私的旅行術 現地編1:海外での電話の使い方
私的旅行術 準備編」に続き、「現地編」では現地で使える旅行術の数々を紹介します。
第1回は、海外で電話を使う方法です。
○本記事の章立て
- 国際電話の掛け方、
- IP電話の使い方
- SIMフリー・デバイスとeSIMの使い方
* * *

■国際電話の掛け方
○国際電話の原則
国境を越えて電話を掛ける場合、基本的には以下の番号をプッシュします。
- [国際電話会社番号※]-[発信国の国際電話識別番号※]-[相手国の国番号]-[最初の0を除いた市外局番を含む相手の電話番号]
ただし「※」をつけた2項目については多くの場合、省略できます。
この場合は国番号の前に「+」をつけて次のようにプッシュします。
- [+]-[相手国の国番号]-[最初の0を除いた市外局番を含む相手の番号]
国際電話会社番号は「この電話会社を使うよ」と電話会社を選択する番号です。
KDDIなら「001」、NTTコミュニケーションズなら「0033」といった具合に会社ごとに番号が決まっています。
ただし、どの電話会社を利用するか登録してある場合は省略できます。
携帯電話やホテルなどの固定電話から電話を掛ける場合、すでに会社が決まっていて省略できるケースが多いです(つけても構いません)。
国際電話識別番号は「いまこの国から掛けているよ」と発信国を示す番号です。
日本から掛ける場合は「010」、アメリカからは「011」、タイからは「001」等々と各国に番号が割り振られています。
もっとも、どこから掛けているのかはすぐにわかることなので、この番号も省略できることが多いです。
省略する場合は国際電話識別番号の代わりに「+」をつけます(省略しなくても構いません)。
国番号は「この国に掛けるよ」と相手国を指定する番号です。
日本へ掛ける場合は「81」、アメリカは「1」、タイは「66」といった具合に、こちらも各国に番号が振られています。
そして最後に相手の番号です。
市外局番でも「090」のような番号でも頭が「0」のときは原則、これを取り去ります。
「03-XXXX-XXXX」なら「3-XXXX-XXXX」、「090-XXXX-XXXX」なら「90-XXXX-XXXX」といった具合です。
頭に「0」がない場合はそのまま掛けます。
総合すると、たとえばNTTコミュニケーションズを使って日本からアメリカに電話を掛ける場合は「0033-010-1-0を取った相手の電話番号」をプッシュすることになるわけです。
ただ、前の2項目はほぼ省略できるので、「+-1-0を取った相手の電話番号」でもOKです。
これ以外にもクレジットカードを利用した掛け方など多彩な方法があります。
[関連サイト]
国番号一覧(au)
○日本のスマホや携帯電話を利用する場合
・日本の携帯電話で海外から日本に掛ける場合
日本で契約した携帯電話を海外で使う場合、先の「国際電話の原則」の国際電話会社番号と国際電話識別番号を省略することができます。
その代わり国番号の前に「+」をつけます。
- [+]-[相手国の国番号]-[最初の0を除いた市外局番を含む相手の番号]
日本にいる相手の電話番号が「03-XXXX-XXXX」なら「+81-3-XXXX-XXXX」、「090-XXXX-XXXX」なら「+81-90-XXXX-XXXX」です。
「+」が入れにくかったら発信地の「国際電話識別番号」を入れてもOKです。
つまり、タイから日本に掛ける場合、「+81-3-XXXX-XXXX」でも「001--81-3-XXXX-XXXX」でも電話が掛かります。
これは海外から別の国に掛ける場合も同様です。
ただ、日本で使っているSIMカードをそのまま使うと国際通話料金等がかかるので、契約している会社と内容を確かめておく必要があるでしょう。
IP電話や海外のSIMカードについては後述、データ通信については次回以降解説します。
・携帯電話で海外の同国内に掛ける場合
日本の国内通話と同様で、普通に電話をすれば掛かります。
国番号等は原則必要ありませんが、一部国番号を必要とする地域もあったりします。
つながらない場合は国番号を付けてみましょう。
ただし、日本の回線を噛ませることになるため国際通話料金が請求されます。
ですから海外旅行に来ている同じメンバーに携帯電話で連絡を取る場合や、海外で現地の旅行会社やホテルに電話をするような場合は注意が必要です。
このような場合は公衆電話やホテルの電話、あるいはIP電話を使った方が割安です。
・日本から携帯電話に電話を掛けてもらう場合
携帯電話が使える状態であれば、着信者が日本にいようと海外にいようとそれまでと同じように電話を掛けることができます。
ただし、着信者が海外にいる場合は着信者に国際通話料金が掛かることが多いので注意が必要です。
着信者の携帯電話が海外の携帯電話会社と契約している場合は発信者に国際通話料金が掛かります(着信者の負担は契約内容によります)。
なお、電話に出なければ通話料金は掛かりません。
・海外におけるSMSの使い方
国境を越えてのSMSは「国際SMS」と呼ばれ、多くの国で使用可能となっています。
受信については日本にいるとき同様で、特に何もしなくても届き、特別な料金も掛かりません。
送信については電話を掛ける方法と同様、[+]-[相手国の国番号]-[最初の0を除いた市外局番を含む相手の番号]などで利用できます。
ただし、送信には国際料金が掛かります。
使用できる国・地域や料金については契約している電話会社に確認を取ってください。
* * *
■IP電話の使い方
○IP電話とは何か?
