世界遺産と世界史15.東南&東アジア、アフリカの古代文明

世界遺産「バンチェンの古代遺跡」バンチェン国立博物館
バンチェン国立博物館に収められた世界遺産「バンチェンの古代遺跡」出土の彩陶。謎の文明で、陶器や青銅器は古いもので紀元前3600~前2000年ほどまで遡ることから、黄河やメソポタミアに起源を持たない新たな文明と考える者もいる
バリの棚田群
バリの美しい棚田群。9世紀頃に誕生したスバックという組合組織を中心に稲作を行った

東南アジアのほとんどが熱帯地方に属し、高温多湿。

インドシナ半島内部を除いて多くは熱帯雨林、照葉樹林、そして高地だ。

森林は農業に向かなかったが、高地や平野は非常に適しており、古くから稲作が行われていた。


稲作がはじまった時期は明らかではないが、紀元前3000~前2000年には行われていたらしい。

メコン川に近いタイの世界遺産「バンチェンの古代遺跡(タイ、1992年、文化遺産(iii))」からはその頃の青銅器が発掘されており、紀元前5~後2世紀頃の稲作の跡や石器や土器が発見されている。

 

また、ルソン島の世界遺産「フィリピン・コルディリェーラの棚田群(フィリピン、1995年、文化遺産(iii)(iv)(v))」は総延長20,000kmに及ぶ棚田群だが、その歴史は紀元前3世紀以前に遡り、現在まで2,000年以上にわたって持続可能な農業を実現している。

 

似た世界遺産にバリ島の「バリ州の文化的景観:トリ・ヒタ・カラナ哲学に基づくスバック灌漑システム(インドネシア、2012年、文化遺産(ii)(iii)(v)(vi))」がある。2,000年近く前、水を神として崇めるヴェーダ哲学の影響を受けて誕生したのがトリ・ヒタ・カラナ哲学だ。そして神・人間・自然の調和を尊重し、水を分かち合い、スバックという組合を発達させて農耕を行った。

 

棚田で世界最大規模を誇るのが世界遺産「紅河ハニ棚田群の文化的景(中国、2013年、文化遺産(iii)(v))」だ。ハニ族が1,300年をかけて切り拓いた約3,000もの棚田群が広がっている。


[関連サイト]

コルディリェーラの棚田群/フィリピン

フィリピン・コルディリェーラ、バタッド村の棚田群
「天国への階段」とうたわれる世界遺産「フィリピン・コルディリェーラの棚田群」登録のバタッド村の棚田。人口1,500人の村には電気もガスも水道もなく、機械力にいっさい頼らない生活を2,000年以上も続けている

森林地帯は交通の便が悪く、大きな都市はできなかった。

しかし島嶼(とうしょ)部や海・大河の沿岸部では港を中心とする港市(こうし)が発達した。

紀元前の時代からオリエント-インド-東南アジア-中国を商人たちが行き交っており、このルートは「海のシルクロード」と呼ばれている。

特にベトナム以南は中国よりもインドとの結び付きが強く、ヒンドゥー教や大乗仏教を中心とした文化が広がっている。

 

東南アジアでもベトナム北部は紀元前から中国の支配が続いた。

紀元前111年、漢民族が建てた南越は武帝に滅ぼされ、漢に組み込まれた。

以降1009年に李朝が大越国の国王として冊封(さくほう。後述)されるまで、ベトナム北部は中国の郡として扱われた。

 

大越は李朝→チャン朝(陳朝)→ホー朝(胡朝)と続くが、李朝・チャン朝の首都がタンロン①(昇竜。現在のハノイ)で、ホー朝の首都がタインホア②だ。

※①世界遺産「ハノイ-タンロン王城遺跡中心地区(ベトナム、2010年、文化遺産(ii)(iii)(vi))」

 ②世界遺産「ホー朝[胡朝]の城塞(ベトナム、2011年、文化遺産(ii)(iv))」

 

