世界遺産と世界史3.大陸移動と世界の形成

さて、話を地球史に戻して、地球が誕生してから大陸がどのように動いてきたのかを見てみよう。

なお、プレートテクトニクス理論やプルームテクトニクス理論については前回「世界遺産と世界史2. 地球と火山活動」参照のこと。


約40億年前に海が誕生した。

火山が噴火し、島ができ、島はプレートに乗って移動し、やがて集まって大陸を形成する。

水に浮いた落ち葉がやがて一か所に集まるように、大陸も長い時間を経て超大陸へと進化する。

ニューカレドニア
「ニューカレドニアのラグーン:リーフの多様性とその生態系(フランス、2008年、自然遺産(vii)(ix)(x))」のニューカレドニアもゴンドワナ大陸にあったが、1億年前にオーストラリアから、5,000万年前にニュージーランドから分かれて漂流をはじめた

約7億年前、地球上の大陸が集合してロディニアと呼ばれる超大陸が誕生した。

超大陸ができると、大陸の厚い岩盤によってマグマが出口を失うため、超大陸の下に莫大な量のマグマが溜まってスーパープルームを形成する。

このスーパープルームの圧力で、ロディニアはローレンシア、シベリア、ゴンドワナなどの大陸に分裂する。


2億5千万年前、ふたたび大陸は集合し、パンゲアという超大陸を造り出す。

パンゲアもまたスーパープルームの力で引き裂かれ、ローラシア大陸とゴンドワナ大陸に分裂する。

このローラシア大陸がやがてユーラシア大陸、北アメリカ大陸に分裂する。

つまりヨーロッパ、アジア、北中米という北半球の陸地のほとんどが同じ起源を持つことになる。


一方ゴンドワナ大陸は東ゴンドワナ、西ゴンドワナ大陸に分裂。

そして東ゴンドワナ大陸から南極大陸、オーストラリア大陸、インド亜大陸が分かれ、西ゴンドワナ大陸からはアフリカ大陸、南アメリカ大陸が誕生する。

南半球のほとんどはゴンドワナ大陸に起源を持ち、そのためにたとえばダチョウやレア、エミューなどの飛べない鳥や、肺魚やシクリッドといった魚が北半球にはいないか少ないことの理由になっている。

 

以下の動画は6億5千万年前から現在までの大陸移動のシミュレーションだ。

アウヤンテプイ
ギアナ高地のテーブルマウンテンのひとつ、アウヤンテプイ。滝は約1kmという世界でもっとも落差の大きい滝、エンジェル・フォール

こうした大陸移動に関係する世界遺産も数多く存在する。

 

たとえばギアナ高地の名前で有名な「カナイマ国立公園(ベネズエラ、1994年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x))」だ。

パンゲアが分裂する際、ここがそのほぼ中心にあったと考えられている。

そのため地質が20億年前から大きく変化していないうえに、高さ2,000mに及ぶテーブルマウンテン上の生態系は外界から遮断されており、ゴンドワナ時代から直接進化した多くの固有種が発見されている。


ゴンドワナ時代の生態系を引き継ぐ世界遺産は特にオセアニアに多い。

これは、ゴンドワナ大陸から分かれたアフリカ大陸がユーラシア大陸と、南アメリカ大陸が北アメリカ大陸とつながったため、生物が頻繁に行き来してゴンドワナ固有の種が淘汰されたためだ。

それに対してオーストラリア大陸や、そこから分かれたタスマニアやニュージーランド、ニューカレドニアは他の大陸から離れていたため、ゴンドワナの種は独自の進化を遂げることができた。

 

■ゴンドワナ時代の影響が確認できるオセアニアの世界遺産の例

  • タスマニア原生地域(オーストラリア、1982年、1989・2010・2012・2013年拡大、文化遺産(iii)(iv)(vi)、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x))
  • オーストラリアのゴンドワナ雨林(オーストラリア、1986年、1994年拡大、自然遺産(viii)(ix)(x))
  • クイーンズランドの湿潤熱帯地域(オーストラリア、1988年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x))
  • グレーター・ブルー・マウンテンズ地域(オーストラリア、2000年、自然遺産(ix)(x))
ブルー・マウンテンズ国立公園
世界遺産であるブルー・マウンテンズ国立公園の奇岩スリーシスターズ。この国立公園で恐竜時代に絶滅したと考えられていたウォレミ松が発見され、ゴンドワナ時代の記憶を持つ生きた化石として話題になった

 

大陸移動を証明する大きな証拠が世界遺産「サガルマータ国立公園(ネパール、1979年、自然遺産(vii))」や「ナンダ・デヴィ国立公園及び花の谷国立公園(インド、1988年、2005年拡大、自然遺産(vii)(x))」「大ヒマラヤ国立公園保護地域(インド、2014年、自然遺産(x))」などを含むヒマラヤ山脈だ。

