世界遺産と世界史4.生命の誕生 先カンブリア時代

生物ってなんだろう?

 

生物の定義は難しくて、厳密には定められない。

でもまぁだいたい以下のような特徴を持てば生物ということになっている。

  • 身体を持つこと(外界と自分を隔てるもの=膜や壁や皮膚があること)
  • 身体を構成するものが入れ替わること(古いものと新しいものを入れ替える代謝があること)
  • 増えること(分裂・複製したり、子孫を残したりできること)
  • 上記を満たしても変わらないこと(代謝したり子供を産んでも身体の特徴が変わらないこと)

たとえば雲や雨。

海の水が蒸発して雲を作り、雲が雨を降らし、雨は川を作り、川は海に注ぐ。

水は増減し、循環を繰り返すけれども生物とは言わない。

上の特徴を持たないからだ。

 

たとえばある種のタンパク質が自分をコピーする機能だけを持っていて次々に増えていくとする。

いまのところタンパク質が増えるだけでは生物とは認められていない。

狂牛病(BSE)やクロイツフェルト・ヤコブ病の原因と言われるプリオンはそんな感じだが、生物ではなく物質と解釈するのが一般的なようだ。

地球上に上のような条件を満たすタンパク質の集合体、つまり生物が現れたのは、だいたい40億年前と言われている。

それらしい化石は35億年前以前のものが発見されている。

 

単細胞生物・真正細菌の一種である藍藻(らんそう)が誕生したのが35億~25億年前だ。

藍藻は光合成することによって酸素を吐き出し、地球の大気を大きく変えた。

「環境を変えて生きるのは人間だけ」なんてことは全然なくて、生物は常に環境を変えながら生きている。

 

そして藍藻は海底に集まって光合成を行い、その上に砂が堆積すると砂の上に出て砂を固めたあと、また光合成を再開する。

このように固められた岩石をストロマトライトという。

シャーク湾
いまも成長を続けているシャーク湾のストロマトライト

オーストラリアの世界遺産「西オーストラリアのシャーク湾(オーストラリア、1991年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x))」では20数億年前に作られたと見られるストロマトライトが発見されている。

シャーク湾の塩分濃度はとても高く、そのためなのか、天敵がいないからなのか、とにかく現在も藍藻によってストロマトライトは成長を続けている。

ストロマトライトは世界遺産「ウォータートン・グレーシャー国際平和自然公園自然(アメリカ/カナダ、1995年、自然遺産(vii)(ix))」や「グランドキャニオン国立公園(アメリカ、1979年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x))」などでも発見されており、先カンブリア時代(後述)には一般的な生物だったようだ。

 

* * *

グランドキャニオン
「グランドキャニオン国立公園(アメリカ、1979年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x))」。6,000万年前に隆起した地層をコロラド川が侵食して彫り上げた大渓谷。積み重なった地層は20億年前まで遡ることができる

話を変えよう。

 

地面を掘って化石を集めていた科学者たちが、ふとあることに気づく。

「新しい地層の化石っていまと変わらんけどさ、古い地層の生き物って変なのが多くね?」

「だよね。大昔にはトカゲがバカでかくなったような生き物がいたっぽい」

「でもさ、もっともっと古い時代になるとヘンテコな貝とか魚みたいなのばっかじゃん」

 

で、いま生きているような生物の化石が出る年代を「新生代」、ヘンテコな貝とか魚の年代を「古生代」、その中間でトカゲの化け物=恐竜が集まる年代を「中生代」と名づけることにした……のかどうか知らないが、そんな感じだろうと思う。

こうした区分けを地質年代と呼び、だいたい以下のように分類されている。

 

■地質年代の区分

  • 冥王代→始生代→原生代→顕生代

 

冥王代・始生代・原生代の3代は古生代カンブリア紀の前の時代(5億4千万年前以前)ということで「先カンブリア時代」と呼ばれている。

そして顕生代は以下のように分類されている。

 

■顕生代の区分  

  • 古生代(5億4千万年前~2億5千万年前)

カンブリア紀→オルドビス紀→シルル紀→デボン紀→石炭紀→ベルム紀

  • 中生代(2億5千万年前~6,500万年前)

三畳紀→ジュラ紀→白亜紀

  • 新生代(6,500万年前~現在)

古第三紀→新第三紀→第四紀

アンモナイト
古生代に生きたアンモナイトの化石。生物が死に、泥などが積もり、身体が腐ったあとの空間に、新たに砂や石や土が入ることで化石ができる。だから化石を構成しているのは鉱物であって、昔の動植物の体組織が残っているわけではない

 

先述したように、生物の形が大きく変わったことからこのような区分がなされることになった。

「生物の形が変わる」というのは、古い生物が死に絶え、新しい生物が取って代わる「大量絶滅」が起こったということだ。

つまり「○○代」とか「××紀」のような区分というのは、生物の大量絶滅の記録でもあるわけだ。

 

では、先カンブリア時代と古生代の間に何が起こったのだろう?

 

多細胞生物が現れたのが10億年前以前。

そして6億年ほど前から古生代がはじまる5億4千万年前辺りに栄えたのがエディアカラ生物群(下の動画参照)と呼ばれる生物たちだ。

巨大な軟体動物の化石が世界各地で見つかっているが、いずれも現代では見られない奇妙な生物ばかり。

しかも突如誕生し、突如絶滅したらしい。

 

一つの原因と考えられているのが、すべての海が凍り付き、地球全体が氷に覆われたというスノーボール・アース仮説だ。

この急激な環境の変化が生物の進化を促した、ということなのかもしれない。

なお、カナダの世界遺産「ミステイクン・ポイント(カナダ、2016年、自然遺産(viii))」ではエディアカラ生物群の化石が多数算出している。

 

このエディアカラ生物群が絶滅したあと、生物は急激に多様化して、現在の動物門のほとんどが出現する。

生物が顕(あらわ)れる時代=顕生代のはじまりだ。

この爆発的な生物の広がりを「カンブリア爆発」といい、顕生代の先陣を切る古生代カンブリア紀がはじまる。

 


エディアカラ生物群のアニメ "Ediacaran biota animation"。

次回紹介するバージェス動物群と比べてみてほしい

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『朝日新聞 世界の扉』記事執筆。『地球の歩き方 MOOK 世界のビーチBEST100』『ノジュール』に旅のスペシャリスト・達人として参加。『PEN』でアフリカの世界遺産執筆。『MONOQLO』世界遺産特集取材協力。『女性セブン』で日本の世界遺産を解説。エクスナレッジ『聖地建築巡礼 世界遺産から現代建築まで、73の聖地を巡る旅』、洋泉社ムック『負の世界遺産』執筆。RKBラジオ、FM TOKYOで世界遺産特集出演。その他企業・大学広報誌等。

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