中国と結び付きのない東南アジア最古の王朝が1~7世紀に栄えた扶南(ふなん)だ。

メコン川流域、カンボジアからベトナムにかけての港市を束ねた港市国家で、海のシルクロードを利用して活発に貿易を行った。

その様子はオケオ等の遺跡からローマやインドの貨幣や陶器が出土していることから確認できる。

ハロン湾
1万年以上前から人が住んでいたという世界遺産「ハロン湾(ベトナム、1994年、2000年拡大、自然遺産(vii)(viii))」。付近の遺跡では東南アジア諸文化に大きな影響を与えたドンソン(東山)文化の影響も見られる。海のシルクロードの通り道でもあった
ミーソン聖域
ミーソン聖域。6世紀以前の寺院は多くが焼失したようだが、7~13世紀までのヒンドゥー寺院の遺構が残されている

2世紀前後には、チャム人が漢の日南郡から独立を果たしてベトナム南部にチャンパーを建国。

当初は中国の影響を多分に受けていたが、4~5世紀にはヒンドゥー教が伝わってインド化していく。

チャンパーでヒンドゥー教の聖地とされたのが世界遺産「ミーソン聖域(ベトナム、1999年、文化遺産(ii)(iii))」だ。

チャンパーは大越等の圧力を受けて次第にメコン川下流に追いやられるが、グエン朝(阮朝)がベトナムを統一する19世紀まで存続する。

逆にいえば、ベトナムはグエン朝の統一まで同一国であることはなかった。


6世紀頃、クメール人が現在のラオス南部に古代都市シュレスタプラ①を建設し、真臘(しんろう。チェンラ王国)を建てる。

7世紀前半には扶南を占領して入れ替わるようにメコン川一帯を支配。

首都を南のイシャーナプラ②に遷し、勢力の中心をベトナムとカンボジアに移した。

①はナーンシダー遺跡、②はサンボー・プレイ・クック遺跡として残されている。

※①世界遺産「チャンパーサック県の文化的景観にあるワット・プーと関連古代遺産群(ラオス、2001年、文化遺産(iii)(iv)(vi))」

 ②カンボジアの世界遺産暫定リスト記載

 

[関連サイト]

ワット・プー/ラオス


8世紀後半になると南北に分裂し(陸真臘・水真臘)、一時ジャワ王国シャイレーンドラ朝の支配を受ける。

しかし802年、ジャヤヴァルマン2世が王位についてクメール人国家を再統一。

これが1431年まで26代にわたる王を輩出したクメール王国アンコール朝(クメール朝)だ。

アンコール、ベンメリア
ジャングルに覆われた神秘的なアンコール都市遺跡ベンメリア。アンコール・ワットやアンコール・トムから40~50kmほど離れており、世界遺産「アンコール」とは別に世界遺産暫定リストに記載されている
アンコール・ワット
12世紀にスルヤヴァルマン2世が3万人の労働力と30年の歳月をかけて建築したアンコール・ワット。1860年、フランス人学者アンリ・ムオーが遺跡の存在をヨーロッパに伝えると、世紀の発見と沸き返った

アンコール朝の王たちは9世紀後半からトンレサップ湖の北に広大な水路と貯水池を整備して、周囲に都を築きはじめる。

そして数多くの宮殿や寺院を造って巨大な水上都市・宗教都市を完成させる。

世界遺産「アンコール(カンボジア、1992年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv))」で知られるアンコールの遺跡群だ。


アンコールとはサンスクリット語で「都市」のこと。

ここを聖域として9~13世紀にかけて主だったもので60以上、細かいものを含めると数百といわれる建造物群を造り上げた。

有名なアンコール・ワットやアンコール・トム、タ・プロームはそのほんの一部にすぎない。

もともとはヒンドゥー教の寺院群だったが、11~12世紀に上座部仏教が伝わると、仏教寺院が中心を占めるようになる。

詳細は以下。

 

[関連サイト]

アンコール/カンボジア

アンコール、タ・プローム
ガジュマルの木が絡みついたアンコール都市遺跡タ・プローム

アンコール朝の遺跡はアンコール以外にもたくさん残されている。

 

先述のシュレスタプラ(ナーンシダー遺跡)は聖山として崇められていたカオ山の麓に築かれた都市で、アンコール朝の時代の11~12世紀にはワット・プー※をはじめとするヒンドゥー寺院が建てられた。

14世紀に仏教国であるラーンサーン王国の版図に入るが、ここでも聖山として変わらず神聖視された。

世界遺産「チャンパーサック県の文化的景観にあるワット・プーと関連古代遺産群(ラオス、2001年、文化遺産(iii)(iv)(vi))」

 

