世界遺産NEWS 19/11/17:山形大学、ナスカで143点の地上絵を発見
11月15日、山形大学はペルーのナスカ台地とその周辺部で新たに143点の地上絵を発見したことを発表しました。
山形大学はこれまでも多数の地上絵を発見していますが、今回は日本IBMと共同でAI(人工知能)も活用してこの成果を成し遂げました。
■ナスカ台地とその周辺部で143点の新たな地上絵を発見(山形大学)
今回はこのニュースをお伝えします。
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世界遺産NEWSでは以前に一度、山形大学の地上絵発見のニュースをお届けしています(下にリンクを張っています)。
- 世界遺産NEWS 16/04/25:山形大学、ナスカでまたまた新たな地上絵発見
これ以外にも同大のナスカ研究所の公式サイトには以下のような発見が記載されています。
- 2006年4月:ナスカ台地南部において発見した、新しい動物の地上絵の発表
- 2011年1月:ナスカ台地南部において発見した、2点の新しい地上絵(人間の頭部、動物)の発表
- 2013年4月:ナスカ台地の中心部において発見した、人物2点の新しい地上絵の発表
- 2014年4月:ナスカ市街地の近郊のアハ地区において発見した、17頭のラクダ科動物リャマの地上絵の発表
- 2015年7月:ナスカ市街地近郊において発見した、24頭の動物の地上絵の発表
すごいですね。
特徴的なのは衛星画像や3Dスキャナー、ドローンなどを駆使している点で、最先端の技術を投入して発見につなげています。
そして今回の143点の地上絵の発見です。
プレスリリースによると、143点のうち142点は坂井正人教授率いる研究グループによるものです。
航空レーザー測量などによって得られた画像解析の結果、ナスカ台地西部に散在する小道に沿って地上絵が集中的に描かれたという仮説を立てました。
これを元に現地調査を行った結果、2016~18年までに発見・同定したということです。
地上絵は紀元前100~後300年頃の作品と見られます。
絵柄は⼈、⿃、ネズミ、キツネ、ラクダ科の動物、ネコ科の動物、サル、シャチ、ヘビ、⿂といった動物を描いたもので、大きいものは全長100mを超えています。
中にはヘビが人を襲う様子を描いたと思われるものや人と動物がつながったものもあり、単独で描かれていたこれまでの地上絵と異なる意匠となっています。
こうした地上絵は地表の黒い石を除去し、その下の白い砂の層を露出させることで描かれていますが、線状に石を除去したタイプと、面状に除去したタイプが見られます。
大型の作品が多い前者は動物の形をした儀礼場と考えられ、土器を破壊する儀式の跡が発見されています。
一方、後者は道沿いや斜面に描かれていることから道標と考えられています。
2018~19年には日本IBMの協力の下で画像処理の実証実験が行われました。
AIサーバー "IBM Power System AC922" 上に構築されたディープ・ラーニング・プラットフォームでAIモデルを開発し、空撮写真をはじめとする膨大な画像データを処理させた結果、地上絵の候補500点ほどが抽出されました。
このデータを元に現地調査を行った結果、それまでに確認されていなかった杖を持った⼈型の地上絵が確認されました。
この作品は有名なハチドリの地上絵の近くにあり、坂井教授もしばしば調査していた場所だったそうですが、薄くて確認できませんでした。
AIはこうした地上絵の洗い出しに有効で、膨大な時間を短縮できると期待されています。
今後は過去10年分の現地調査のデータをAIプラットフォーム "IBM PAIRS (IBM PAIRS Geoscope)" 上で整理し、地上絵の分布状況を明らかにする予定です。
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ペルーの世界遺産「ナスカとフマナ平原の地上絵」の資産(プロパティ。世界遺産登録範囲)は法的な保護を受けていますが、未発見の地上絵は道路に寸断されたり鉱山開発などによって消滅しつつあります。
こうした損失を防ぐためにも地上絵の分布図の作成が急がれており、AIの活躍が期待されます。
同時に、山形大学はペルー文化省と共同で地上絵の保護活動を進めていくということです。
上にリンクを張った山形大学のページではもう少し詳しく紹介されています。
おもしろいのでぜひ読んでみてください。
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