無料、あるいは格安の通話ができる「IP電話」が普及してきました。
SkypeやLINEの無料通話、楽天コミュニケーションズのSMARTalkやブラステルのMy 050、ケイ・オプティコムのLaLa Callなどが有名です。
IP電話は通信の全体あるいは一部にネット回線を使った電話のこと。
IPは "Internet Protocol" の略で、VoIPという音声符号化技術を使って声をデータに変えて通信するものです。
ネット回線を100%使うIP電話の場合、ネットをしているのと変わらないので通話料金は掛かりません。
SkypeやLINEの無料通話はこうした仕組みで、登録している人同士なら距離に関係なく無料で通話できます。
一部に電話回線を噛ませる場合、一部にあたる部分の通話料金が掛かります。
たとえば、SkypeやLINE、SMARTalkでPCやスマホから固定電話や携帯電話に電話を掛ける場合、基本的にはネット回線を使いますが、最後の交換局から固定電話・携帯電話までは電話回線を使用します。
このため国内の市内通話料金ほどが必要になります。
その代わり、IP電話会社と契約すれば050ではじまる自分の電話番号を持つこともできますし、反対に相手の固定電話や携帯電話から自分のPCやスマホに電話を掛けてもらうことも可能です。
最大の欠点は、ネット環境がないとまったく使えない点です。
なんらかの方法で常時ネット環境を用意できる人(モバイルWi-Fiルーターや海外パケット定額サービス、現地のSIMカード等を利用する人)、あるいはつねに電話が通じている必要がない人(ホテルのWi-Fiだけでよい人など)には便利な方法だと思います。
メリット・デメリットを羅列してみましょう。
○IP電話のメリット
- 通話料が無料、あるいは格安
- 海外から固定電話や携帯電話に掛けても市内通話料金ほどで使えるし、その逆も同様
- 無料通話については工事も契約も不要で、ソフトやアプリのダウンロードとID&パスワード設定程度ですぐに使える
- IP電話でも電話番号を持つことができる(有料。後述)
- IP電話の電話番号は国や地域・機種、それらの変更等の影響を受けない
- ビデオ通話やビデオ会議などが簡単に利用できる(できないこともある)
○IP電話のデメリット
- ネット環境がないと使えない
- 停電時には使えない
- 移動中の通話に弱い
- 通信速度が遅いと音質が劣化したり途切れたりする
- 110や119などの緊急通報や0120のフリーダイヤルなどに対応していないことが多い(対応している場合は海外からでも使える)
- 近距離の通話については割安にならない
- SMS(ショート・メッセージ・サービス)がない=SMS認証が行えない
○有料IP電話について
有料のIP電話サービスが増えていますが、これを利用するとネット環境さえあれば普通の電話に近い感覚で使えるようになります。
○有料IP電話でできること
- 電話番号が持てる
- 同じIPサービス同士なら無料で通話できる
- PCやスマホから相手の固定電話や携帯電話に、距離に関係なく市内通話料金ほどで電話が掛けられる
- 相手の固定電話や携帯電話から自分のPCやスマホに、距離に関係なく市内通話料金ほどで電話を掛けてもらえる
一例ですが、ぼくはSkypeが提供するSkype番号を利用しています。
このため050ではじまる電話番号を持っていて、インターネットさえつながれば世界のどこからでも日本の友人の携帯電話やオフィスの固定電話に格安で電話を掛けることができます。
逆に、日本の友人や家族が海外にいるぼくに格安で電話を掛けることもできるわけです。
緊急時は携帯電話、普段はIP電話といった具合に使い分けてもよいかもしれません。
[関連サイト]
LaLa Call(ケイ・オプティコム)
My 050(ブラステル)
Skype番号(Skype)
SMARTalk(楽天コミュニケーションズ)
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■SIMフリー・デバイスとeSIMの使い方
○SIMカードとは何か?
