世界遺産NEWS 15/08/01:南京事件・慰安婦登録に対し反論書簡

UNESCO(ユネスコ。国際連合教育科学文化機関)の三大遺産事業に数えられている「世界の記憶(世界記録遺産/ユネスコ記憶遺産)」ですが、10月4~6日にUAEのアブダビにて第12回IAC(国際諮問委員会)が開催されます。

現在世界の記憶には301件が登録されていますが、このIACで新しい物件の登録の可否が決まります。

世界の記憶やこれまでの登録物件については下記を参照してください。


UNESCO遺産事業リスト集 3.世界の記憶リスト

今回、各国から計87件が推薦されており、日本からは下記2件がエントリーしています。

 

○東寺百合文書

 Archives of Toji temple contained in one-hundred boxes

○舞鶴への生還 -1945~1956シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録-

 Return to Maizuru Port - Documents Related to the Internment and Repatriation Experiences of Japanese (1945-1956)

 

そして問題となっているのが中国が推薦している以下の2件です。

 

○大日本帝国軍の性奴隷「慰安婦」に関するアーカイブ

 Archives about "Comfort Women": the Sex Slaves for Imperial Japanese Troops

○南京虐殺のドキュメント

 Documents of Nanjing Massacre

 

第39回世界遺産委員会で世界遺産リストに登録された「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」では、韓国と中国が「強制労働が行われた場所であり世界遺産にはふさわしくない」として反対に回って大きなニュースになりました。

 

今回は日本の複数の民間団体が7月30日にUNESCOを訪れて、登録反対を表明する書簡と資料・反対署名の名簿を手渡して登録を回避するよう申し入れたということです。

 

書簡には、南京事件は中国国民党が日本軍の残虐性を強調するためのプロパガンダとして創作したものであり、慰安婦については日米学会での議論を紹介したうえで戦時下の売春婦だったと結論しているようです。

そして民族主義の下で歪められた事実を政治的に利用することに対し、強い反対を表明しています。

 

慰安婦に関するアーカイブの登録内容は、日本軍によって建設された慰安所などの写真です。

中国の推薦書を読むとハッキリと "sex slaves" と記されており、日本の反論を予想してか河野談話を引用して日本政府の関与を示しています。

また、アメリカやオランダ、カナダなどの議会が慰安婦問題について議決している内容も簡単に記されています。

 

南京事件の登録内容は、当時の写真や日記、「中国版アンネの日記」として知られるアメリカ人神父ジョン・マギー氏のフィルム、日本兵の供述書や軍事法廷の裁判資料などで、損傷された遺体を除いて20万人以上の犠牲者を出し、2万人以上の女性がレイプされたと書かれています。

 

実はこれまでにも日本軍による戦時行為が世界の記憶に申請されたことがありました。

2013年に審議されたシンガポールの「シンガポールの日本占領下における歴史証言コレクション "Japanese occupation of Singapore oral history collection"」です。

録音フィルムの登録申請でしたが、戦後かなりの時間を経てからの記録ということで客観性に欠けるという理由で登録されませんでした。

 

そもそも、世界の記憶の目的は世界的に価値のある重要な史資料の最適技術による保存促進、一般公開支援、記憶遺産の世界的な普及啓発です。

今回の反対運動は事実と異なる南京事件や慰安婦の記録がデジタル化され、公開されることに対する反発から来ています。

民間団体による反対運動ですが、政府による活動も求めていくようです。

 

徴用問題に揺れる世界遺産の「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」と暫定リスト記載の「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」、韓国から反対を受けている2017年の世界の記憶候補「知覧に残された戦争の記憶 -1945年沖縄戦に関する特攻関係資料群-」、日本が反対している今回の2件と、UNESCOの遺産事業を巡って日中韓3か国が激しい駆け引きを展開しています。

 

かつてUNESCOのイリーナ・ボコバ事務局長は「明治日本の産業革命遺産」に反対する韓国に対して「世界遺産登録は関係国の分裂と葛藤ではなく、統合を導く役割をしなくてはならない」と回答しています。

ところが、遺産事業が政治的な対立に利用されているこの現実。

日本もその当事者なのです。

 

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