私的旅行術 現地編2:海外でのインターネットの使い方
現地編の第2回はPCやスマートデバイスを利用したインターネットの接続方法を紹介します。
スマホのモバイルデータ通信とWi-Fiの違い、携帯電話回線とホテルやレストランのWi-Fiの違い等々、インターネット接続の基礎知識にも触れていきます。
なお、海外での電話の使い方については前回の記事を参照ください。
○本記事の章立て
- 通信回線の基礎知識
- 海外でインターネットに接続する方法
- インターネット規制について
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■通信回線の基礎知識
○PCやスマートデバイスの各種通信機能
いまの時代、スマホ(iPhoneを含むスマートフォン)やiPadなどのスマートタブレット、iPod touchなどのスマートデバイスのいずれも持たない旅行者はほとんど見掛けなくなりました。
PCでさえ多くの旅行者が海外に持ち出しています。
インターネットができればなんでも検索できますし、交通手段やホテル・レストランの予約も可能。
地図アプリを使えば自分の居場所や目的地も表示してくれるし、電話やメール・チャットもできてしまいます。
一度使うと使わない旅が考えられなくなってしまうほど便利です。
ぼくの旅のスタイルもずいぶん変わりました。
まずは基本的な通信機能について解説していきましょう。
PCやスマートデバイスにはさまざまな通信機能が付いています。
主なものをざっと取り出してみましょう。
○PCやスマートデバイスの主な通信機能
- 携帯電話回線
1. 音声通話(電話)
2. モバイルデータ通信(インターネット)
- Wi-Fi(ワイ・ファイ)
- 有線LAN(ラン)
- Bluetooth(ブルートゥース)
- テザリング
このうち、特にスマホを持っている人が理解しておきたいのがモバイルデータ通信とWi-Fiの違いです。
○携帯電話回線のふたつの機能、音声通話とモバイルデータ通信
携帯電話回線はスマホや携帯電話を使う際に利用される回線です。
2G、3G、4Gといった種類がありますが、この "G" は "Generation"、つまり世代を示し、3Gは第三世代の携帯電話回線という意味になります。
当然新しい方が通信速度が速く、最近では4Gに近いLTEが普及してきています。
この回線は非常に広範囲にわたって利用できるのが特徴で、街中であれば日本全国ほとんどの市町村をカバーし、山間部でもかなりの場所まで利用することができます。
そしてスマホの場合、携帯電話回線を利用してふたつの通信を行っています。
ひとつが音声通話、つまり電話です。
もうひとつがインターネットへの接続で、これをモバイルデータ通信と呼びます。
○Bluetoothとは何か?
BluetoothはPCやスマホとスピーカーやヘッドフォン、マウス、キーボード等の周辺機器をワイヤレスでつなぐための無線通信規格のひとつです。
基本的に1対1対応で、このPCにこのマウス、このスマホにこのヘッドフォンといった具合に1対1でペアリング(対応)させて使用します。
電波は弱く通信速度も遅いので、遠く離れてしまうと使うことができません。
○LAN、Wi-Fiとは何か?
家や会社、レストラン、ホテルなどがADSLや光回線と契約するとインターネットが利用できるようになります。
普通は複数のPCやスマートデバイスが接続できるようにLAN(Local Area Network)と呼ばれるネットワークを作り、このLANに接続することでインターネットを利用できるようにしています。
光回線などの外部回線とLANを結ぶ装置をルーターと呼び、このルーターを介してインターネットと接続します。
LANには主にふたつの種類があります。
- 有線LAN:ケーブルを使って接続するもの
- 無線LAN:無線通信で接続するもの
そしてWi-Fiは無線LANの一種です。
少し前まで、ホテルの各部屋にはLANケーブルが延びていて、ここにPCを接続してインターネットにアクセスしていました。
しかし、現在ではほとんどのレストランやホテルがWi-Fiを利用しています。
ホテルとしては無線を使えばケーブルを各部屋まで延ばす必要がないので安価かつ簡単にインターネットを導入できるからです。
Wi-Fiはこうしてホテルやレストラン・駅・空港・官公庁・図書館・会社といった店舗や施設あるいは自宅で使うための無線LANです。
会社や自宅では利用者が限られていますが、ホテルや駅などでは不特定多数の利用者に開放されています。
このように一般に開放されたWi-Fiアクセスポイントを公衆Wi-Fiといいます。
ただ、公衆Wi-Fiといっても使用を利用者に限るために、パスワードをかけて保護していることも少なくありません。
こうした場合、パスワードを教えてもらって利用することになります。
○モバイルデータ通信と公衆Wi-Fiの違い
モバイルデータ通信ではスマートデバイスと契約している携帯電話会社の携帯電話回線を直接利用してインターネットに接続します。
自分が契約している回線を使うわけですから当然料金が掛かります(料金が掛からない契約の場合はその限りではありません)。
その代わり携帯電話回線を利用するので利用範囲が非常に広く、電話が掛けられる場所ならインターネットも利用可能です。
よほど辺鄙な場所に行かない限り、インターネットが使えると考えていいでしょう。
それに対して公衆Wi-Fiはそれぞれの施設や店舗が用意した無線LANを利用します。
無料で提供している公衆Wi-Fiを使えばお金は掛かりません。
ただ、無線LANなので無線が届く範囲、たいていは施設・店舗とその周辺に限られます。
また、回線のスピードは設備と使用状況によってまったく異なります。
○テザリングとは何か?
