世界遺産NEWS 15/08/27:モヘンジョダロで水害が深刻化

このところインダス川流域で降水量が急増しているようです。

もともと上流域以外は乾燥地帯で、「砂漠を流れる大河川」という条件がメソポタミア文明のチグリス=ユーフラテス川やエジプト文明のナイル川、黄河文明の黄河と一致しており、これがインダス文明を育むきっかけとなりました。

世界遺産「モヘンジョダロの遺跡群」
世界遺産「モヘンジョダロの遺跡群」。下は沐浴場、上の塔はクシャーナ朝時代のものではるかに後代のもの。(C) Saqib Qayyum

ところがこのところの降水量の増加によりインダス川流域で洪水や地下水脈の上昇が確認されています。

雨や流入してきた水で日干しレンガが侵食されるといった被害がさまざまな遺跡で続出しているほか、なかには洪水に流されてしまった遺跡もあるようです。

 

パキスタンの世界遺産「モヘンジョダロの遺跡群」も例外ではありません。

モヘンジョダロは紀元前2,500~前1,500年、いまから3,500~4,500年前の遺跡です。

そんなはるか昔の古代遺跡なのですが、区画整理された街並みはとても美しく、下水道や汚水処理施設が完備されていたことで知られています。

下水道がパリに整備されたのは18世紀半ば、ロンドンで19世紀後半ですから、驚くべきことですね。

 

そんなモヘンジョダロですが、7月にシンド州を襲った大雨で雨水が流入して大きな被害を受けました。

遺跡の一部が破壊されただけでなく、日干し煉瓦の街並みは雨に弱く、侵食によって強度が大幅に落ちているということです。

世界遺産「モヘンジョダロの遺跡群」
見事に区画整理された街並み

モヘンジョダロの水害はいまにはじまったことではなく、私が訪ねた十数年前も「雨が増えている」という話を聞きました。

そのときの話では、モヘンジョダロの地下にはさらに古い時代の遺跡が眠っていることがわかっているのですが、地下水が上昇しているため掘り出すことができないそうです。

排水ポンプを使った発掘が試みられたこともありましたが、長年水に浸かっているため掘り出すと同時に崩壊してしまうようです。

もしかしたら世界最古の文明跡となるかもしれない貴重な遺跡が、未知のまま地下で朽ち果てようとしているのです。


こうした水害に対してUNESCO(ユネスコ。国際連合教育科学文化機関)は20世紀末に800万ドルをかけて洪水対策工事を行い、1997年に5つの堤防が完成しました。

しかしながら水害は当初の予想を上回る形で進行しているようです。


その原因といわれているのが気候変動です。

2013~2014年に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書では、1880~2012年の間に世界の平均気温は0.85度上昇し、中緯度地域では降水量が増加していることが確認されており、主因を人為的な温室効果ガスの排出としています。

世界遺産「モヘンジョダロの遺跡群」
左と中央の塔のような建物は井戸

実はモヘンジョダロは過去7度ほど、大きな洪水被害にあったことがわかっています。

洪水で滅んだ都市遺跡の上に新たな都市を築いたために遺跡は重層構造となっており、上の写真のように井戸がどんどん積み重なって高くなってしまっているわけです。

 

もしかしたらモヘンジョダロはいままさに8度目の崩壊の危機に直面しているのかもしれません。


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