世界遺産と世界史6.人類の夜明け

「人間は考える葦(あし)である」

パスカルの言葉だ。

「人間はひとくきの葦にすぎない。自然の中でもっとも弱いものである。だが、それは考える葦である。彼を押しつぶすために、宇宙全体が武装するには及ばない。蒸気や一滴の水でも彼を殺すのに十分である。だが、たとい宇宙が彼を押しつぶしても、人間は彼を殺すものより尊いだろう。なぜなら、彼は自分が死ぬことと、宇宙の自分に対する優勢を知っているからである。宇宙は何も知らない。だから、我々の尊敬のすべては、考えることの中にある。我々はそこから立ち上がらなければならないのであって、我々が満たすことのできない空間や時間からではない。だから、よく考えることを努めよう。ここに道徳の原理がある」

(ブレーズ・パスカル著、前田陽一、由木康訳『パンセ』中公文庫より)

 

人間とは何か?

ぼくの答えは「感じ、考える者」だ。

人はこのふたつができるし、このふたつしかできない。

 

人は感じることによってこの世界を見て、考えることで世界を分析する。

そして歴史を見出し、さまざまな理論や思想を作り出す。

「歴史があるから私がある」というより先に、「考えるから歴史がある」。

 

千年前の人類は同じ世界をまるで別様に見ていたし、千年後の人類は私たちとはまるで違う見方で世界を見ることだろう。

知識が正しいか間違っているかなどということはまったく関係がない。

感じ・考えたように世界は現れ、私が世界を包むのだ。

 

「私が私の尊厳を求めなければならないのは、空間からではなく、私の考えの規制からである。私は多くの土地を所有したところで、まさることにならないだろう。空間によって、宇宙は私を包み、ひとつの点のように飲み込む。考えることによって、私が宇宙を包む」

(同上)

 

 * *

 

哲学はカテゴリー「LOGIC」に譲り、人類史的に捉えよう。

下はスタンリー・キューブリック監督『2001年 宇宙の旅』冒頭部(大幅な編集あり)。

猿が道具を見出し、宇宙船にまで発展させる様子を一瞬で描き出している。

見事!

 

教科書には、人類が「猿人→原人→旧人→新人」という進化を辿ったことが記されている。

そしてその猿人は約700万~500万年前にアフリカで誕生した。

 

1924年、オーストラリアの考古学者レイモンド・ダートは、南アフリカのスタークフォンテン洞窟で人間とも猿ともつかない化石を発見する。

アウストラロピテクスだ(細かく言えばアウストラロピテクス・アフリカヌス)。

ヨーロッパではすでに進化論が広まってはいたが、受け入れられていたとは言えず、人類の祖先が猿であること、しかも人類発祥の地がアフリカにあることを主張したダートには、大きな非難が寄せられた。


スタークフォンテンと、近隣のスワートクランズ、クロムドライではその後も次々と化石が発見された。

時代は400万~250万年前と幅広く、次第に人間に近づく様子が示されていた。

一帯は「南アフリカ人類化石遺跡群(南アフリカ、1999年、2005年拡大、文化遺産(iii)(vi))」として世界遺産に登録されている。


1974年、エチオピア北東部、アワッシュ川沿いの農村でアウストラロピテクス(アウストラロピテクス・アファレンシス、アファール猿人)の化石が発見された。

骨格は全身の40%に及び、二足歩行が可能であることを示していた。

それが女性であったことから、彼女はビートルズの名曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」にちなんで「ルーシー」と呼ばれている。

この地は「アワッシュ川下流域(エチオピア、1980年、文化遺産(ii)(iii)(iv))」として世界遺産に登録され、1992年にはさらに古い年代、約440万年前に生きたと見られるラミダス猿人の化石も見つかっている。

 