SIMカードは "Subscriber Identity Module Card"(加入者識別モジュール・カード) のことで、スマホや携帯電話などのモバイル端末に入っているICカードを示します。
加入者の識別番号や電話番号、SIMカードのシリアル番号などの情報が入っていて、みなさんが電話を掛けると発信者が誰で電話番号がいくつでどのSIMカードを使っているのか、挿入したSIMカードが情報をやりとりするわけです。
SIMカードの大きさには標準SIM・マイクロSIM・ナノSIMの3種があり、小さなものはアタッチメントで対応可能です。
また、ネット接続などに使うデータ通信専用SIM、電話も掛けられる音声通話付きSIMなどといったタイプも存在します。
一般的なSIMカードは物理的なICカードで、特にナノSIMが普及しています。
しかし、重要なのはICカードに記録されているデータなので、書き換えられるようにすることもできるはずです。
これを可能にしたのがeSIMで、後述します。
○SIMロックとSIMフリー
SIMカードに加入者識別番号や電話番号が登録されているわけですから、SIMカードを同規格の別の携帯電話に移せばその携帯電話に電話番号が移るはずです。
これをさせないように携帯電話にロックを掛けることを「SIMロック」といいます。
以前、キャリア(自社で通信回線網を持つ大手の携帯電話会社)はすべての携帯電話にSIMロックを施していました。
しかし、2015年にSIMロックの解除が原則義務化され、有料だったり期間等の条件が付くことがあるもののSIMロックの解除が可能になりました。
SIMロックを解除した状態を「SIMフリー」と呼びます。
こうしたSIMフリー端末を使えば電話番号を変えずに機種変更ができるほか、海外で現地のSIMカードを買って挿入したり、eSIMを利用すれば、その国の電話として使うことができるようになります。
ただし、SIMフリーにしたからといってどのSIMカードでも使えるようになるわけではありません。
通信規格と周波数帯が電話会社側とスマホ・携帯電話側と一致しなければなりません。
ですから日本で購入したスマホに海外で購入したSIMカードを入れて使ったり、逆に海外で購入したスマホに日本のSIMカードを入れて使うためには、この2点を事前に確認しておく必要があるわけです。
この辺りは国や携帯電話会社、スマホによって事情が変わってくるので、関係各社に問い合わせてみてください。
最近はこの辺りもずいぶん改善されて手軽になっています。
○格安SIM、格安スマホ
NTT docomoやau、SoftBankなどは通信回線網を自社で持っています。
こうした大手の携帯電話会社はキャリア、あるいはMNOと呼ばれます。
MNOは "Mobile Network Operator" の略で、モバイル・ネットワークのオペレーター(移動体通信事業者)という意味です。
これに対して通信回線網をキャリアから借り受け、通信サービスだけを行う会社をMVNOと言います。
"Mobile Virtual Network Operator" と「バーチャル」がついているので仮想移動体通信事業者です。
MVNOからさらに通信サービスを借りている業者はMVNAやMVNEと呼ばれます。
MVNOは免許や回線網・維持費が不要で、サービスも最低限に抑える代わりに、キャリアに比べて格安で通信サービスを提供しています。
MVNOが提供している格安のSIMカードは「格安SIM」、格安SIMを利用したスマホは「格安スマホ」と呼ばれます。
○格安SIMのメリット
- 月額料金が安い
- 2年縛りなどの縛りが緩い
- 契約プランが多彩
- スマホや携帯電話を替えてもSIMカードを移せば電話番号が変わらない
- 海外で現地SIMカードが使いやすい
○格安SIMのデメリット
- 通話料金は安くない
- サービスがキャリアほど手厚くない
- 通信状態や通信速度がキャリアほど安定しない
- 端末代金の割引きがない
- データ通信等の契約プランが複雑
- 対応しているSIMカードとスマホ・携帯電話の関係が複雑
- キャリア特有のサービスが使えない(@docomo.ne.jpのようなキャリアメールや迷惑メール対策、年齢認証等)
その名のとおり月額料金の安さで注目されることが多い格安スマホですが、最初からさまざまなSIMカードや携帯電話会社に対応するよう設定されている点もひとつの特徴です。
