世界遺産NEWS 19/06/05:現代は100万種が失われつつある大量絶滅時代

世界132か国が参加するIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム)は5月上旬、現在を100万種が絶滅の危機に瀕する大量絶滅時代であるとする報告書を発表しました。

報告書によると、絶滅のペースは過去1,000万年の平均より10~100倍も早く、人間の活動が大きく関与しているとしています。

 

Human society under urgent threat from loss of Earth's natural life(The Guardian。英語)

Nature crisis: Humans 'threaten 1m species with extinction'(BBC。英語)

 

今回はこのニュースをお伝えします。

 

* * *

地球は過去、幾度もの大量絶滅を経験しています。

特に有名な5度の絶滅は「5大絶滅」「ビッグ・ファイブ」などと呼ばれています。

  1. オルドビス紀末/O-S境界:約4億4,000万年前、生物種の85%前後が絶滅
  2. デボン紀末/F-F境界:約3億7000万年前、80~85%が絶滅
  3. ペルム紀末/P-T境界:約2億5,000万年前、90~95%が絶滅
  4. 三畳紀末/T-J境界:約2億年前、75~70%が絶滅
  5. 白亜紀末/K-Pg境界:約6,500万年前、約70%が絶滅

 

P-T境界とK-Pg境界の大量絶滅は、それぞれ古生代と中生代、中生代と新生代を分けるものとなっています。

逆にいえば「○○代」とか「××紀」という時代区分は大量絶滅が起こって多くの生物がその形を変えたことを意味しています。

 

この中で最新の大量絶滅が約6,500万年前に起きたK-Pg境界のもので、恐竜の絶滅で知られています。

原因として有力視されているのが隕石の衝突で、メキシコ・ユカタン半島の先端で発見されたチクシュルーブ・クレーターがその時の衝突痕と考えられています。 

ただ、隕石が衝突して突然70%の生物種が絶滅したわけではなく、その後数十万年かかっているようです。

そのペースは諸説ありますが、一説によると1年あたり10~100種とされています。

 

ところが近年、現在の種数の減少はこのペースをはるかに上回っているとする生物学者が増えています。

生物多様性の権威であるふたり、ノーマン・マイヤーズは年4万種、エドワード・オズボーン・ウィルソンは年3万種弱が絶滅しつつあるとしています。

桁外れですね。

ちなみに、現存の生物種で既知のものは約200万種、未知の生物種を含めると推定約900万種と考えられています(諸説あり)。

さて、そこでIPBESです。

IPBES、すなわち生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォームは2012年に設立された政府間組織で、現在132か国の政府が参加しています。

生物多様性や生態系に関して世界中の研究成果を集めて科学的見地から政策の提言を行うことを目的としています。

 

そして今年の5月6日、51か国の専門家145人が3年をかけて行った研究の成果として "IPBES Global Assessment Report on Biodiversity and Ecosystem Services"(生物多様性と生態系サービスに関するIPBESグローバル評価報告書)を発表しました。

その内容の一部を書き出してみましょう。

  • 生態系の47%が衰退
  • 現在、動植物種の25%が絶滅の危機
  • 20世紀以降、陸上生物種の20%以上が絶滅
  • 海生哺乳類33%、陸生哺乳類20%、両生類40%、鳥類10%、甲殻類20%、昆虫類10%、サンゴ33%、シダ類60%以上、双子葉植物30%以上が絶滅の危機
  • 陸地の3/4、海洋の2/3が人間の影響で環境が大きく変化している
  • 陸地の1/3、湖沼や河川の3/4は農業や漁業に利用されている
  • 陸地の23%の生産性は後退している
  • 50万種が長期的な生存に必要な生息域を脅かされている

 

こうした絶滅危機の原因ですが、最大要因は陸地や海洋のオーバーユースと動植物の乱獲・伐採です。

たとえば多くの動植物種が森林やサンゴ礁に集中していますが、これらは伐採や農地・都市・道路・漁場などへの転換によって大幅に減少しています。

21世紀に入ってわずか13年で原生林は7%減少し、人間の手から完全に離れている海域は3%にすぎず、サンゴ被度(サンゴが覆う割合)は150年で半減しています。

これに続く原因が気候変動による温暖化や汚染、外来種の影響です。

 

そしてこのままだと自然環境の悪化は2050年以降も続き、結果的に100万種が数十年で絶滅する恐れがあるとしています。

これを食い止めるためには人間の自然に対する関わり方を抜本的に変える必要があると結論づけています。

 

* * *

衝撃的な報告ですね。

 

日本の環境省も2009年に生物多様性条約に関する国際会議(COP10)のためにまとめた生物多様性白書の中で、現代を約160万の種が滅びつつある「大量絶滅時代」と位置づけています。

人間が与える環境への影響はそれほど大きいということなのでしょう。

 

気候変動にしても今回の報告書にしても数値には多くの推定値を含んでいます。

しかし、目に見えて世界が変化し、生活にすら支障を来すようになってはじめて真実は明らかになるのでしょう。

この報告書は、それでは遅すぎると警告しています。

 

 

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