約5,000万年前、インドプレート(インド亜大陸)がユーラシアプレート(ユーラシア大陸)に衝突し、その衝撃で隆起したのがヒマラヤ山脈だ。だ

ヒマラヤ山脈の高山地帯で魚や貝の化石が発見されるのは昔から指摘されており、その謎はプレートテクトニクス理論によって解かれることになった。

この隆起はいまだに収まっておらず、エベレスト(サガルマータ、チョモランマ)の標高は毎年数ミリずつ高くなっているという。


似た背景を持つのがカナダのニューファンドランド島だ。

アフリカ大陸と北アメリカ大陸の衝突によってできた島で、その証拠は「グロス・モーン国立公園(カナダ、1987年、自然遺産(vii)(viii))」で見ることができる。

グロス・モーンの深い渓谷やテーブルマウンテン等のダイナミックな景観は、氷河が1~2万年をかけて山を削ってできたもの(フィヨルド)。

そしてその山はもともと海底深くにあったマントル層で、氷河の侵食によって地球内部の様子が剥き出しとなった。


マントル層は「マッコーリー島(オーストラリア、1997年、自然遺産(vii)(viii))」でも観察できる。

この島はオーストラリアプレートと太平洋プレートの衝突によって生まれた島で、1,000万年前から現在まで隆起は収まっていない。

その重要性から、この島も観光客には開放されていない。

 

なかには激しい隆起によって、地層の順番が入れ替わってしまったような場所もある。

地層が左右からの圧力を受けて隆起するのだが、圧力に耐えきれずに断裂し、一方が一方の上に乗ってしまう衝上断層(逆断層の激しいもの)という現象だ。

もともとアルプス山脈はアフリカプレートとユーラシアプレートが衝突してできたものだが、「スイスのサルドーナ地殻変動地帯(スイス、2008年、自然遺産(viii))」では5,000万年前の地層の上に3億~2億年前の地層が乗り上げている姿を見ることができる。

 

上の3つは地質学的・自然地理学的な価値を認める自然遺産登録基準(viii)を満たしていることからも、その重要性がわかるだろう。

カナディアン・ロッキー山脈自然公園群
世界遺産「カナディアン・ロッキー山脈自然公園群」構成資産であるモレーン・レイク。ヒマラヤ山脈、ロッキー山脈に限らず世界的な山脈はすべてプレートの造山活動によって誕生した

 

日本やインドネシア、ペルーなど、地震が多発する場所はたいていプレートの衝突面にあるものだが、もちろん引き裂き合っているプレートも存在する。

大陸移動の解説で、パンゲアはスーパープルームの力で引き裂かれたと書いたが、プルームの力で現在引き裂かれつつあるのが大地溝帯(グレート・リフト・バレー)だ。

大地溝帯はアフリカ南部から中東の死海までおよそ7,000kmにもなる断層で、死海や紅海のような裂け目を造ると同時に、その周囲には隆起によって深い渓谷や山々が連なっている。

オフリド湖
オフリド湖の聖ヨハン・カネオ教会。世界遺産に登録された古代湖には「バイカル湖(ロシア、1996年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x))」や「オフリド地域の自然遺産及び文化遺産(マケドニア、1979年、1980年拡大、文化遺産(i)(iii)(iv)、自然遺産(vii))」のオフリド湖がある

裂け目の一例が世界遺産「マラウイ湖国立公園(マラウイ、1984年、自然遺産(vii)(ix)(x))」だ。

マラウイ湖は300~200万年前に大地が引き裂かれてできた古代湖。

古代湖とは数十万年以上の歴史を持つ湖を示すのだが、通常湖は川から流れこむ土砂のせいで数千年・数万年で埋め立てられてしまう。

ところがマラウイ湖は大地溝帯によって裂け目が少しずつ広がっているために、湖は何百万年もあり続けることができた。

独特の進化を遂げた固有種が多く、なかでも湖内の環境に応じたシクリッドという魚の形態変化はガラパゴス諸島のフィンチやゾウガメと同様、進化の過程を示すものとして注目された。


大地溝帯の周辺で築かれた渓谷が「トゥルカナ湖国立公園群(エチオピア、1997年、2001年拡大、自然遺産(viii)(x))」や「マサダ(イスラエル、2001年、文化遺産(iii)(iv)(vi))」を含むヨルダン渓谷で、特にヨルダン渓谷の死海は海抜-400mを超える低所にある。

 

一方、大地溝帯の裂け目の周囲ではひずみのために隆起する土地も少なくない。

標高5,109mを誇るスタンリー山を擁する「ルウェンゾリ山地国立公園(ウガンダ、1994年、自然遺産(vii)(x))」や、標高4,620mのラスタジャン山を持つ「シミエン国立公園(エチオピア、1978年、自然遺産(vii)(x))」がその一例だ。