1964年、イギリス人考古学者ルイス・リーキーは、タンザニアのオルドバイ渓谷で約200万年前のものと見られる化石を発見する。

脳の大きさはアウストラロピテクスの1.5~2.0倍に及び、アウストラロピテクスが大きく進化を遂げたものと考えられた。

また、同時代の地層から打製石器が発見され、彼らが道具を使っていたことも明らかになった。

ホモ・ハビリスだ。

なお、オルドバイ渓谷は世界遺産「ンゴロンゴロ保全地域(タンザニア、1978年、2010年拡大、文化遺産(iv)、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x))」に含まれている。


人類とアウストラロピテクスは、霊長目ヒト科ヒト亜科ヒト族ヒト亜族までは同じだが、その下でヒト属とアウストラロピテクス属に分けられる。

このホモ・ハビリスは最初期のヒト属(=ホモ~)だが、人類へ続くヒト属ではないと考えられている。

 

世界遺産「オモ川下流域(エチオピア、1980年、文化遺産(iii)(iv))」ではアウストラロピテクス・エチオピクスの化石の他に、ホモ・ハビリスの化石や石器が大量に発見されている。


こうして人類は道具を獲得し、猿人から原人へと進化を遂げ、アフリカから世界へと拡散を開始する。

旧石器時代の幕開けだ。

人類の故郷オルドバイ渓谷
人類の故郷オルドバイ渓谷。大地溝帯では猿人、原人の多数の化石が発見されている。サバンナ(草原)と直立二足歩行との関係も示唆されているが、確証はない

* * *

 

猿人の化石はアフリカでしか発見されていないが、200万~20万年前に活動していた原人の化石はアフリカ、ヨーロッパ、アジアで広く発見されている(南北アメリカやオセアニアでは未発見)。


アムステルダムで医学を学んでいたオランダ人ウジェーヌ・デュポワは、人類が猿から誕生したという進化論に感銘を受け、両者をつなぐ化石を探すことを生涯の目標に据える。

彼が目を付けたのがインドネシア。

医師の免許を取り、1887年、軍医としてインドネシア・スマトラ島に赴任することに成功する。


スマトラ島ではなんの発見もできなかったが、ジャワ島に移ると新人に当たるワジャク人の化石を発掘。

そして1891年、ジャワ島のトリニールでついに「立ち上がる猿=ピテカントロプス・エレクトゥス」の化石を発見する。


その後ドイツ人考古学者ケーニヒスヴァルトがトリニールに隣接したサンギランでジャワ原人の化石を大量に発見。

世界の初期人類の化石の半分に及ぶと言われるほどの量を発掘する。

現在ジャワ原人はホモ・エレクトゥスの一種として原人に分類されており、サンギランは世界遺産「サンギラン初期人類遺跡(インドネシア、1996年、文化遺産(iii)(vi))」として保護されている。

 

1920年代に中国・北京近郊で次々発見された北京原人や、1980年代にケニアのトゥルカナ湖畔で発掘されたトゥルカナ・ボーイもこのホモ・エレクトゥスの一種だ。

いずれも「周口店の北京原人遺跡(中国、1987年、文化遺産(iii)(vi))」と「トゥルカナ湖国立公園群(ケニア、1997年、2001年拡大、自然遺産(viii)(x))」として世界遺産に登録されている。

 

ホモ・エレクトゥスに近い人類はヨーロッパでも発見されている。

1907年、ドイツのハイデルベルク近郊の採石場で、偶然原人の下顎が発見された。

ハイデルベルク人=ホモ・ハイデルベルゲンシスだ。

 

そして40万~20万年前のものと考えられるホモ・ハイデルベルゲンシスの化石は、スペイン・アタプエルカ村のシマ・デ・ロス・ウエソスの洞窟で大量に見つかった。

また、同じ村のグラン・ドリナの洞窟からは80万年前にさかのぼるホモ・アンテケッソルの化石が発掘されており、こちらは「最初のヨーロッパ人」と言われている。

これらの洞窟は世界遺産「アタプエルカの古代遺跡(スペイン、2000年、文化遺産(iii)(v))」に登録されている。

 