近年タイとカンボジアの国境紛争で話題になったのが世界遺産「プレア・ヴィヘア寺院(カンボジア、2008年、文化遺産(i))」だ。 

9~12世紀に造られたクメール遺跡で、両国が領有権を主張。

2008年の世界遺産登録以後に睨み合いが起き、2011年には戦闘が行われた。

 

[関連サイト]

プレア・ヴィヒア寺院/カンボジア

 

この他にもカンボジアの世界遺産暫定リストにはアンコール朝時代の遺跡が多数記載されている。

ベンメリア、コーケー、バンテアイ・チュマール、バンテアイ・プレイ・ノコール、プリアカン・コン・ポン・スヴァイ、プノン・ダ寺院などがその一例だ。

 

 * *

プランバナンのロロ・ジョングラン
世界遺産「プランバナン寺院遺跡群」のロロ・ジョングラン。手前右がブラフマー堂、いちばん左がヴィシュヌ堂、その隣がシヴァ堂。ブラフマーは創造神、ヴィシュヌは維持神、シヴァは破壊神で、3最高神で宇宙の理を示した
ボロブドゥール
ボロブドゥールの円形壇。底面に一辺120mの方形(四角形)の基壇、その上に5層の方形壇、最上段に3層の円形壇を積み重ねた9層ピラミッド。神々が住まうメール山(須弥山)を模した立体マンダラともいわれる

東南アジアの島々の歴史に移ろう。

 

島嶼部でも紀元前からインドや中国と貿易を行っており、港市が発達した。

インドシナ半島やマレー半島と同様に、4~5世紀にはインドからもたらされたヒンドゥー教や大乗仏教を中心とする文化が広がった。

 

そんな中、7~13世紀にスマトラ島に興った港市国家がシュリーヴィジャヤ王国だ。

仏教が盛んな国で義浄が訪れているほか、インド・中国と盛んに貿易を行った。

この国はやがてシャイレーンドラ朝の王家が支配する国として栄えていったらしい。


8~9世紀、隣のジャワ島で栄えたのがそのシャイレーンドラ朝だ。

敬虔な仏教国で、世界三大仏教遺跡に数えられる世界遺産「ボロブドゥール寺院遺跡群(インドネシア、1991年、文化遺産(i)(ii)(vi))」を建築した。

しかしボロブドゥールの完成後、シャイレーンドラ朝は急速に衰退。

拠点をスマトラ島のシュリーヴィジャヤ王国に移したようだ。

ちなみに三大仏教遺跡の残りのふたつは、ミャンマーの世界遺産暫定リスト記載のバガンと、カンボジアの世界遺産「アンコール」だ。


[関連サイト]

未来の世界遺産2 バガン

 

セウー寺院
世界遺産「プランバナン寺院遺跡」登録のセウー寺院。9世紀にシャイレーンドラ朝の王女プラモダワルダニーとサンジャヤ朝のピカタン王が結婚した際に記念して建てられもの

また、同じジャワ島で8~11世紀に栄えたのが古マタラム王国だ。

その初期、サンジャヤ朝の時代には仏教国シャイレーンドラ朝の支配下にあった。

王国はヒンドゥー教国だったが、異なる宗教を信仰していても大きな混乱はなかったようで、ブブラ寺院やルンブン寺院などの仏教寺院を造ってはシャイレーンドラ朝の王家に寄進していた。


シャイレーンドラ朝が衰退すると、856年、古マタラム王国のピカタン王はヒンドゥー教の総本山ロロ・ジョングランの建設を開始。

907年にバリトゥン王が完成させる。

同時に、それまで寄進していた仏教寺院をヒンドゥー寺院へと改修した。

これらをまとめた世界遺産が「プランバナン寺院遺跡群(インドネシア、1991年、文化遺産(i)(iv))」だ。

 

[関連サイト]

プランバナン寺院遺跡群/インドネシア

 

10世紀以降、インドシナ半島に上座部仏教が伝来。

13世紀以降、島嶼部にイスラム教が拡散。

16世紀以降、ヨーロッパの侵略がはじまり、キリスト教が流入。

以上によって東南アジアの文化が大きく変わる。

 

以降の話は「24.イスラムの拡散とインド、東南アジア」にて。

 

