)、彫刻、レリーフ、絵画、彩釉タイル、象眼細工、ステンドグラスなどで埋め尽くされており、ペルシア美術の集大成といえる威容を誇っています。

 

特に「アイネ・カリ」と呼ばれる伝統的鏡細工は「アイネ・カリ:ペルシア建築における鏡細工の芸術」の名前で昨年2025年にUNESCOの無形文化遺産に登録されています。

ゴレスタン宮殿には各所にアイネ・カリが見られますが、鏡の間はその最高峰のひとつと評されています。

ゴレスタン宮殿の被害ですが、広範囲で窓ガラスが割れ、壁面や窓枠・ドアおよびそれらの装飾が損壊しました。

王権の象徴である「大理石の玉座」がある大理石の玉座の間では天井や壁面の多くの装飾品やタイルが落下・破損。

先述した鏡の間では1週間前まで修復作業が行われていたのですが、広場に面した窓ガラスがすべて割れ、修復箇所も含めて多くの鏡が割れ落ちました。

 

いまのところ宮殿の8つの主要建造物について、倒壊が懸念されるような構造への被害は報告されていません。

また、移動可能な美術品や遺物・文書といった展示物の多くは1月の時点で地下倉庫などに移動されており、被害を免れています。

 

イラン政府はこの攻撃を「国の文化的アイデンティティに対する攻撃」として強く非難し、UNESCOに専門家チームの派遣と支援を要請しています。

UNESCOも深い懸念を表明し、イランの文化遺産の監視・保護・支援を進めるものとし、ハーグ条約や世界遺産条約をはじめとする国際法の観点から対処を要請しています。

 

また、教育・文化施設への攻撃にも深い憂慮を表明し、国際人道法や国連安全保障理事会決議などの立場からこれらに対する保護義務の遂行を強く要求しています。

イランの世界遺産「ゴレスタン宮殿」、見事な装飾で覆われた大理石の玉座の間、中央下が大理石の玉座 (C) Diego Delso, delso.photo, License CC BY-SA
イランの世界遺産「ゴレスタン宮殿」、見事な装飾で覆われた大理石の玉座の間、中央下が大理石の玉座 (C) Diego Delso, delso.photo, License CC BY-SA

アメリカとイスラエルによる攻撃、それに対するイランの反撃は現在も続いており、レバノンのヒズボラやクルド人勢力の参戦も報道されて戦争の拡大が懸念されています。

イラン側の犠牲者は1,000人を超え、4,000人を超えるという試算も出ています。

 

その中で、学校をはじめとする教育施設やゴレスタン宮殿のような文化施設の被害も確認されており、事態は深刻さを増しています。

一刻も早い事態の収束が望まれます。

 

 

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