そして約20万年前、原人は旧人へと進化を遂げる。

ネアンデルタール人やデニソワ人の登場だ。


* * *

世界遺産「ゴーハムの洞窟群」
イギリス領ジブラルタルの洞窟群からは12万5千年前まで遡るネアンデルタール人の化石や壁画が発見されている。ゴーラム、ヴァンガード、ハイエナ、ベネットの4洞窟は世界遺産「ゴーハムの洞窟群(イギリス、2016年、文化遺産(iii))」に登録されている

 

ダーウィンが『種の起源』を著したのが1859年。

19世紀には人間が猿から進化したなどと考える人間はほとんどいなかったが、人間と猿の中間的な化石はすでに発見されていた。

1856年にドイツのネアンデルの谷(=ネアンデルタール)で見つかった人骨がその一例だ。

彼らの脳の大きさは現生人類=ホモ・サピエンスよりも大きく、火や石器を多用し、埋葬さえしていた。

 

同様の化石は西アジアからヨーロッパにかけての広い範囲で発掘されている。

ネアンデルタール人の築いた文化はムスティエ文化と呼ばれるが、その痕跡はヨーロッパから北アフリカ、西アジアまで広く確認することができる。


また、2008年にはロシアのデニソワ洞窟で新しい旧人の化石が発見された。

デニソワ人だ。

DNA的にネアンデルタール人やホモ・サピエンスにとても近いことがわかっている。


こうしてアフリカ、ヨーロッパからアジアの果てに至るまで繁栄を極めた旧人たち。

ところが3万~2万年前、その血は途絶え、絶滅してしまう。


* * *

人類拡散の様子

 

ネアンデルタール人やデニソワ人の「絶滅」。

以前は彼らが進化してホモ・サピエンスが誕生したと考えられていた。

しかしDNA解析の結果、北京原人やジャワ原人といったアフリカ以外の原人たち私たちホモ・サピエンスと血がつながっていないことが明らかになっている。

ネアンデルタール人やデニソワ人については一部でわずかに血が混じっているとする説もあるが、主流ではないのは明らかだ。


では、私たちの祖先はいったいどこから来たのだろう?

 

人類の歴史はDNA解析によって明らかにされつつある。

世界各地の人間のミトコンドリア・DNAを分析した結果、 彼らが共通して20万~10万年前に生きたひとりの女性のDNAを持つことがわかった。

彼女を「ミトコンドリア・イヴ」と呼ぶ。

 

DNAをさらに詳細に調べると、ミトコンドリア・イヴとどれほど隔たっているのか明らかにすることができる。

たとえばアフリカ南部の人々やオーストラリアの先住民アボリジニはかなり古い時代のDNAを持つことがわかっている。

彼らが早い時代にその地に到達したということだろう。

一方南北アメリカの人々のDNAはかなり書き換えられていることから、さまざまな交雑を経たのち、より近年に南北アメリカに渡ったことが推測できる。

 

そして後年「Y染色体・アダム」の存在が明らかになると、人類は各地の原人が独自に進化して現在の人種・民族に分かれたのではなく、アフリカにいた人類共通の祖先が世界各地に広まったというアフリカ単一起源説が強く支持されることになる(詳細は後述のコラムにて)。

アルタのロックアート
世界遺産「アルタのロックアート(ノルウェー、1985年、文化遺産(iii))」の岩絵。極地の海岸に描かれた3,000点を超える岩絵には、トナカイやシロクマなどの動物や、狩猟や農耕、祭式を行い人類の様子が鮮やかに描き出されている

総合すると、アダムとイヴの子孫が10数万~5万年前にアフリカを出て、ネアンデルタール人やデニソワ人と交流・闘争しながら世界中へと広がった。

5万~3万年前にはヨーロッパや東南アジア、オセアニアにまで広がり、3万~1万年前には南北アメリカ大陸にまで到達したようだ。

 

原人・旧人・新人が混在する化石地帯にはマレーシアの世界遺産「レンゴン渓谷の考古遺跡(マレーシア、2012年、文化遺産(iii)(iv))」がある。

200万~7万前と長期にわたる化石が掘り出されており、人類の進化史をたどることができる。

 