* * *

大湯環状列石、万座遺跡
世界遺産暫定リスト記載「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産である大湯環状列石、万座遺跡の日時計状組石。内輪と外輪、二本のストーンサークルの間にこんな組石が48基もある。紀元前2000~前1500年頃のものと見られる
石舞台古墳
日本でもっとも有名な羨道墳である石舞台古墳。地下に玄室があり、蘇我馬子が葬られていたといわれている

東アジアの古代を簡単に見てみよう。


朝鮮半島の根本、遼河(りょうが)流域には紀元前5000年にまでさかのぼる古代文化群、すなわち遼河文明が栄えていた。
そしてヨーロッパの巨石文化で紹介したようなメガリス(巨石記念物)はアジアにも存在した。

一例が世界遺産「高敞(コチャン)、和順(ファスン)、江華(カンファ)の支石墓群跡(韓国、2000年、文化遺産(iii))」のドルメン(支石墓)だ。

この3か所には古いもので紀元前1000年にまで遡ると見られるドルメンが1,000以上も集中している。


日本にもメガリスや古墳はたくさん存在する。

ストーンサークルなら大湯環状列石①(秋田県)、古墳だと4~5世紀の大仙陵古墳②、上石津ミサンザイ古墳②、土師ニサンザイ古墳②(以上、大阪府)といった前方後円墳や、7~8世紀に造られた石舞台古墳③や高松塚古墳、キトラ古墳(以上奈良県)などが有名だ。

※①日本の世界遺産暫定リスト「北海道・北東北の縄文遺跡群」

 ②日本の世界遺産暫定リスト「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」

 ③日本の世界遺産暫定リスト「飛鳥・藤原-古代日本の宮都と遺跡群」

 

朝鮮半島の歴史に戻ろう。

紀元前108年以前を古朝鮮と呼ぶ。

古朝鮮は檀君(だんくん)神話→箕子(きし)朝鮮→衛氏朝鮮と移行するが、よくわかっていないことが多いようだ。

漢の武帝が紀元前108年に衛氏朝鮮を滅ぼすと、楽浪郡をはじめとする4郡を設置する。

そして紀元前1世紀、中国東北地方に高句麗が興ると、漢に朝貢して冊封体制に入る。

 

冊封とは、天にいる神を「天帝」、天帝から地上を治める天命を受けた皇帝を「天子」とし、この天子に仕える者として君臣の関係を結ぶことを示す。

中国の皇帝がその地域の王や郡の領主を指名するという形をとることから、封建制度の一種と考えられる。

中国の元号を使ったり、君主たる天子に貢ぎ物を贈る義務(朝貢)を負うが、その代わり返礼品を受け取ったり、軍事的な援助を受けることができた。

 

高句麗も当初はこうした朝貢国のひとつ。

しかし4世紀に楽浪郡を占領し、朝鮮半島北部を統一すると、対決姿勢を深めていく。

この時代までの首都である五女(ごじょ)山城、丸都(がんと)山城、国内城という城塞と40基の古墳群を登録した世界遺産が「古代高句麗王国の首都と古墳群(中国、2004年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(v))」だ。

 

その頃、朝鮮半島南部では百済①、新羅(首都・金城②)が成立。

朝鮮半島の三国時代がはじまりだ。

※①世界遺産「百済歴史地域(韓国、2015年、文化遺産(ii)(iii))」

 ②世界遺産「慶州歴史地域(韓国、2000年、文化遺産(ii)(iii))」

 

高句麗は427年に平壌城(現在の平壌)に遷都。

475年には百済を破って首都・漢城(現在のソウル)を落とし、版図を南へと広げた。

 

7世紀前半に中国の隋から攻撃を受けるも撃退。

唐の時代に入っても太宗が攻撃を繰り返すが、なんとかこれを退ける。

しかしながら次の高宗は新羅と結んで遠征を行い、668年、高句麗は滅亡する。

高句麗後期の63基の古墳群を登録したのが世界遺産「高句麗古墳群(北朝鮮、2004年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv))」だ。

 

以降の物語は「世界遺産と世界史27.北方騎馬民族とその周辺」へ。


* * *

メロエのピラミッド
王墓として建築された世界遺産「メロエ島の古代遺跡群」のメロエのピラミッド。高さは5~25mほどでエジプトのピラミッドに比べるとずいぶん小さい。傾斜角は70度にもなり、非常に尖った外観を見せる