不特定多数の国に行く人には大きな魅力です。
○海外のSIMカードを使う方法
現地でSIMカードを手に入れて装着・設定すれば、そのスマホや携帯電話を国内の電話機として利用することができるようになります(eSIMを利用すれば買いに行ったり脱着する必要もないわけですが、これについては後述します)。
特に途上国の場合、非常に割安な料金でどこでも快適に電話やネットができるとあって人気が高まっています。
といっても、SIMカードをいじらなくても日本のスマホや携帯電話を海外に持っていってそのまま使うこともできます。
「ローミング」と呼ばれる機能で、事前に申し込みや設定をしておけば、スマホや携帯電話が通信回線を自動的に(あるいは手動で)選んで接続してくれます。
ただ、何も考えずにローミングで接続して電話を掛けたりネットを利用するのは危険です。
通話の場合は国際通話料金が請求されますし、最近は減ったとはいえインターネットの場合は「パケ死」と呼ばれる非常に割高な請求をされる可能性があります。
このため国際ローミングを避ける人も少なくないのですが、この辺りは「私的旅行術 現地編3:海外でのスマホ&Wi-Fiの使い方」で解説します。
これに対し、現地のSIMカードを使えばその国の国内通話料金になるわけですし、事前に料金を支払うプリペイド式SIMカードなら使いすぎはありません。
おまけにWi-Fiと違って場所を選ばずインターネットに接続できるので、海外でSIMカードを使うメリットは少なくないのです。
ただし、通信規格や周波数帯等の条件が合わないと使えないのは先述した通りです。
3Gの場合はあまり気にせず接続できることが多いのですが、4Gや5Gのような高速通信の場合は周波数帯が重要です。
もっとも、最初からSIMフリーのスマホは一般的に多くの周波数帯に対応しています。
特に強いのがiPhoneで、比較的新しいiPhoneのSIMフリー機であれば海外のどこであれほとんど接続可能です。
同様にPixelやASUSなどのSIMフリー機も海外に強い仕様となっています。
SIMカードは先進国・途上国を問わず至る所で販売しています。
使い方が現地語と英語で書いてあるので、その通りに設定します。
たいてい店員にスマホや携帯電話を渡せば設定してくれます。
一度設定すればトップアップ(つぎ足し。リチャージ。リフィル)も簡単です。
オンラインで行ったり、店頭でカードを買い、電話して書かれている番号を入力することでトップアップが完了します。
○eSIMとは何か?
ナノSIMをはじめとするSIMカードは物理的なICカードで、新しいスマホを買ったり、携帯電話会社を替える際にはSIMスロットに新しいSIMカードを装着する必要があります。
しかし、重要なのはICカードに書き込まれているデータなので、データを入れ替えればすむはずです。
これを実現するのが "Embedded SIM"、いわゆるeSIMです。
eSIM対応機の場合、スマホなどの端末本体にSIMの機能が組み込まれています。
新しい携帯電話会社に変更したり、携帯電話会社を加えるときは、ネットでデータをダウンロードし、インストールして設定します(つまりネット回線が必要です)。
SIMカードを買いに行ったり、手作業で入れ替える必要がないため、特に海外では便利です。
また、携帯電話会社をアプリ上で手軽に切り替えられるので、複数の国の電話番号を保有したり、電話とデータ通信で会社を替えたりするのも容易です。
さらに、日本で設定の前まで準備しておくことができる点も安心です。
たとえばGoogleが提供するモバイル通信サービス "Google Fi Wireless" の場合、世界の200以上の国や地域において、同一料金・同一設定でSIMカードの入れ替えなどをすることなくインターネットに接続することができます。
契約も店舗を訪れる必要さえなく、すべてネット上で可能です。
現状、日本語サービスがほぼないのが残念です。
ただ、eSIMを利用するためには端末がeSIM対応のSIMフリー機で、使用したい携帯電話会社や料金プランが対応している必要があります。
iPhoneの場合、アメリカで発売中の機種はSIMスロットのないeSIM機に移行しているように、今後はeSIMが主流になると思われます。
[関連サイト]
esimdb(海外旅行者向けeSIM検索・比較サイト)