スマホなどのスマートデバイスをルーターとして利用し(つまりスマートデバイスを使ってLANを構築し)、そのスマートデバイスを介してインターネットに接続することをテザリングといいます。
テザリングを行うスマートデバイス自体は携帯電話回線のモバイルデータ通信やWi-Fiを使い、そのスマートデバイスとPCなどの外部機器はWi-FiやBluetooth、USBなどで接続します。
それぞれWi-Fiテザリング、Bluetoothテザリング、USBテザリングなどと呼ばれます。
たとえば海外でSIMカードを購入して設定を行うと、スマホで音声通話やモバイルデータ通信ができるようになります。
その状態でWi-Fiテザリングの機能をオンにするとスマホからWi-Fiの電波、BluetoothテザリングをオンにするとBluetoothの無線信号が発信されます。
これを利用してPCなどでインターネットが利用できるようになるわけです。
Wi-Fiテザリングの場合、スマートデバイス側でパスワードが設定されるので、外部機器にこのパスワードを入れて利用します。
外部機器は複数あっても構いませんが(上限はあります)、スマートデバイスのバッテリーはかなり消費してしまいます。
Bluetoothテザリングの場合は1対1でペアリングを行うのでひとつの機器しか使えません。
スマートデバイスの電力消費は小さいですが、通信速度はWi-Fiに比べてかなり遅くなります。
オススメなのはUSBテザリングです。
スマホとPCなどをUSBケーブルで接続するもので、スマートデバイスが電波を発信するわけではないのでバッテリーをそれほど消費しませんし、速度も早いです(条件によって変わります)。
USBケーブルを持っていく必要がありますが、充電するときのケーブルでできることが多いです。
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■海外でインターネットに接続する方法
インターネットに接続するには主にふたつの方法があります。
- 携帯電話回線を使う
- 施設や店舗のLANを使う(公衆Wi-Fiを含む)
それぞれに複数の方法があるので、順番に見ていきましょう。
○1.携帯電話回線を使ってインターネットに接続する方法
携帯電話回線を使うメリットは、利用できる範囲が広く、ほとんどどこでもインターネットに接続できるところです。
デメリットは、どのような方法でも料金が掛かる点でしょう。
・1-1. キャリアの海外パケット定額プランを利用する
キャリア(大手携帯電話会社)が提供しているサービスに申し込む方法です。
キャリアが提携している海外の携帯電話会社の回線が使えるようになるので、自分のスマホや携帯電話をそのまま利用することができます。
多くの場合、1日1,000~3,000円×実際に使用した日数(日本時間)といった料金が必要で、事前に契約してアプリをダウンロードして使用します。
定額プランなら予想外の料金を請求されることがないので安心です。
テザリングの機能があれば、スマホを介してPCなどでインターネットに接続することができたりもします。
スマホ以外に何も持っていく必要がない手軽さがメリットですが、1日あたりの料金は安くありません。
また、設定等を間違えると高額請求の可能性がないわけではないというリスクもあったりします(設定方法については次回「私的旅行術 現地編3:海外でのスマホ&Wi-Fiの使い方」で解説します)。
・1-2. モバイルWi-Fiルーター/ポケットWi-Fiをレンタルする
モバイルWi-FiルーターあるいはポケットWi-Fiは、現地の携帯電話回線に接続してインターネットを使用できるようにする機器です。
このルーターが基地となってWi-Fiの電波を発信し、スマホやPCでその電波を受信してインターネットに接続します。
つまり、ホテルやレストランがやっているWi-Fiサービスを自分でやる形になります。
Wi-Fiは無線ですから、受信できるデバイス、たとえばスマホやPCがあれば同時に使用できますし、友人や家族で共同で使うことも可能です(ただし、8台までなどと上限は決まっています)。
モバイルWi-Fiルーターは会社や行き先・日数等々によって1日680円~などと値段が設定されています。
たいていはルーターの電源をONし、回線を選んでパスワードを入れる程度で使用できます。
海外パケット定額プランに比べて安価で、設定ミスによる高額請求もありませんし、複数の機器も使えます。