アフリカの古代文明を見てみよう。

旧~新石器時代の岩絵や壁画が見られる世界遺産にはこれだけのものがある。

  • ティヤ(エチオピア、1980年、文化遺産(i)(iv))
  • マロティ-ドラケンスバーグ公園(南アフリカ/レソト、2000年、2013年拡大、文化遺産(i)(iii)、自然遺産(vii)(x))
  • ツォディロ(ボツワナ、2001年、文化遺産(i)(iii)(vi))
  • マトボの丘群(ジンバブエ、2003年、文化遺産(iii)(v)(vi))
  • コンドア・ロックアート遺跡群(タンザニア、2006年、文化遺産(iii)(vi))
  • チョンゴニ・ロックアート地域(マラウイ、2006年、文化遺産(iii)(vi))
  • トゥウェイフルフォンテーン(ナミビア、2007年、文化遺産(iii)(v)) 

このようにアフリカには紀元前から多彩な文化が存在した。

そしてその中でも急速に文明を発達させたのがナイル川流域だ。

なお、エジプト文明については「8.古代エジプトの繁栄」参照のこと。

ゲベル・バルカルのピラミッド
ゲベル・バルカルのピラミッド。ゲベル・バルカルにはエジプトの神であるアメンを祀るアメン神殿などもある

紀元前3000年頃から興った古代エジプトの政権は、一時現在のスーダン北部にまで勢力を伸ばしていた。

紀元前1000年頃には首都をナパタ①に置いた最古の黒人王国・クシュが成立する。

そして紀元前700年頃にピイ王がエジプトを征服すると、第二十五王朝を引き継いだ。

 

しかし紀元前671年、アッシリアが勢力を伸ばしてエジプトを征服すると、スーダンに撤退。

紀元前600年頃に首都をメロエ②に遷して以降をメロエ王国と呼ぶ。

 

エジプトでピラミッドが造られていたのは紀元前2700~前2200年頃の古王国時代。

しかし、これに影響を受けたクシュ王国とメロエ王国は、ナパタやメロエ近辺で200基以上のピラミッドを建築した①②。

下記の世界遺産はこうした遺跡を登録したものだ。

※①世界遺産「ゲベル・バルカルとナパタ地域の遺跡群(スーダン、2003年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(vi))」

 ②世界遺産「メロエ島の古代遺跡群(スーダン、2011年、文化遺産(ii)(iii)(iv)(v))」

ナイル川はスーダンのハルツームで二手に分かれる。

ウガンダやタンザニアのビクトリア湖に至る白ナイルと、エチオピアのタナ湖に至る青ナイルだ。


紀元前5~前3世紀頃。

青ナイル上流から紅海沿岸部に都市国家群が誕生する。

 

エチオピアの伝説によると、紀元前1000年頃に生まれた初代国王メネリク1世は、ヘブライ王国第3代国王ソロモンと伝説の国シバの女王の血を引くという。

そして「7.戦争の時代 ~メソポタミア」で紹介したモーセの十戒を収めた伝説のアーク(聖櫃)をエルサレム※のエルサレム神殿から持ち帰ったらしい。


これが安置されているといわれるのがシオンのマリア教会だ。

※世界遺産「エルサレムの旧市街とその城壁群(ヨルダン申請、1981年、文化遺産(ii)(iii)(vi))」

 

エチオピアではアークは「タボット」と呼ばれており、教会ではタボットが一般的に祀られている。

シオンのマリア教会のタボットこそ本物と伝えられており、年に一度、1月18日のティムカット祭のときに司祭がこれを担いで練り歩く。

ただ、このタボットを収めた祭室は生涯この教会内部で暮らすと誓いを捧げた司祭以外には立ち入りが認められておらず、ティムカット祭のときにもタボットは厳重に封印されているため、その真偽は確認されていない。

シオンのマリア教会やアクスムの王墓、宮殿跡等は世界遺産「アクスム(エチオピア、1980年、文化遺産(i)(iv))」に登録されている。


1~10世紀、アクスム王国は象牙や金による紅海貿易で栄え、メロエ王国を侵略。

インドや北アフリカとも貿易を行い、最大版図を築くが、その後、ビザンツ帝国(東ローマ帝国)やササン朝ペルシア、イスラム帝国の圧力を受けて次第に衰退していく。

ラリベラの聖ゲオルギウス教会
ラリベラの聖ゲオルギウス教会。縦横12mのギリシア十字形で、岩山を12m掘り下げてくり抜かれている。そのあまりの造形から、「聖ゲオルギウスが命じ、天使が築いた」といわれる

