世界遺産NEWS 18/05/15:アメリカの在イスラエル大使館、エルサレムへ移転

昨年2017年12月上旬、アメリカのトランプ大統領は現在テルアビブにある在イスラエル・アメリカ大使館をエルサレムに移転する意向を表明していました。

イスラエル建国70周年を迎えるこの5月14日、その言葉通り大使館はエルサレムに移されました。

 

今回はこのニュースをお伝えします。

移転までの事情を知りたい方は以下の過去記事を参照ください。

 

世界遺産NEWS 17/12/08:トランプ大統領、米大使館をエルサレムへ移転へ

 

* * *

↑は在イスラエル・アメリカ大使館のFacebookの記事です。

「歴史の目撃者となろう! トルーマン大統領がイスラエルを承認して以来70年を経て、今日、アメリカ大使館をイスラエルの首都エルサレムにオープンすることを誇りに思うと同時に興奮しています」

こう書かれています。

 

「70年」とありますが、これは70年前の1948年5月14日を意味します。

この日、イスラエルはテルアビブで独立を宣言し、アメリカのトルーマン大統領は即座に国家承認を行いました。

しかしアラブ諸国はこれを認めず、同日中にイラク、エジプト、シリア、トランスヨルダン(現ヨルダン)、レバノンの5か国が宣戦を布告。

サウジアラビアやイエメンなどの部隊も合流して翌日パレスチナに侵攻し、第一次中東戦争がはじまりました。

ですから14日はイスラエル建国70周年にあたり、パレスチナ人にとって15日は戦争がはじまるナクバの日(大破局)となっています。

 

オープニングセレモニーには大統領の長女であるイバンカ大統領補佐官とその夫クシュナー上級顧問の他、財務長官や国務副長官等が参加しました。

トランプ大統領はビデオ演説で登場し、「イスラエルの首都がエルサレムであることは明白だ」「待ちに待った瞬間」などと語っています。

ただ、セレモニーには80か国以上の大使が招待されていましたが、日本を含む約半数は参加を見送ったようです。

 

移転場所ですが、大使館の新しい住所を調べてみると、それまでアメリカ領事館があった場所と同じものになっていました。

このことから、エルサレムにあった領事館を大使館に格上げし、テルアビブの大使館を領事館に移行して機能を交換したようですね。

 

場所は↓の青ピンで、大使館の北に見えるピンクの地域が世界遺産「エルサレムの旧市街とその城壁群」の旧市街・城壁地区になりなす。

エルサレム旧市街-新アメリカ大使館を結ぶラインはおおよそ東エルサレムと西エルサレムを分けるラインと重なっており、これより東(地図上右)が東エルサレム、西(同左)が西エルサレムになります。

東西エルサレムについて簡単に解説しておきましょう。

 

イスラエルが独立宣言を行った当時、首都機能はテルアビブに置かれていました。

第一次中東戦争終了後、国連の管理下で旧市街を含む東エルサレムはヨルダン、西エルサレムはイスラエルが統治することになりました。

イスラエルは1950年に首都機能を西エルサレムに遷し、首都宣言を行っています。

 

1967年の第三次中東戦争でイスラエルは東エルサレムを併合。

「エルサレムの不可分」を掲げ、1980年にはエルサレム全域を首都として宣言し、現在もその状態が続いています。

ただ、国際社会は国連総会で東エルサレムの領有を否定し、日本をはじめ多くの国は大使館をテルアビブに置いています。

 

昨年のトランプ大統領による大使館移転声明を受け、国連は2017年12月21日に総会の緊急特別会合でアメリカに撤回を求める決議を採択しています。

大統領は決議に賛成した国に対して経済援助の停止を宣告していましたが、賛成128(日本を含む)、反対9、棄権35という圧倒的賛成多数となりました。

この決議ではあらゆる国に対して大使館をエルサレムに移さないよう要請しています。

 

今回の移転はこうした国連総会決議を無視するものです。

イスラエルのネタニヤフ首相はアメリカの決定を歓迎し、「すべての国にアメリカと同様、大使館をエルサレムに移転することを要請する」との声明を発表。

これまでにグアテマラやパラグアイが追随を表明しています。

 

ただ、アメリカはイスラエルの東エルサレム領有を直接認めているわけではないので、「エルサレムの地位はイスラエルとパレスチナの協議で決定する」という1993年のオスロ合意は崩れていないと考えられます。

これに対してパレスチナ側はアメリカの動きに強く反発しています。

パレスチナ自治政府のアッバス議長は「世紀の侮辱」「アメリカによる入植」と厳しく非難し、PLO(パレスチナ解放機構)のエラカト局長もアメリカ主導の和平協定をすべて拒否する構えを見せています。

 

昨年以降デモが頻発していたガザ地区では大きなデモが起こっており、イスラエル軍の発砲を受けて少なくとも55人の犠牲者を出しているようです。

エルサレムはもちろん世界中で反米・反イスラエルデモが起きており、中東の平和を求める声が高まっています。

また、アルカイダなどのテロ組織はジハード(聖戦)の発動を呼び掛けており、テロの発生が懸念されています。

 

* * *

 

中東が非常にきな臭くなってきています。

しかし、以前のようなイスラエルVSイスラム諸国というような対立構造はすでに崩れています。

 

イスラエルはイラン攻撃をもちらつかせており、こうした動きはアメリカのイラン核合意離脱や、イランの宿敵サウジアラビアへのイスラエルの接近とも結びついているのでしょう。

サウジアラビアはイスラエルとの関係を強めており、今回の移転に対しても明確な批判を避けています。

 

一方、イランはアメリカ-イスラエルに対してイスラム諸国の団結を訴えています。

アラブの盟主サウジアラビアの対イスラエル軟化を利用して影響力を強める狙いで、レバノンのイスラム教シーア派組織ハマスなどが同調してイスラエルとサウジアラビアに対して非難を強めています。

 

アメリカ、イスラエル、パレスチナの思惑にイラン、サウジアラビア、シリア、ロシア、中国、トルコといった国々の思惑が絡んで非常に複雑な様相を呈してきています。

こうした状況にあって国連やUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)といった国際組織の影響力の小ささがとても残念です。

 

 

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