また「人類の進化を示すカルメル山の遺跡群:ナハール・マロット/ワディ・エル・ムガラ洞窟(イスラエル、2012年、文化遺産(iii)(v))」では50万~1万年前までの化石が発見されている。

ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが混在していたり、狩猟採取生活から農業・畜産に移り変わる様子が眺められる。


1968年にはオーストラリアで火葬されたのではないかと見られるホモ・サピエンスの化石が発見された。

ムンゴ・レディだ。

1974年、その近郊で今度は埋葬された男性の化石、ムンゴ・マンが発掘された。

前者は2万6千年前、後者は4万年前のものと見られている。

このふたつの発見で、ホモ・サピエンスはかなり早い段階でオーストラリアに渡ったことが明らかになった。

これらの土地は「ウィランドラ湖群地域(オーストラリア、1981年、文化遺産(iii)、自然遺産(viii))」として世界遺産登録されている。


南米最古の人類遺跡は世界遺産「カピバラ山地国立公園(ブラジル、1991年、文化遺産(iii))」で発見されている。

400近い洞窟の中には多数の壁画跡があり、最古のものは1万年前にさかのぼる。

洞窟は4万~3万年前に作られたという説もあり、この発見によって南米の人類史が書き換えられた。


* * *

世界遺産「アルデッシュ、ショーヴェ・ポンダルク洞窟壁画」ショーヴェ洞窟の動物壁画
世界最古の洞窟壁画といわれるショーヴェ洞窟の動物壁画。壁画は古いもので3万6千年前まで遡るが、約2万3千年前に落盤によって密封されたため、1994年の発見時には驚くほど鮮やかに保存されていたという

ホモ・サピエンスの特徴のひとつが「芸術」だ。

ホモ・サピエンスの一群であるクロマニヨン人たちが世界各地に洞窟壁画を残している。


4万~3万年前にまで遡ると見られる世界最古の壁画がフランスの「アルデッシュ、ショーヴェ・ポンダルク洞窟壁画(フランス、2014年、文化遺産(i)(iii))」だ。

フランス南西部ではクロマニヨン人たちがムスティエ文化を受け継いでオーリニャック文化を開花させていたが、その集大成と言えるのがショーヴェ洞窟だ。

 

3万~1万年前になるとマドレーヌ文化を代表するラスコー洞窟を含む「ヴェゼール渓谷の先史時代史跡群と洞窟壁画群(フランス、1979年、文化遺産(i)(iii))」や、マグダレニアン文化のアルタミラ洞窟やエル・カスティーヨ洞窟を含む「アルタミラ洞窟と北スペインの旧石器時代の洞窟画(スペイン、1985年、2008年拡大、文化遺産(i)(iii))」が描かれている。

 

こうした壁画のモチーフはウシやウマなどの動物だが、現在では見られなくなったサイやライオンも描かれおり、当時の環境をよく伝えている。

また、動物の姿はかなり正確で、遠近法さえ使いこなしている。

絵は赤土や黄土、炭と樹液や血液、動物の脂肪を混ぜて作った顔料で描かれており、こうした有機物が炭素同位体法によって年代を探る手掛かりになっている。

 

こうした壁画群は最終氷期(もっとも最近に終了したいわゆる氷河期)が終わる1万3千~1万1千年前を最後に描かれなくなっており、クロマニヨン人の生活圏や生活スタイルが変わったことを示唆している。

 

残念ながら上に紹介した洞窟のほとんどは呼気などによる劣化や色彩変化を防ぐために非公開となっている。

その代わり、ショーヴェ、ラスコー、アルタミラにはいずれにも近くに洞窟をそっくりそのまま再現したレプリカ洞窟が用意されている。

カカドゥ国立公園の彩色壁画
骨格や内臓組織を透かした「レントゲン図法」で描かれた世界遺産「カカドゥ国立公園(オーストラリア、1981年、1987年拡大、1992年拡大、文化遺産(i)(vi)、自然遺産(vii)(ix)(x))」の彩色壁画。描いたのはオーストラリアの先住民アボリジニ
アルタミラ洞窟壁画を写したイラスト
アルタミラ洞窟壁画を写したイラスト。その美しさから「旧石器時代のシスティーナ礼拝堂」との異名を持つ

