世界遺産NEWS 19/09/06:屈折ピラミッドが半世紀ぶりに公開へ

エジプト政府はこの夏、世界遺産「メンフィスとその墓地遺跡-ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」の構成資産である屈折ピラミッドやセンウセレト2世のピラミッド(ラフーンのピラミッド)の公開を開始しました。

特に屈折ピラミッドは途中で角度が変わる他に類を見ないデザインで、他のピラミッドではほとんど失われてしまった化粧石が数多く残された貴重なピラミッドでもあります。

 

Egypt's Bent Pyramid opens to visitors(BBC。英語)

 

今回はこのニュースをお伝えします。

 

* * *

政情不安定さから観光客が伸びないエジプトではこのところ新たな見所を次々とオープンさせています。

エジプトに119基(139基とも)残るピラミッドも同様で、6月28日にセンウセレト2世のピラミッド、7月13日には屈折ピラミッドと隣接の衛星ピラミッドが公開されました。

 

ラフーンにあるセンウセレト2世のピラミッドはエジプト中王国第12王朝第2代ファラオ(国王)、センウセレト2世が建設したピラミッドで、紀元前1900~前1850年頃の建造と見られています。

中央の石造のマスタバ(方形の墳墓)をレンガで覆ったような構造で、一辺107m・高さ48.7m・勾配42度、レンガ部分は半ば溶けて崩れた山のようになっています。

 

通常、ピラミッドの入口は北に設けられていますが、このピラミッドの北の入口はニセ通路で、正エントランスは南側に設置されています。

内部でふたつの墓室が発見されていますが、センウセレト2世の棺やミイラは未発見です。

周辺には女王のものと見られる衛星ピラミッドや神殿群が隣接しており、ピラミッドを中心とした神殿コンプレックスを形成していました。

 

今回、史上はじめてセンウセレト2世のピラミッド内部が一般に公開されたほか、神殿コンプレックスで発見された棺や装飾品なども展示されています。

一方、ダハシュールの屈折ピラミッドは独特の造形から非常に人気の高いピラミッドです。

建設したのは古王国第4王朝初代ファラオのスネフェルで、一辺188m・高さ97m、建造年代は紀元前2600年前後と考えられています。

 

壁面が白く装飾されていますが、ピラミッドはもともと白い石灰岩の化粧石で覆われており、日の光を受けて輝いていたといわれています。

ギザの3大ピラミッドのひとつ、カフラー王のピラミッドの頂部の白い部分も化粧石ですね。

しかし、化粧石は別の建造物に転用されたり崩れたりしてほとんど残っていません。

 

屈折ピラミッドの最大の特徴はその勾配で、大地から54度の角度で立ち上がっているものの、途中で43度に変化しています。

この折れ曲がりゆえに屈折ピラミッド(Bent Pyramid)と名づけられたわけですが、その理由はわかっていません。

 

一説によると、スネフェルは真正ピラミッド(階段状の層を持たず、直線状の斜線を持つ四角錐のピラミッド)の建設を目指していましたが、54度の角度で建設を続けると崩壊する危険性が高まったことから角度を緩めたとされています。

スネフェルは屈折ピラミッドを建設する前にメイドウームにある崩れピラミッドを建設していますが、こちらも54度の角度で建設がはじまっていますが、完成直後に崩壊してしまったようです。

 

スネフェルのこの悲願は屈折ピラミッドの北に位置する赤のピラミッドで達成されますが、この世界初の真正ピラミッドは43度の勾配となっています。

50度を超える真正ピラミッドを完成させたのはスネフェルの息子クフで、世界最大の真正ピラミッドであるクフ王のピラミッドによって51.5度の勾配を実現しています。

屈折ピラミッドの入口は北と西にありますが、北が正エントランスと考えられています。

ただ、スネフェルの棺は発見されていません。

 

スネフェルは少なくとも崩れピラミッド、屈折ピラミッド、赤のピラミッドの3基を建設していますが、いずれからも棺もミイラも出土しておらず、墓は不明となっています。

彼が複数のピラミッドを建設したこと、またクフ王のピラミッドのように王の棺やミイラが発見されないピラミッドが少なくないことなどから、ピラミッド=王墓説の反証と考える学者もいます。

 

屈折ピラミッドは1965年まで公開されていましたが、長さ79mの通路を修復するため閉鎖されていました。

今回の公開は約半世紀ぶりとなります。

 

また、隣接する高さ18mの衛星ピラミッドも同時に公開されています。

こちらはスネフェルの妻ヘテフェレスのためのピラミッドと考えられており、初公開となります。

 

* * *

世界遺産「メンフィスとその墓地遺跡-ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」、屈折ピラミッド
屈折ピラミッド (C) Gérard Ducher
世界遺産「メンフィスとその墓地遺跡-ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」、センウセレト2世のピラミッド
センウセレト2世のピラミッド

エジプトのピラミッドというとギザの3大ピラミッドを思い浮かべる人が多いと思います。

でも、その南のサッカーラやダハシュールの光景はそれに劣らないもので、ぼくは砂漠の中にピラミッドがポツリポツリと点在するあの荒涼とした景色を忘れることができません。

ハイライトであるジェセル王の階段ピラミッド、赤のピラミッド、そして屈折ピラミッドは「裏3大ピラミッド」といってもいいかもしれません。

 

もともと階段ピラミッドと赤のピラミッドの内部は公開されていましたから、今回の屈折ピラミッドの内部公開は待望のものでしょう。

といっても、世界遺産「古代都市テーベとその墓地遺跡」の「王家の谷」の王墓群と違ってピラミッドの内部は派手に装飾されているわけではありませんが。

 

その王家の谷や王妃の谷でも新たに公開された墓がありますし、近々再訪したいと思っています。

とても楽しみです。

 

 

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