さて、プレートテクトニクスやプルームテクトニクスの極端な例を見てきたが、ほとんどの陸地が火山か隆起によってできたように、地球上の大地はすべてこれらの影響下にあるともいえる。


だから、ロッキー山脈にある世界遺産「カナディアン・ロッキー山脈自然公園群(カナダ、1984年、1990年拡大、自然遺産(vii)(viii))」「ウォータートン・グレーシャー国際平和自然公園自然(アメリカ/カナダ、1995年、自然遺産(vii)(ix))」や、アンデス山脈にある「サンガイ国立公園(エクアドル、1983年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x))」や「ワスカラン国立公園(ペルー、1985年、自然遺産(vii)(viii))」、アルプス山脈にある「スイス・アルプス ユングフラウ-アレッチ(スイス、2001年、2007年拡大、自然遺産(vii)(viii)(ix))」「サン・ジョルジオ山(イタリア/スイス、2003年、2010年拡大、自然遺産(viii))」「ドロミーティ(イタリア、2009年、自然遺産(vii)(viii))」などが火山や隆起によって造り出されたというだけでなく、日本列島が日本文化を生み出し、日本の世界遺産を築いたように、いずれの世界遺産も多少の影響は受けていることになる。

ドロミーティ
世界遺産「ドロミーティ」のダイナミックな景観

 

たとえば大陸から分かれたり隆起してできた島の世界遺産だけでもこれだけある。


■大陸から分かれた大陸島にある世界遺産の例

 ※日本、キューバ、マダガスカル、ニュージーランド、ボルネオ等の大きな島は除く

  • タスマニア原生地域(オーストラリア、1982年、1989・2010・2012・2013年拡大、複合遺産(iii)(iv)(vi)(vii)(viii)(ix)(x))
  • メイ渓谷自然保護区(セーシェル、1983年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x))
  • ニューカレドニアのラグーン:リーフの多様性とその生態系(フランス、2008年、自然遺産(vii)(ix)(x))
  • ソコトラ諸島(イエメン、2008年、自然遺産(x))

 

■噴火や隆起によってできた海洋島にある世界遺産の例

  • ロード・ハウ諸島(オーストラリア、1982年、自然遺産(vii)(x))
  • アルダブラ環礁(セーシェル、1982年、自然遺産(vii)(ix)(x))
  • 屋久島(日本、1993年、自然遺産(vii)(ix))
  • ヘンダーソン島(イギリス、1988年、自然遺産(vii)(x))
  • マッコーリー島(オーストラリア、1997年、自然遺産(vii)(viii))
  • ヘーガ・クステン/クヴァルケン群島(スウェーデン/フィンランド、2000年、2006年拡大、自然遺産(viii))
  • ブラジルの大西洋諸島:フェルナンド・デ・ノローニャとロカス環礁保護区群(ブラジル、2001年、自然遺産(vii)(ix)(x))
  • フェニックス諸島保護地域(キリバス、2010年、自然遺産(vii)(ix))
  • 小笠原諸島(日本、2011年、自然遺産(ix))
  • ロックアイランドの南部ラグーン(パラオ、2012年、文化遺産(iii)(v)、自然遺産(vii)(ix)(x))

 

ユニークなところではメキシコの「カリフォルニア湾の島々と保護地域群、メキシコ、2005年、2007年拡大、自然遺産(vii)(ix)(x))」がある。

この世界遺産では大陸島と海洋島が混在しており、ふたつの生態系が併存することから非常に多くの生物種が暮らすことで知られている。

 

タジキスタンの世界遺産「タジク国立公園[パミール山脈]」のカラクル湖
世界遺産「タジク国立公園[パミール山脈](タジキスタン、2013年、自然遺産(vii)(viii) )」のカラクル湖は隕石のクレーターにできた世界最大の湖とされている

ちなみに、火山も隆起もまったく関係ない地形に隕石が衝突してできた「クレーター」がある。

クレーターは長年にわたる風雨の侵食でやがて消えていくが、その形を留めているものもある。

 

世界三大クレーターは、カナダのサドベリー・クレーター、メキシコのチクシュルーブ・クレーター、そして南アフリカのフレーデフォート・ドームだ。

チクシュルーブ・クレーターは恐竜絶滅の原因と考えられているもの。

フレーデフォート・ドームは世界最大のクレーターで、約20億年前に直径10kmの小惑星が衝突してできたと考えられている。

 

こちらは「フレーデフォート・ドーム(南アフリカ、2005年、自然遺産(viii))」として世界遺産に登録されている。

 

次回からは世界の歴史に戻って、生命の誕生を取り上げる。

 

 


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