環境変化を示す世界遺産では「タッシリ・ナジェール(アルジェリア、1982年、文化遺産(i)(iii)、自然遺産(vii)(ix))」と「タドラット・アカクスのロックアート遺跡群(リビア、1985年、文化遺産(iii))」が有名だ。

国境を境にほぼ隣り合った世界遺産で、いずれもサハラ砂漠にありながらゾウやワニ、キリンなど、動物たちの姿が生き生きと描き出されている。

サハラ砂漠がかつてはサバンナや熱帯雨林だったことの証拠とされている。

絵は1万~1千年前のもので、時代を下るとラクダなど乾燥地帯の動物の数が増える点もおもしろい。

 

また、アジアの「ゴブスタンのロックアートと文化的景観(アゼルバイジャン、2007年、文化遺産(iii))」にはウシやウマや魚が描かれており、中央アジアの広大な砂漠やステップが、緑豊かな土地であったことを示している。

 

世界遺産に登録されている文明時代以前の遺跡には下記のようなものがある(これまでに紹介した世界遺産と、巨石文明に関するものは除く)。

 

■アフリカ

  • ティヤ(エチオピア、1980年、文化遺産(i)(iv))
  • マロティ-ドラケンスバーグ公園(南アフリカ/レソト、2000年、2013年拡大、文化遺産(i)(iii)、自然遺産(vii)(x))
  • ツォディロ(ボツワナ、2001年、文化遺産(i)(iii)(vi))
  • マトボの丘群(ジンバブエ、2003年、文化遺産(iii)(v)(vi))
  • コンドア・ロックアート遺跡群(タンザニア、2006年、文化遺産(iii)(vi))
  • チョンゴニ・ロックアート地域(マラウイ、2006年、文化遺産(iii)(vi))
  • トゥウェイフルフォンテーン(ナミビア、2007年、文化遺産(iii)(v))

■ヨーロッパ

  • ヴァルカモニカの岩絵群(イタリア、1979年、文化遺産(iii)(vi))
  • アルタのロックアート(ノルウェー、1985年、文化遺産(iii))
  • タヌムの線刻画群(スウェーデン、1994年、文化遺産(i)(iii)(iv))
  • イベリア半島の地中海入り江のロックアート(スペイン、1998年、文化遺産(iii))
  • コア渓谷とシエガ・ヴェルデの先史時代のロックアート遺跡群(スペイン/ポルトガル共通、1998年、2010年拡大、文化遺産(i)(iii))
  • スピエンヌの新石器時代の火打石の鉱山発掘地(モンス)(ベルギー、2000年、文化遺産(i)(iii)(iv))

■アジア

  • ビンベットカのロック・シェルター群(インド、2003年、文化遺産(iii)(v))
  • タムガリの考古的景観にある岩絵群(カザフスタン、2004年、文化遺産(iii))
  • アル・アインの文化遺産群 ハフィート、ヒリ、ビダー・ビン・サウードとオアシス地域(アラブ首長国連邦、2011年、文化遺産(iii)(iv)(v))
  • モンゴル・アルタイ山系の岩絵群(モンゴル、2011年、文化遺産(iii))
  • アルプス山系の先史時代杭上住居跡群(イタリア/オーストリア/スイス/スロベニア/ドイツ/フランス、2011年、文化遺産(iii)(v))
  • ワディ・ラム保護地域(ヨルダン、2011年、文化遺産(iii)(v)、自然遺産(vii))
  • チャタルヒュユクの新石器遺跡(トルコ、2012年、文化遺産(ii)(iv))
  • サウジアラビアのハイール地方のロックアート(サウジアラビア、2015年、文化遺産(i)(iii))
  • 左江花山のロックアートの文化的景観(中国、2016年、文化遺産(iii)(vi))

