世界遺産写真館25.バガン1(ミャンマー)
バガンはビルマ族初の王朝であるバガン朝(1044~1300前後)の首都として繁栄したエーヤワディー川沿岸の古都です。
主に在家信者が寄進した3,000以上のストゥーパや寺院が立ち並ぶ様は他に類を見ないもので、カンボジアのアンコール、インドネシアのボロブドゥールと並んで世界三大仏教遺跡に数えられています。
「仏教遺跡」といってもアンコールやボロブドゥールのように参拝する人がほとんどいなくなってしまった純粋な遺跡ではありません。
人々はこうしたストゥーパや寺院をいまでも神聖視しており、多くの人々が参拝に訪れる「生きている世界遺産」なのです。
ミャンマーではストゥーパは「パヤー」と呼ばれます(塔身そのものはゼティといいます)。
本来ストゥーパは仏舎利(ブッダの遺灰)を収める仏舎利塔ですが、ミャンマーではブッダの家のような扱いで塔そのものが神聖視されています。
パヤーの建設は大きな功徳とされ、バガン朝の王たちは競うように巨大なパヤーを建設し、民衆もそれにならって財産をはたいてパヤーを建てました。
バガン朝も時代を下るとパヤーから仏像を収める「パトー」と呼ばれる寺院へと変化します。
ストゥーパはパトーの頂上に据えられ、メインは内部に収められた釈迦如来像になりました。
ミャンマーの仏教は主としてスリランカから伝来した上座部仏教で、チベットや中国・韓国・日本に普及した大乗仏教や密教のように多彩な仏像はありません。
しかしながら建築様式は実に多彩で、ストゥーパの中に仏像を収めたパヤーのようなパトーから、マンダラのように点対称の平面プランを持つパトー、ヒンドゥー教のインド北方型・ナーガラ様式の影響を受けたシカラと呼ばれる砲弾形の塔身を持つパトーまでさまざまです。
パヤーやパトーは在家信者が寄進したものですが、上座部仏教は本来、出家した僧が修行を行って解脱を目指す宗教です。
こうした僧たちは「キャウン」と呼ばれる僧院に集まって修行を行っています。
僧は食事を作ることが認められていないので、ミャンマーでは早朝や昼前に僧たちが列をなして托鉢する姿を見学することができます。
数千のパヤーやパトーが立ち並び、そんな中を僧たちが托鉢に出歩き、人々は僧たちに寄進しパヤーやパトーにお参りをする――
聖地バガンでは1,000年前から伝わるそんな暮らしがいまなお繰り広げられています。
■世界遺産データ
バガン
Bagan
ミャンマー
2019年、文化遺産(iii)(iv)(vi)
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次回も引き続きミャンマーの世界遺産「バガン」を紹介します。
なお、ミャンマーの仏教建築については下記も参照してみてください。
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世界遺産と建築23 仏教建築3:上座部仏教編(スリランカ、東南アジア)