世界遺産NEWS 23/09/15:M6.8の地震がモロッコの古都マラケシュを襲う
9月8日の夜(日本時間9日朝)、モロッコ南部を横切るアトラス山脈北部の都市マラケシュの周辺を同国観測史上最大となるマグニチュード6.8の地震が襲いました。
現在までに約3,000人の犠牲者と5,700人の負傷者が確認されており、その数は増えつづけています。
世界遺産では「マラケシュのメディナ」で甚大な被害が出ているほか、「アイット=ベン=ハドゥの集落」や「エッサウィラのメディナ[旧名モガドール]」などでも被害が確認されています。
これを受けてUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)のオードレ・アズレ事務局長はモロッコへの全面的な支援を表明しています。
■UNESCO stands in solidarity with Morocco following the earthquake(UNESCO)
今回はこのニュースをお伝えします。
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2023年9月8日23時11分(日本時間9日午前7時11分)、マラケシュの南東73.4km・深さ18.0kmを震源にマグニチュード6.8の地震が発生しました。
同レベルの地震は過去130年にわたって記録がなく、モロッコでは観測史上最大となるそうです。
一帯で最大の都市がマラケシュですが、同地では震度5強~6弱を記録したと見られています。
鉄筋コンクリートや鉄骨造の建物が多い新市街の被害は少なかったものの、世界遺産に登録されている「メディナ」と呼ばれる旧市街はレンガ造の古い建物が密集していることもあって甚大な被害を出しています。
具体的には、メディナのハルボウシュ・モスクのミナレット(礼拝を呼び掛けるための塔)や壁が半壊・倒壊し、メディナのランドマークであるクトゥビア・モスクのミナレットも損傷しています。
他にも多くの家屋が倒壊・損傷しており、特にユダヤ人地区の被害が大きいということです。
メディナの中心には無形文化遺産「ジャマ・エル・フナ広場の文化的空間」にも登録されているジャマ・エル・フナ広場が広がっていますが、家を失った多くの市民が避難しています。
現在も余震が続いており、人々はテントや仮設住宅もない状態で着の身着のままで過ごしています。
震源により近い町や集落の中には半数以上の家屋が倒壊した地域もあり、インフラが破壊されて孤立した集落も確認されています。
政府は軍を中心に救援部隊を組織し、救出作戦を展開しています。
世界遺産ではマラケシュの南東約100kmにある「アイット=ベン=ハドゥの集落」でいくつかの建物が倒壊したほか、西170kmほどにある「エッサウィラのメディナ[旧名モガドール]」でも一部の建物の損傷が確認されています。
また、世界遺産暫定リストに記載されているティンメル・モスクはミナレットや壁が倒れるなど壊滅的な被害を受け、他にも数多くの文化遺産が損傷しているものと見られます。

こうした被害を受けてUNESCOは翌日の9日にいち早く関係者をマラケシュに送り込み、被害を確認すると同時に支援を表明しています。
オードレ・アズレ事務局長も声明を出し、モロッコの人々への全面的な援助と、特に遺産と教育の分野での調査・安全化・再建の支援を発表しています。
同様に世界各地の国・地域・国際組織・NGOなどが支援を表明し、隣国であるアルジェリアが支援用の航空機に対して空域を開放するなどさまざまな措置が執られています。
ただ、モロッコ政府は援助の受け入れ国をスペイン、イギリス、カタール、UAE(アラブ首長国連邦)に限定し、アルジェリアなどの支援を一部拒否する一方で、イスラエルのNGOによる緊急物資を受け入れるなど混乱が見られます。
これは政府が地震被害の全容を見通せておらず、援助を受け入れる体制やノウハウが整っていないためと見られます。
こうした政府の対応の遅れと緊張感の欠如が被害を拡大させていると非難を浴びる結果となっています。
[関連記事&サイト]
2023年モロッコ地震救援金(日本赤十字社)
マラケシュ旧市街/モロッコ(All About 世界遺産)
アイット・ベン・ハドゥ/モロッコ(All About 世界遺産)
エッサウィラのメディナ/モロッコ(All About 世界遺産)
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