たびロジー1:あなたは幸せですか?
世界遺産マラウイ湖国立公園のほとりの村。
電気もガスも水道もない小さな小さな村。
人々は突如姿を現した私にトウモロコシでできたチブクというビールをふるまってくれた。
「どこからきたんだ」
「日本だ」
「ジャッキー・チェーン、ブルース・リー、ジェット・リー!」
空手の型を見せると大盛り上がりだ。
あるとき人々は泣きながら歌を歌い、列を作って行進していた。
誰かが亡くなったのだという。
死因はマラリア。
みなが口を開け、鼻からミズを垂らしながら泣きじゃくっている。
しかし、同じ人々が翌日はカラリとして笑い、歌い、語り合っていた。
彼らにとって死は終わりではない。
体は大地へ返り、魂は神秘に帰る。
いつか自分も大地へ返り、神秘に帰る。
本当の意味で、彼らに死は存在しない。
死が存在するのは科学を信仰する唯物論者にとってだけ。
そんなマラウイもどんどん開発が進み、道路や、バスや、電気や、水道が通りつつある。
村の外の人々と知り合うようになると、裸でいることが恥ずかしくなる。
電気や水道がない生活が恥ずかしくなる。
抗マラリア薬というものを知り、マラリアがある程度治せるものだということを知る。
医学的なメカニズムを知り、死後の世界なんて存在しないという思想が広がる。
Tシャツを着るために、電気や水道を通すために、お金が必要になる。
なんとしても死を避けるために、どうしてもお金が必要になる。
彼らに売るものは資源しかない。
動植物や鉱物や自分の体。
こうして労働者が誕生する。
アフリカで驚くのは人々の顔つきだ。
その通りが危険かどうかは歩いている人々の顔つきでわかる。
歩いていると5割以上の確率で強盗にあうというナイロビのストリートの人々の顔。
見ればひと目で危険だとわかる。
リロングウェイでもハラレでもケープタウンでも危険な街の顔はみな同じ。
企業は利益をMAXに保つために給与は生活できるギリギリに設定される。
お金がもっとほしいから人々は村を捨て、都会に出る。
都会に出ても仕事はなく、スラムで暮らすうちに犯罪にまみれる。
金持ちを妬み、羨み、恨む。
多くのアフリカ人は、いまでもとても純朴だ。
だから犯罪にまみれると途端に表情は険しくなる。
罪を罪と認識しているから鬼のような形相になる。
彼らの安い資源は安い食料になり、洋服になり、電子部品になってぼくらの生活を支える。
安い資源を回すことでぼくは数百万円を貯め込んで、旅をする。
あるインド人は言った。
「テレビがほしい。車もほしいな。そして家族においしいものを毎日食べさせてやりたいんだ。
そうすればぼくも幸福になれるんだ」
この夢をほとんど実現している日本人のみなさん。
あなたは幸せですか?