10世紀頃にはアクスム王国が滅んでザグウェ朝が成立。

12~13世紀に君臨したラリベラ王は聖地エルサレムがイスラム教徒に治められていることに心を痛め、首都ロハ(のちのラリベラ)に第二のエルサレムの建設を決意する。

こうして造られた岩窟教会群が世界遺産「ラリベラの岩窟教会群(エチオピア、1978年、文化遺産(i)(ii)(iii))」だ。

教会名や地名は『旧約聖書』『新約聖書』や聖人から引用され、アダムの墓やマリア聖堂、ゴルゴダ聖堂、ヨルダン川、オリーブ山などが築かれた。

また、岩窟教会は岩を積み上げるのではなく、山をくり抜いて彫られた彫刻で、エジプトやギリシア、ローマの影響を受けた独特のデザインが特徴だ。

 

13世紀にはイクノ・アムラクがソロモン朝を建て、エチオピア帝国を建国。

この後、エチオピア帝国は20世紀まで独立を貫くことになる。


以降、北アフリカを除く東アフリカや西アフリカの歴史は「25.アフリカの交易とイスラム教」へ。

 


次回は南北アメリカ大陸の古代文明を紹介する。

 

[関連サイト]

コルディリェーラの棚田群/フィリピン

アンコール/カンボジア

未来の世界遺産2 バガン

プランバナン寺院遺跡群/インドネシア

 


News

★世界遺産カテゴリー "WORLD HERITAGE" にて新シリーズ「世界遺産検定攻略法」が始動! 最難関の1級とマイスター攻略を中心に、受検戦略や学習法を紹介します。

 →世界遺産検定攻略法

★世界遺産カテゴリー "WORLD HERITAGE" にて新シリーズ「世界遺産写真館」を立ち上げました。

ぼくがこれまで撮影してきた写真を掲載していこうと思います。

 →世界遺産写真館

オーストリアの世界遺産「ザルツブルク市街の歴史地区」
ユネスコ創造都市の「デザイン都市」で、世界遺産「グラーツ市-歴史地区とエッゲンベルク城」を持つオーストリアのグラーツ。クリックで外部記事へ
オーストリアの世界遺産「ザルツブルク市街の歴史地区」
ホーエンザルツブルク城から見た世界遺産「ザルツブルク市街の歴史地区」の絶景。中央がその象徴、ザルツブルク大聖堂。クリックで外部記事へ
世界遺産「エディンバラの旧市街と新市街」
スコットランド王国の歴史を伝える古都にして、文芸や幽霊の町でもある世界遺産「エディンバラの旧市街と新市街」。クリックで外部記事へ。
イタリアの世界遺産「モデナ大聖堂、トッレ・チヴィカ及びピアッツァ・グランデ」
中世とグルメと自動車の町にあるイタリアの世界遺産「モデナ大聖堂、トッレ・チヴィカ及びピアッツァ・グランデ」。クリックで外部記事へ。

Topics

・Facebook, twitterです

 ART+LOGIC=TRAVEL Facebook

 dai hasegawa twitter

・All About 世界遺産 新記事

 グラーツ:歴史的デザイン都市

 ザルツブルク:バロックの都

 エディンバラ:歴史・文芸の町

 モデナ大聖堂、市民の塔

 デルフィ 太陽神アポロンの聖地

Bizコンパス 世界の名言

 リンカーン 人民の人民による

 チャップリン 勇気・想像力・金

 本田宗一郎「挑戦した失敗」

 岡本太郎「毒を持て」

 ディズニー「未完成」

 ジョブズ「愚かであれ」

 ナポレオン「不可能はない」

 高杉晋作「おもしろき世」

 エジソン「1%の才能99%の汗」

・Bizコンパス 国際情勢連載

 なぜLCCが世界を席巻?

 なぜ日本のGDPは低迷?

 なぜ今TPP等の地域協定なのか?

 なぜシンガポールは豊かなのか?