■オセアニア

  • カカドゥ国立公園(オーストラリア、1981年、1987年拡大、1992年拡大、文化遺産(i)(vi)、自然遺産(vii)(ix)(x))
  • タスマニア原生地域(オーストラリア、1982年、1989年、文化遺産(iii)(iv)(vi)、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x))
  • ウルル・カタ・ジュタ国立公園(オーストラリア、1987年、1994年拡大、文化遺産(v)(vi)、自然遺産(vii)(viii))
  • クックの初期農耕遺跡(パプアニューギニア、2008年、文化遺産(iii)(iv)(v))

■中南米

  • サンフランシスコ山地の岩絵群(メキシコ、1993年、文化遺産(i)(iii))
  • オアハカ中部渓谷ヤグルとミトラの先史時代洞窟(メキシコ、2010年、文化遺産(iii))
  • リオ・アビセオ国立公園(ペルー、1990年、1992年拡大、文化遺産(iii)、自然遺産(vii)(ix)(x))
  • リオ・ピントゥラスのクエバ・デ・ラス・マノス(アルゼンチン、1999年、文化遺産(iii))

 

ここで文化遺産の登録基準について簡単に触れておこう。

上の世界遺産の登録基準を見渡すと「登録基準(iii)」が多いことがわかる。

先述したラスコーやアルタミラのような芸術性が高い遺産は「登録基準(i)」を満たしている。

また「登録基準(vi)」もちらほら見かけられる。

 

文化遺産登録基準1、3、6((vii)~(x)は自然遺産の登録基準))

  • (i) 人間の創造的な才能を表現する傑作であるもの
  • (iii)  現存する、またはすでに消滅した文化的伝統や文明に関する唯一の、あるいはまれな証拠を示しているもの
  • (vi) 顕著で普遍的な価値を有する出来事や現在存続する伝統で、思想・信仰・芸術作品・あるいは文学作品と直接に、または実質的に関連があるもの(本基準は他の基準と関連して適用されるべき基準と考えられている)

簡単に言えば(i)は人類の傑作、(iii)は 文化・文明の証拠、(vi)は出来事・伝統関連だ。

つまり、ラスコーやアルタミラは傑作であり、多くの岩絵は文化の証拠であり、同時に人類の思想・信仰・芸術と関係のある伝統的な遺産であるということだ。

 

ちなみに、(ii)は文化交流の跡、(iv)は重要な建築物や景観、(v)は環境利用の例だ。

いずれまた紹介しよう。

 

次回はいよいよ文明誕生以降を解説する。

 

―――― コラム:Y染色体・アダムとミトコンドリア・イヴ ――――


システィーナ礼拝堂の天井フレスコ画、ミケランジェロ作「アダムの創造」
システィーナ礼拝堂の天井フレスコ画、ミケランジェロ作「アダムの創造」。この礼拝堂は世界遺産「バチカン市国(バチカン、1984年、文化遺産(i)(ii)(iv)(vi) )」に登録されている

 

『旧約聖書』の「創世記」。

 

神は6日間にわたる天地創造によって世界を創る(7日目には休みを取った。一週間の起源だ)。

そして土くれを取り出し、自分に似せて最初の人間=アダムを作る。

そして神はアダムが寝ている間に彼の肋骨を取り出すと、イヴを作り出す。

こうしてアダムとイヴはエデンの園でたくさんの動植物と共に暮らすようになる。


20世紀末、「Y染色体・アダム」と「ミトコンドリア・イヴ」が話題になり、「人類の先祖と言えるアダムとイヴは実在した!」とセンセーショナルに伝えられた。


* * *

 

ミトコンドリア・イヴから解説してみよう。

 

人間は身体を動かすエネルギーを食事と呼吸によって得ている。

食べた糖や炭水化物や脂肪が分解・吸収されたのち、呼吸した酸素によって燃やされることで、エネルギーが作り出されるのだ。


でも、エネルギーは食べている瞬間、食べ物が入ってくる胃や腸で使いたいのではなく、身体を動かすときに、必要な場所で取り出すことができなければならない。

そこで、生物はATP(アデノシン三リン酸)という一種の電池を発明する。

消化吸収した糖分からATPを作ったり、発生したエネルギーでADP(アデノシン二リン酸)とリン酸をくっつけてATPを作り出したのだ。

 

