世界遺産NEWS 16/06/14:紀伊山地の霊場、構成資産22件の追加内定
今年1月に構成資産を22か所増やすために「登録範囲の軽微な変更」を申請していた世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」ですが、文化遺産の調査・報告を行っているICOMOS(イコモス=国際記念物遺跡会議)は変更を承認する報告書をまとめました。
これをもとに、7月10~20日にかけてトルコのイスタンブールで開催される第40回世界遺産委員会で正式な決定がなされます。
結論部分を引用しましょう。
■ICOMOS recommendations
Recommendations with respect to inscription ICOMOS recommends that the proposal for a minor modification of the boundaries of the Sacred Sites and Pilgrimage Routes in the Kii Mountain Range, Japan, be approved.
追加予定の構成資産は以下となっています。
■熊野参詣道 中辺路(なかへち)
北郡越、長尾坂、潮見峠越、赤木越、小狗子峠、かけぬけ道、八上王子跡、稲葉根王子跡、阿須賀王子跡
■熊野参詣道 大辺路(おおへち)
富田坂、タオの峠、新田平見道、富山平見道、飛渡谷道、清水峠、二河峠、駿田峠、闘鶏神社
■高野参詣道
三谷坂(丹生酒殿神社等)、京大坂道不動坂、黒河道、女人道
もともとこれらの多くは世界遺産に登録するだけの顕著な普遍的価値があると考えられていましたが、2004年の登録に調査が間に合わなかったり、地権者の同意が得られなかったため構成資産から外されていました。
和歌山県はこれらを追加するために2010年から活動を進めており、たとえばの飛渡谷道などは明治時代の古地図をもとに大辺路の一部であったことを確認し、今回の拡大につなげたということです。
地道な努力が実ったのですね。
これにより世界遺産登録の参詣道307.6kmは40.1km追加されて347.7kmとなり、13%延長される予定です(面積比では2.2%)。
以前も書きましたが、世界遺産の登録範囲の変更について少し解説しておきましょう。
登録範囲の変更には「軽微な変更」と「重大な変更」の2種類が規定されています。
いずれも毎年開催されている世界遺産委員会で決定されるのですが、「軽微な変更」については提案書を世界遺産委員会にかける年の2月1日までに提出し、同年の委員会で承認を得ることでなされます。
それに対して「重大な変更」では前年の2月1日までに推薦書を提出し、ICOMOSやIUCN(国際自然保護連合)といった諮問機関の調査・報告を受けて1年半の審議に付されます。
つまり、「軽微な変更」はすでに登録されている資産の顕著な普遍的価値を延長・適用すればいいので承認だけですむのですが、「重大な変更」は新しい世界遺産の推薦と同様に顕著な普遍的価値を証明し、1年半のプロセスを踏まなければならないのです。
「世界遺産条約履行のための作業指針」に規定があるので抜粋しましょう。
■登録範囲の軽微な変更
- 163. 軽微な変更とは、資産の範囲に重大な影響を及ぼさず、その顕著な普遍的価値に影響を与えない変更のことをいう。
- 164. 締約国が世界遺産一覧表にすでに登録されている資産の境界線に関する軽微な変更を要望する場合は、2月1日までに事務局を通じて委員会に要請を行うこと。この場合、事務局は関係諮問機関に助言を求めること。委員会は、変更を承認するか、要請された境界線の変更が資産の登録範囲の拡張となるような重大な変更であると判断した場合は、新規登録推薦の手続きが適用される。
■登録範囲の重大な変更
- 165. 締約国が世界遺産一覧表にすでに登録されている資産の境界線に関する重大な変更を要望する場合は、締約国は新規登録推薦と同様の手続きをとること。この再登録推薦書の提出期限は2月1日とし、第168条に示す手続きとスケジュールに則って1年半の審査サイクルに付される。本規定は、登録範囲の拡張にも縮小にも同様に適用される
日本の世界遺産では2010年に「石見銀山遺跡とその文化的景観」が軽微な変更を承認されており、「平泉-仏国土[浄土]を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」は暫定リストに記載して重大な変更を行う準備をしています。
来月、第40回世界遺産委員会で登録物件・範囲変更物件が出そろったら報告します。
楽しみですね!
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