ただ、小さいとはいえ機器を持ち運ぶ必要がありますし、電源に接続しているか充電されている状態でないと使えないというデメリットもあったりします。
・1-3. 現地のSIMカードを利用する
SIMフリーのスマートデバイスや、モバイルWi-Fiルーター(ポケットWi-Fi)に現地で入手したSIMカードを入れ、現地の携帯電話回線を使う方法です。
途上国では電話やネットがとても安かったりするので国によっては値段的なメリットが非常に大きな方法です。
また、事前に支払いを行うプリペイド式のSIMカードであれば、使いすぎることがない点も安心です。
現地語と英語等の解説しかないことが多く、設定もやや複雑ですが、店によってはカードを購入すれば設定までお願いできたりします。
現地の携帯電話回線が利用でき、スマートデバイスに機能があれば、テザリングが可能になります。
すでに解説したように、テザリングはスマートデバイスを介してインターネットに接続する方法で、たとえばWi-Fiテザリングを行えば、Wi-Fi機能を持つPCやスマートタブレットでインターネットが利用できるようになります。
SIMカードやSIMフリー等々については前回の記事「私的旅行術 現地編1:海外での電話の使い方」の「SIMフリー・デバイスの使い方」も参照してみてください。
○2.施設や店舗・街中のLANを利用する方法
空港や駅・公共施設のWi-Fiスポットや、ホテルやレストラン等の施設・店舗のWi-Fiサービスや有線LANを使用する方法です。
こうしたスポット・施設・店舗は無料でWi-Fiを提供していることも多く、そんな場所では料金なしでインターネットに接続することができます。
最近では途上国のかなり田舎の方に行ってもWi-Fiがないホテルはあまり見掛けませんし、ホテル予約サイトなどでWi-Fiの有無を確認することができたりもします。
ですからホテルにいるときや食事をしているときにネットができればいいという人であれば、無料のWi-Fiサービスだけで事足りるでしょう。
ただ、中国などごく一部の国や施設・店舗のWi-Fiサービスは携帯電話のSMSメール(ショートメッセージ)による認証が必要であることがあります。
この場合は携帯電話番号等を登録し、送られてきたSMSメールに書かれているパスワードを入力して接続します。
つまり、Wi-Fiを使う前に携帯電話回線が通じている必要があるわけです。
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■インターネット規制について
国によってはインターネットに規制を設けている場合があります。
もっとも有名なのは中国(香港とマカオを除く)で、Google、LINE、Twitter、Facebookなどに接続することができないほか、反中国・反共産党的な言葉の検索が封じられています。
中東や中央アジアのSNS規制やタイのアダルトサイト規制など、なんらかの規制を行っている国は少なくありません。
反対に、サイト側で海外からのアクセスを制限している場合もあります。
たとえば日本のTV局はドラマなどのコンテンツをネット上で提供していますが、多くの場合、海外から視聴できないようになっています。
また、5チャンネルのように海外から書き込めないように設定しているサイトもあります(一部例外を除く)。
このような場合、VPNを使うと回避できることがあります。
詳細な解説は避けますが、VPNは "Virtual Private Network" の略でバーチャル(仮想的)なネットワークを示します。
日本のVPNに接続すると日本のネットワークに含まれることになるため、海外規制をくぐり抜けて接続できるようになるわけです。
ただ、VPNに対して対抗措置を敷いている場合は接続が難しくなります。
中国はこのVPNの規制を宣言しているため、今後は回避が難しくなるかもしれません。
無料で公開されているVPNサイトを1件、紹介しておきましょう。
スマホやタブレットの場合はVPN GateとOpenVPN Connectのアプリを使うことで利用できます。
詳細はサイトで確認してみてください。
[関連サイト]
VPN Gate(筑波大学による公開VPN中継サーバープロジェクト)
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次回はスマホの使い方・設定の仕方、Wi-Fiの使い方を紹介します。