ATPは必要に応じてADPとリン酸に分解され、このときにエネルギーが放出される。

ADPとリン酸にエネルギーを加えるとまたATPが再生される。

ATPは繰り返し使える乾電池みたいなものなのだ。

 

このATPを作っているのがミトコンドリアだ。

 

ミトコンドリアはほとんどの生物の細胞に含まれている小器官で、細胞の核とは別のDNAを持っている。

このことから、20億年前には単独で生きていたミトコンドリアが別の単細胞生物に飲み込まれ、そのままその単細胞生物の中に寄生して暮らすようになったのではないかと考えられている。

このミトコンドリアの核に対する反乱を描いたSFホラー小説が瀬名秀明『パラサイト・イヴ』だ。

 

さて、ミトコンドリア。

ミトコンドリア・DNAは母親のものが子供に引き継がれるという特徴がある。

これを調べることで、母の母の……と辿ることができるというわけなのだ。


たとえば、いとこ。

いとこは親の兄弟姉妹の子供のこと。

ぼくの母といとこの母が姉妹であれば、ぼくといとこは同じおばあちゃんを持つことになる。

(ただし、ぼくにもいとこにも父の母、つまりもうひとりのおばあちゃんがいる)

 

これをずっと繰り返していく。

母の母の母の母の……ミトコンドリア・DNAを分析していくと、全人類が20万~10万年前に生きていたあるひとりの女性のDNAを共通して持つことが判明した。

全人類の母を辿っていくと、同じおばあちゃんに行き着くことができる。

彼女をミトコンドリア・イヴと呼ぶ。

 

ただし、ぼくといとこにふたりのおばあちゃんがいるように、20万~10万年前、ミトコンドリア・イヴ以外にも多くの女性がいた。

ミトコンドリア・イヴから生まれた子供たちだけから人類が生まれたわけではない。


* * *

 

Y染色体・アダムもこれと似ている。

人は母親のX染色体に加えて、父親のY染色体を引き継ぐと男性(XY)になり、引き継がないと女性(XX)になる。

つまりY染色体を調べると、父の父の父の……と辿ることができるようになる。

こうしてすべての男性が十数万~6万年前に生きていたあるひとりの男性の染色体要素を共通して持つことが判明した。

 

全人類の父を辿っていくと、同じおじいちゃんに行き着くことができる。

これがY染色体・アダムだ。

こちらもイヴ同様、彼から生まれた子供たちだけから全人類が生まれたわけではない。


ただ、アダムもイヴも10±数万年前にアフリカにいたことが推測されている。

彼らを含む集団の祖先がアフリカを出て、やがて全世界へと広がっていった。

逆に言えば、それ以前にアフリカを出た人類、つまり原人や旧人は世界に定着することができなかった。

そう考えられている。

 


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 パワースポットの「聖なる山」

 立入禁止! 非開放の世界遺産

 神々が降り立つ聖地の世界遺産

 絶景と人工美が融合した鉄道

 愛と美を称える世界遺産

・その他

『朝日新聞 世界の扉』記事執筆。『地球の歩き方 MOOK 世界のビーチBEST100』『ノジュール』に旅のスペシャリスト・達人として参加。『PEN』でアフリカの世界遺産執筆。『MONOQLO』世界遺産特集取材協力。『女性セブン』で日本の世界遺産を解説。エクスナレッジ『聖地建築巡礼 世界遺産から現代建築まで、73の聖地を巡る旅』、洋泉社ムック『負の世界遺産』執筆。RKBラジオ、FM TOKYOで世界遺産特集出演。その他企業・大学広報誌等。

New articles

<旅論:たびロジー>

1.あなたは幸せですか?

.麻薬は悪? ゴキブリは汚い?

