世界遺産NEWS 18/09/25:中国・殷墟の盗掘団を拘束、盗品700点を回収

存在が確認されている中国最古の王朝・殷(当時の国名は商)。

殷後期の首都遺跡と見られているのが世界遺産「殷墟(いんきょ)」です。

9月上旬、地元警察は殷墟の盗掘に関与したと見られる14の盗掘団を解体し、容疑者140人を拘束、約700点の遺物を回収したことを発表しました。

 

Chinese tomb raiders dug underground tunnels to steal priceless objects from 3,000-year-old Yin Xu royal site(South China Morning Post。英語)

 

実はこの殷墟、紀元前の時代から盗掘にあっており、盗品によって20世紀はじめに発見された遺跡でもあったりします。

今回はこのニュースをお伝えします。

 

* * * 

世界遺産「殷墟」は紀元前14~前11世紀頃に繁栄した殷王朝後期の首都遺跡です(首都ではなかったと考える学者もいます)。

宮殿や住居・商工業施設の跡などに加えて王や貴族・殉葬者の墳墓群が発見されており、特に第22代殷王・武丁(ぶてい)の妻である婦好(ふこう)の墳墓からは468の青銅器、755の玉器(宝石で作られた礼拝用の器具)をはじめとする貴重な遺物が出土しています。

発掘が行われている区域は遺跡のほんの一部にすぎず、まだ膨大な遺構や遺物が地下に眠っていると考えられています。

 

こうした殷墟の遺物を狙って数多くの盗掘団が組織されていたようです。

9月上旬、地元の安陽市警は14の盗掘団を解体し、容疑者140人を拘束したことを発表しました。

 

きっかけは盗掘された遺物が売られているという2017年8月の告発で、主だった12品は1億円以上の値がつけられていました。

警察はこれをもとに捜査を進め、2017年8~9月に容疑者数名を拘束しました。

ここから盗掘や密売組織の特定を開始し、最終的には14の盗掘団に行き着き、140人の拘束に至りました。

回収された遺物は青銅器を中心に713点に及んでいます。

 

こうした密輸ルートは遅くとも2013年には組織されていたようで、売られた遺物など被害の実態はまだわかっていません。

また、拘束者の中には共産党の党員や役人も含まれているということで、当局の関与も疑われています。

警察はさらなる被害を防ぐために現在24時間態勢でパトロールを行っており、周辺の不動産の売買や貸し借りの動きも注視しつつ全容解明を目指すということです。

 

ただ、遺跡がどこまで広がっているのか未解明であるため一般住居の地下から遺物が出ることも少なくなく、こうした遺物が秘密裏に発掘・売買されてしまう例もあるようです。

中国政府はこうした盗掘に対して厳罰で臨んでおり、懲役10年、1,000万円以上の罰金に処せられた例もあるということです。

 

* * *

 

実は殷墟の発見には盗掘された遺物が深く関わっています。

 

19世紀後半、中国・北京の薬局で漢字の起源とされる甲骨文字が刻まれたカメの甲羅やウシの骨が発見されました。

20世紀はじめ、学者たちはこれらの文字が殷の時代の卜辞(占い文)であり、河南省安陽市近くの小屯村でよく出土することを突き止めます。

1915年の試掘で青銅器や玉器が出土すると伝説の国・殷の都であることが有力視され、1928年に中央研究院(のちに中国科学院考古研究所)による発掘調査がはじまって殷の遺跡であることが確認されました。

 

先述したように婦好墓からは数多くの青銅器や玉器、殉葬者、数千の貝貨などが発見されていますが、実は婦好墓以外の13の大型墓はすべて盗掘済みでした。

1968年には翡翠(ひすい)の棺や翡翠を金糸でつないだ埋葬衣が発見されたりもしていますが、これらは約2,000年前に盗掘された際に残されたものと考えられています。

なぜ翡翠を残していったのかはわかりませんが、翡翠は皇帝のみに使用が限定されていたため処分できなかったのではないかと考える学者もいます。

 

殷墟は3,000年以上前の都市遺跡ですが、2,000年以上の盗掘の歴史を持っているわけです。

その過程で永遠に失われてしまった膨大な数の遺物があり、盗掘の過程で破壊されてしまった遺構も少なくありません。

非常に残念ですが、これ以上の被害はなんとか防いでもらいたいものです。

 


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