 なぜ米国は銃規制できないか?

 なぜハリウッドは強いのか?

 なぜ外国人が渋谷の交差点に?

 なぜイスラムは仏を狙うのか?

 なぜスイスは永世中立なのか?

 なぜ中華料理はおいしいのか?

 なぜ難民が増えているのか?

 なぜ五輪は4年に1度の開催か?

 なぜイランは核開発するのか?

 なぜ台湾は独立できないのか?

 なぜアフリカはいつも戦争?

 なぜシーア派とスンニ派がある?

 なぜブータンは幸せの国なのか?

 なぜ世界でパンデミックが拡大?

 なぜ世界に親日国が多いのか?

 なぜイスラムは遺跡を壊すか?

 なぜ米国とキューバが接近?

 なぜ訪日外国人が増えたのか?

 なぜギリシャ危機が問題か?

 なぜウクライナで米露が対立?

 なぜ世界中に中華街があるのか?

 なぜ柔道はJUDOに勝てないか?

 なぜ捕鯨は野蛮なのか?

 なぜイスラムは西洋と戦うのか?

 なぜ日本料理は世界で人気か?

 なぜ中南米はミスコンに強いか?

 なぜ中国で民主化・独立運動か?

 なぜ英・西で独立運動なのか?

・Bizコンパス 世界遺産連載

 世界遺産の夜明けを導く2遺跡

 人類の歴史に挑戦する負の遺産

 危機遺産リストと世界遺産

 世界遺産が世界遺産でなくなる日

 キング・オブ・世界遺産

 自然遺産を守る意味 

 聖地が示す世界遺産の限界

 世界遺産と平和への挑戦

 世界遺産登録と今後の日本の遺産

 なぜ世界遺産は欧州に多いのか

 産業遺産と新しい世界遺産

 自宅で楽しむ世界遺産 ワイン編

 W杯! ブラジルの歴史と世界遺産

 なぜ伊勢神宮は世界遺産でない?

 一度の旅行でたくさんの世界遺産

 夏休みに訪れたい海の世界遺産

 世界遺産はじめて行くならここ!

 最新の世界遺産を訪ねよう!

 世界遺産で野生動物と触れ合う

 パワースポットの「聖なる山」

 立入禁止! 非開放の世界遺産

 神々が降り立つ聖地の世界遺産

 絶景と人工美が融合した鉄道

 愛と美を称える世界遺産

・その他

『朝日新聞 世界の扉』記事執筆。『地球の歩き方 MOOK 世界のビーチBEST100』『ノジュール』に旅のスペシャリスト・達人として参加。『PEN』でアフリカの世界遺産執筆。『MONOQLO』世界遺産特集取材協力。『女性セブン』で日本の世界遺産を解説。エクスナレッジ『聖地建築巡礼 世界遺産から現代建築まで、73の聖地を巡る旅』、洋泉社ムック『負の世界遺産』執筆。RKBラジオ、FM TOKYOで世界遺産特集出演。その他企業・大学広報誌等。

New articles

<旅論:たびロジー>

1.あなたは幸せですか?

.麻薬は悪? ゴキブリは汚い?

.裸とワイセツ

 

<エロス論:エロジー>

.遊びの本質

.おいしい、美しい、気持ちいい

.文化SM論

 

<絵と写真の話>

.アートと魂~抽象画とポロック

.ロスコの扉 ~ロスコ・ルーム~

10.写真と抽象芸術~グルスキー

 

<哲学的探究:哲学入門>

1.哲学とは何か?

2.「正しい-間違い」とは何か?

3.証明とは何か?

4.わかる・理解するとは何か?

5.力とは何か? 波とは何か?

6.物質とは何か?

7.見る・感じるとは何か?

8.空間とは何か?

9.時間とは何か?

 

<哲学的考察:ウソだ!>

.無と偶然

.ことだま-はじめに言葉ありき

10.物質とは何か?

11.神とは何か?-一神教と多神教

 

<世界遺産NEWS>

米&イ、UNESCO脱退を表明

パルミラのライオン像、復元!

