世界遺産NEWS 16/03/18:所有権で揺れるコルドバのメスキータ

3月中旬、メスキータの所有権を主張していた教会側に対し、コルドバの自治体はその要求を却下する声明を出しました。

それによると、1984年に世界遺産に登録されて以来、世界のすべての個々人が所有者であるということです。

 

コルドバのメスキータはぼくがもっとも感銘を受けた世界遺産のひとつです。

モスク部分・円柱の森のほの暗さに込められた荘厳さ――

教会部分・中央礼拝堂のまばゆい光の神々しさ――

ふたつが見事に融合した本当に希有な建物です。

日本では「メスキータ」と呼ばれていますが、現地ではたくさんの名称が知られています。

まずは "La Mezquita de Córdoba" で「コルドバのメスキータ」。

"Mezquita" はアラビア語のマスジッド(Masjid)を語源とするスペイン語でモスクを意味します。

 

ガイドブックやパンフレットなどでは "Mezquita-Catedral de Córdoba"「コルドバのモスク-大聖堂」という表記もしばしば見掛けます。

GoogleマップやWikipediaではこちらの表記ですね。

 

現在メスキータは教会として使われていて、モスクとしては使用されておらず、イスラム教徒がモスクとして礼拝することは禁じられています。

教会としては "Santa Iglesia Catedral de Córdoba" あるいは "La Catedral de Córdoba" なので、「コルドバの聖司教座聖堂」「聖コルドバ大聖堂」といったところでしょうか。

そして教会がメスキータの公式サイトを運営しているのですが、数年前に名称を "Mezquita-Catedral de Córdoba" から "La Catedral de Córdoba" に変更しています。

 

実はここ数年、「メスキータ」あるいは「モスク」という言葉を排除する動きが顕在化して、コルドバで大きな論争になりました。

公式サイトはもちろん、パンフレットやフライヤー、チケットなどから「モスク」の文字が次々と削られたようです。

こうした動きに対してアンダルシア州政府は「正しく歴史が伝えられない」と懸念を表明しています。

 

この話に入る前に、少し歴史を遡ってみましょう。

 

メスキータは785年にアブド・アッラフマーン1世が建設したモスクですが、1236年にレ・コンキスタ(国土回復運動)を進めるキリスト教徒がコルドバを占領すると、地元の司教に引き渡されて教会に転用されました。

当初、モスクを壊して教会を建てる予定だったようですが、あまりにすばらしかったことから手を付けることができなかったと伝えられています。

 

16世紀にスペイン王カルロス1世(神聖ローマ皇帝カール5世)が改築を命じますが、建築家エルナン・ルイスはこの傑作を守るため、全体を保ちつつ、中央部分のみを改修してゴシック様式とルネサンス様式が混在する大聖堂を増築しました。

下の航空写真を見ると、建物の中に十字架状の教会が組み込まれているのがわかりますね。

2006年、メスキータを管理していたコルドバのムニシピオ(市・群・区のような自治体)はこの建物を "Mezquita-Catedral de Córdoba" の名とともに所有者として登録しました。

これに対して大司教を中心とする教会側も「以前の宗教的な寄進は所有権の移動を意味しない」として建物全体の所有権を主張しました。

そして名称から「モスク」の文字を削除する動きがはじまったようです。

 

2013年には市民グループが立ち上がり、メスキータが教会に渡らないよう署名活動を行いました。

そして35万以上の署名をコルドバに提出し、メスキータを守るために教会ではなく自治体が管理することを要請しました。

また、Googleマップ上の名称が "Mezquita-Catedral de Córdoba" から "La Catedral de Córdoba" に変更されたことに対し、Googleにも嘆願を行って名称を再度変更させています。

先の地図でも確認できますね。

 

そして議会はこの3月中旬、メスキータが「いかなる組織にも個人にも属さない」とし、「1984年に世界遺産リストに登録されて以来、世界のすべての市民が所有者なのです」と声明を発表。

教会の主張に対しては「法的な根拠がない」として明確に却下しました。

教会はいまのところ沈黙を守っているとのことです。

 

複雑な歴史をたどってきただけに、なかなか難しい問題ですね。

名前を変更した教会側も、「以前はモスクとして使われていましたが、現在は教会としてのみ使用されています。モスクではありませんから、教会の名に変えるのは自然です。私たちは歴史を否定しようとしているわけではありません」と述べています。

実際ミサなども行われているので、使用者から見れば明確に教会なのでしょう。

 

この記事を書くにあたっていくつかのサイトを参照しましたが、About Islamの記事が世界遺産に関する言及の引用で文章を閉じています。

英語部分を抜粋するのでぜひ訳してみてください。

 

This, he adds, is not just because the site has since 1984 been a Unesco world heritage site “of exceptional universal value” and therefore cannot be owned by anyone.

Citing Roman law, Lavela argues that the site’s true owners “are each and every citizen of the world from whatever epoch and regardless of people, nation, culture or race”.

 

世界遺産条約の精神は世界中に広がっているようです。

 

 

[関連サイト]

コルドバ歴史地区/スペイン

Santa Iglesia Catedral de Cordoba(教会の公式サイト。英語/スペイン語)

Cordoba Rejects Church Claim to Own Mosque(About Islam記事)

 


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