.裸とワイセツ

 

<エロス論:エロジー>

.遊びの本質

.おいしい、美しい、気持ちいい

.文化SM論

 

<絵と写真の話>

.アートと魂~抽象画とポロック

.ロスコの扉 ~ロスコ・ルーム~

10.写真と抽象芸術~グルスキー

 

<哲学的探究:哲学入門>

1.哲学とは何か?

2.「正しい-間違い」とは何か?

3.証明とは何か?

4.わかる・理解するとは何か?

5.力とは何か? 波とは何か?

6.物質とは何か?

7.見る・感じるとは何か?

8. 空間とは何か?

 

<哲学的考察:ウソだ!>

.無と偶然

.ことだま-はじめに言葉ありき

10.物質とは何か?

11.神とは何か?-一神教と多神教

 

<世界遺産NEWS>

持続可能な観光の国際年2017

業者がタスマニア政府を提訴

キラウエア火山の溶岩の滝

アレッポ旧市街60%が損壊

シュンドルボンで石炭船沈没

 

<世界遺産ランキング集>

登録基準に見る世界遺産

世界の七不思議

国内集計の世界遺産ランキング

海外集計の世界遺産ランキング

世界遺産国別ランキング

 

<UNESCOリスト集>

日本の遺産リスト

無形文化遺産リスト

世界の記憶リスト

世界遺産リスト

ユネスコエコパーク・リスト

世界ジオパーク・リスト

創造都市リスト

 

<世界遺産の見方>

知性的鑑賞法

感性的鑑賞法

異文化理解の方法論

正しい・間違いの基準

星と大地と古代遺跡

 

<味わう世界遺産>

.王様のワイン トカイ

.命の水 テキーラ

.ポルトガルの宝石 ポート

.神の贈り物チョコレート

 

<世界遺産で学ぶ世界の歴史>

.宇宙と地球の誕生

.地球と火山活動

.大陸移動と世界の形成

.生命の誕生 先カンブリア時代

.生命の進化 古生代から新生代へ

.人類の夜明け

.戦争の時代 ~メソポタミア

.古代エジプトの繁栄

.インダス文明と古代インド

10.長江・黄河文明と古代中国

11.欧州巨石文化とエーゲ文明

12.古代ギリシアの繁栄

13.アレクサンドロスとヘレニズム

14.シルクロードとクシャーナ&漢

15.東南&東アジア,アフリカの古代

16.南北アメリカ大陸の古代文明

17.共和政ローマと帝政ローマ

18.ローマの平和、そして分裂へ

19.民族大移動と西欧の形成

20.東欧の形成とビザンツ帝国

21.東西教会の分裂と十字軍

22.イスラム教とペルシア・アラブ

23.イスラム帝国の分裂

24.イスラムの拡散-インド,アジア

25.アフリカの交易とイスラム教

26.隋・唐・宋の時代

27.北方騎馬民族とその周辺

28.モンゴル帝国の世界征服

29.オスマン,サファヴィー,ムガル

30.中世ヨーロッパの飛躍

31.修道院とロマネスク&ゴシック

32.イギリス・フランスと百年戦争

33.ハプスブルク家とレコンキスタ

34.大航海時代

35.ルネサンス

36.宗教改革

37.絶対王政とオランダの台頭

38.三十年戦争とイギリス革命

39.啓蒙思想とプロイセン、ロシア

40.明と清の繁栄

41.東・東南アジアの植民前史

42.産業革命とアメリカ独立革命

43.フランス革命とナポレオン

44.ウィーン体制と七月・二月革命

45.イタリアとドイツの成立

46.帝国主義と米英仏

47.アジアの衰退・植民地化

48.清、朝鮮、江戸の開国・滅亡

49.世界分割

50.第一次世界大戦

51.ファシズムと世界恐慌

52.第二次世界大戦

 

<世界遺産写真館>

1.文化交差路サマルカンド1

2.文化交差路サマルカンド2

3.アッパー・スヴァネティ

4.グラナダのアルハンブラ宮殿1

5.グラナダのアルハンブラ宮殿2

6.コトル

7.プレアヴィヒア寺院

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