バーミヤン渓谷の磨崖仏復元法

サブラータ古代遺跡が戦闘被害

2017年新登録の世界ジオパーク

 

<世界遺産ランキング集>

登録基準に見る世界遺産

世界の七不思議

国内集計の世界遺産ランキング

海外集計の世界遺産ランキング

世界遺産国別ランキング

 

<UNESCOリスト集>

日本の遺産リスト

無形文化遺産リスト

世界の記憶リスト

世界遺産リスト

ユネスコエコパーク・リスト

世界ジオパーク・リスト

創造都市リスト

 

<世界遺産の見方>

知性的鑑賞法

感性的鑑賞法

異文化理解の方法論

正しい・間違いの基準

星と大地と古代遺跡

 

<味わう世界遺産>

.王様のワイン トカイ

.命の水 テキーラ

.ポルトガルの宝石 ポート

.神の贈り物チョコレート

 

<世界遺産で学ぶ世界の歴史>

.宇宙と地球の誕生

.地球と火山活動

.大陸移動と世界の形成

.生命の誕生 先カンブリア時代

.生命の進化 古生代から新生代へ

.人類の夜明け

.戦争の時代 ~メソポタミア

.古代エジプトの繁栄

.インダス文明と古代インド

10.長江・黄河文明と古代中国

11.欧州巨石文化とエーゲ文明

12.古代ギリシアの繁栄

13.アレクサンドロスとヘレニズム

14.シルクロードとクシャーナ&漢

15.東南&東アジア,アフリカの古代

16.南北アメリカ大陸の古代文明

17.共和政ローマと帝政ローマ

18.ローマの平和、そして分裂へ

19.民族大移動と西欧の形成

20.東欧の形成とビザンツ帝国

21.東西教会の分裂と十字軍

22.イスラム教とペルシア・アラブ

23.イスラム帝国の分裂

24.イスラムの拡散-インド,アジア

25.アフリカの交易とイスラム教

26.隋・唐・宋の時代

27.北方騎馬民族とその周辺

28.モンゴル帝国の世界征服

29.オスマン,サファヴィー,ムガル

30.中世ヨーロッパの飛躍

31.修道院とロマネスク&ゴシック

32.イギリス・フランスと百年戦争

33.ハプスブルク家とレコンキスタ

34.大航海時代

35.ルネサンス

36.宗教改革

37.絶対王政とオランダの台頭

38.三十年戦争とイギリス革命

39.啓蒙思想とプロイセン、ロシア

40.明と清の繁栄

41.東・東南アジアの植民前史

42.産業革命とアメリカ独立革命

43.フランス革命とナポレオン

44.ウィーン体制と七月・二月革命

45.イタリアとドイツの成立

46.帝国主義と米英仏

47.アジアの衰退・植民地化

48.清、朝鮮、江戸の開国・滅亡

49.世界分割

50.第一次世界大戦

51.ファシズムと世界恐慌

52.第二次世界大戦

 

<世界遺産写真館>

1.文化交差路サマルカンド1

2.文化交差路サマルカンド2

3.アッパー・スヴァネティ

4.グラナダのアルハンブラ宮殿1

5.グラナダのアルハンブラ宮殿2

6.コトル

7.プレアヴィヒア寺院

8.福建の土楼1

9.福建の土楼2

10.フォンニャ-ケバン国立公園1

11.フォンニャ-ケバン国立公園2

12.カタルーニャ堂とサンパウ病院1

13.カタルーニャ堂とサンパウ病院2

14.オフリド地域1

15.オフリド地域2

16.古都京都の文化財1

17.古都京都の文化財2

18.アントニオ・ガウディ作品群1

19.アントニオ・ガウディ作品群2

20.アンコール1

21.アンコール2

22.アンコール3

 

<世界遺産攻略法>

1.世界遺産検定攻略の理念と背景

2.世界遺産検定の概要

3.試験戦略の一般論

4.試験戦略の理念

5.世界遺産検定の受検戦略

6.試験勉強の3要素

7.世界遺産検定 最効率学習法

8.時事問題・世界史・検定講座

9.マイスター試験の概要

10.マイスター試験問1・2対策

11.マイスター試験問3対策

12.マイスター試験時間術&解答術

Blog

Link

Search

Site map

○Travel[旅]

○World heritage[世界遺産]

○Art[芸術]

○Logic[哲学]

○Library[私的図書館]

○Profile[プロフィール]

○Work[仕事について]

○Inquiry[お問合せ]

○Blog[ブログ]

※本サイトはリンクフリーです